白薔薇茶4
『バカ王子の件はおいといて。
で?ケイトの用事はこれだけじゃないでしょう?』
アビゲイルに問われ、ケイトはビクッと肩をあげる。
『…わかっちゃう?』
上目遣いでこちらを見るケイトの破壊力は半端ない。ここにお兄様がいたら鼻血ものだわ、とアビゲイルが考えていると、ケイトは重い口をひらいた。
『その…最近ロバート様から避けられていると言うか…。』
ロバートとは侯爵家の次男で、ケイトの婚約者である。中性的なお顔立ちで優しく穏やかなイケメンで、ケイトとは良好な関係を築いていたはずだったが、どうやら何かあったようだ。
『その…最近ロバート様にお茶のお誘いもお出かけも断られていて。理由を訪ねても忙しいからだとしか…。たまに学園でお会いしても、ご挨拶もそこそこに立ち去られてしまうし。父にそれとなく伝えてみたのだけど、気のせいだって相手にしてもらえなくて。』
ケイトにとってロバートは婚約者であり、幼なじみでもある。恋愛感情こそ持ってはいないが、将来の伴侶としても申し分ない、大切な存在である。
『何か理由があるなら言ってくれたら、一緒に考えることも出来るかもしれないのに。手紙にも書いて送ってみたけれど、返ってきた返事には、気のせいだ、とか、今は忙しいから相手は出来ない、とか。ちょっとどうしようか悩んじゃって。アビーに話を聞いて貰いたかったの、ごめんね。』
ケイトはアビーに向かって弱々しく微笑んだ。
『…やっぱりあの男も録でもないのね。バカ王子の側近候補なだけあるわ。ケイトを蔑ろにするなんて、私は絶対許さないわよ…!』
ケイト大好きアビゲイルからみて、ロバートは、ケイトに甘えているだけのいけ好かない男である。
普段ケイトに色んな面で頼っておいて、理由も言わずに避けるだなんて、アビゲイルにとっては完全に「ギルティ」である。
『アビー。…ロバート様のこと、調べて貰ってもいいかしら?』
ケイトは意を決してアビゲイルに依頼をする。
『任せて。とりあえず、ボコボコにしてやるわ!』
アビゲイルは青筋を立てながら、拳を握る。戦闘態勢である。
自分の事を思って怒ってくれるアビゲイルに、ケイトは嬉しい気持ちが溢れる。
父には相手にされず、母は遠く離れているので相談しにくい。姉は自分の事で手一杯で、ケイトの相談にはのる余裕がない。
ケイトにとって、アビゲイルは家族よりも自分を思ってくれる、掛替えのない大好きな親友だ。
でも…
『アビー、有難いんだけど、ボコボコはやめておきましょうね?』
やっぱり暴力は良くない!せめて、平手打ち辺りにしておいてほしい。