白薔薇茶
応接室に向かうと、アンナがお茶の準備にとりかかる。
茶葉はアーサーが用意し、液体を自在に操るギフト持ちのアンナがお湯を準備してくれるのがここでのルーティンだ。
アンナがいれるお茶は、格別に美味しいので、アビゲイルだけでなくケイトも虜である。
お客様のお迎え準備が出来たので、部屋の窓に向かってアビゲイルが手をかざすと、空間がぐにゃんと歪み、黒髪の上品な令嬢が現れる。
「ケイト、いらっしゃい。お茶の準備は出来てるわよ。」
アビゲイルが無表情で、しかし楽しそうな声色で言うと、ケイトは慌てて
「アビー!ごめんはさいね、急にお邪魔しちゃって。こちらまで来るつもりはなかったのだけど、公爵邸の方にあなたに会いたいとお伺いを立てたら、ルカリオ様がこちらに案内して下さって…。」
ケイトは、微笑まないアビゲイルのことを理解し、寄り添ってくれる大好きな親友である。
おおらかで天然な所もあるが、相手に寄り添って物事を考えられる、思いやりのある女性だ。
そして、アビゲイルの兄、ルカリオはケイトに夢中である。本人は誰にも気づかれていないと思っているが、バレバレである。…ケイト以外の者に。
「気にしないで。さぁ、座って座って」
アビゲイルがケイトにソファーを勧め、2人のお茶会が始まる。
「ありがとう!…はぁ、アンナのお茶は相変わらず最高ね!疲れが何処かに飛んでいくようだわ!」
「恐れ入ります。」
ケイトが満面の笑みを浮かべ、アンナにいう。
照れたようにお辞儀をしたアンナは、部屋の隅へと控える。
「さて、本題よ。何かあったの?」