白薔薇茶3
ケイトは少しためらいながら、今回の訪問の理由を話し始める。
「…お姉様が、第一王子殿下に婚約破棄を通告されたそうなの。父は納得が出来ないと陛下に抗議したし、まだ正式に決まったわけではないのだけど、その…理由が本当に理不尽で。」
ケイトには第一王子の婚約者である、姉がいる。
早くから決められたこの婚約により、ケイトは公爵家の跡取り娘として厳しく育てられている。
ケイトの父は、王家に嫁ぐ姉には大変甘く、ケイトには大変厳しい。
跡取りとして厳しくすることは理解できるが、度を超しているように見える。しかし、ケイトが頑張っいるので、他家のアビゲイルには何も言えない。悔しいが。
「またあのバカ王子が仕出かしたのね。それで、理不尽な理由って?」
「…アビー、そんな風に言うのは本当にここだけにしてね?不敬なんだからね?
どうやら、最近のお気に入りの伯爵令嬢様を、姉がいじめたとの事なんだけど…。
姉もその伯爵令嬢様本人も、そんな事実はないと否定しているのに、姉が脅して無理やり言わせてるんだって言い張って退いて下さらないそうなのよ。
姉は打たれ弱い所があるから、家では元気がなくて。父は怒っているし、母は…まだ領地から戻られていないから何とも言えないけれど、王妃様に抗議すると思うわ。
私は今後のためにも何とか円満に事を収めたいから、アビーに力を借りたくて。…お願い出来ないかしら?」
ケイトがすまなさそうに、アビゲイルにお伺いをすると、親指を立てて…サムズアップする。
「ありがとう、アビー!!お礼にまたお菓子を焼いてくるわね!!」
アビゲイルの目が輝く。ケイトが作るお菓子はアビゲイルの大好物である。
ただ、次期公爵のためか、ケイトが厨房に入ることを父親からは良く思われていないため、滅多に作れないのだ。
「さてと。では、早めに動きましょう。まずはバカ王子の所に行かねばね。」
アビゲイルが考えを巡らせていると、扉をノックくする音が聞こえた。
アンナが扉へ近づくと、どうやらアーサーが王家からの手紙を持って来たようだ。何ともタイミングのよい…!
「明後日、学園の長期休み前のパーティーに、王家から必ず出席するよう御達しよ。第一王子から大事なお知らせがあると書かれているわ。やっぱりバカ王子はバカね。」
バカ王子のやりそうなことが容易に想像できて、ケイトとため息をついた。
「では、明後日にこちらからもお知らせしてあげようかしら?バカ王子はバカ王子よって。」
楽しそうな声色のアビゲイル。
「バカ王子って言わないように気をつけてね?」
ケイトはそれだけが心配であった。