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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

奇妙な味の短編集

夜空を駆けろ! 正義のヒーローぬいぐるみガイ!

 私の名はぬいぐるみガイっ! ぬいぐるみのヒーローだ!

 今夜も犯罪都市スタッフドシティの平和を守るため、夜空を飛び回ってパトロールをしているんだぞ!


「誰かー、助けてー! うちの子がまだ中にいるんです!」


 悲鳴を聞いて駆けつけると、そこには炎に包まれた豪邸があった!

 なぜビル街に広大な敷地を持つ一軒家があるのかといえば、それは家主が大金持ちだからだ。この家の持ち主であるドーシー・ザッカーバーグはフェイスッターというSNSアプリを開発したIT長者だ。ちなみにこのぬいぐるみガイもアカウントを開設しているぞ。よかったらフォローよろしくな!


「ヒャッハー! イルミナティの手先となり、SNSに偽情報を蔓延させ、一般人の『目覚め』を妨害する汚物は消毒(ファクトチェック)だぜー!」


 火炎放射器と化した両手を振り回しながら暴れているモヒカンは、再生怪人セイキマ(ツー)だ。(ワン)の頃は無差別に放火するだけの純粋なやつだったのに、再生時に毒電波を浴びた影響で変な思想に染まっている。フェイスッターのフォローはそっと外しておいた。


「ここまでだ、セイキマ(ツー)! くらえっ、正義のぬいぐるみキック!」

「ぐわー!」


 必殺のぬいぐるみキックを受けて、セイキマ(ツー)の頭は脳漿を飛び散らせながら爆発四散した。このぬいぐるみガイのスーパーパワーの前に敵などいないのだ。


「ありがとう、ぬいぐるみガイ! まだうちの子が中にいるんです! どうか助けてください!」

「わかった。任せておけ」


 悲鳴の主はドーシー・ザッカーバーグの妻であるアンジェリーナ・ハードだった。彼女の主演した映画ゾンビレイダーは3回も映画館で見てしまった。あとでサインをもらおう。


 私は庭の噴水でたっぷり身体を濡らしてから、燃え盛る豪邸に飛び込んだ。

 ぬいぐるみアイで煙の中を見通して、次々に救出を行っていく。くっ、なんて数だ。予想よりも時間がかかるな。だが、ここで諦めてはヒーローではない!


 私は力を振り絞り、救出活動を終えた。

 外に飛び出すと、直後に豪邸が爆発四散した。

 ふう、間一髪だったようだ。


 私はアンジェリーナ・ハードのところに戻った。

 救急隊がかけつけて、彼女の身体を毛布で包んでいた。

 毛布などより私のほうが肌触りがいいのだが、まあ、それはよしとしよう。


「お待たせしたね、レディ。無事に救出は終わったよ」

「本当っ!? ありがとう、ぬいぐるみガイ! それで、娘はどこに?」

「娘? 人間の女の子なら、黒焦げになって焼け死んでたよ?」

「はあ!?」


 せっかく邸内にあるぬいぐるみをすべて救出して届けてあげたというのに、アンジェリーナ・ハードはそれに目も向けず、毛布に顔を埋めて泣き叫んでいる。一体何が問題だというのだ。


「ど、どうしてぬいぐるみなんかより娘を優先してくれなかったの……」

「ん? そんなことは決まってるじゃないか。俺はぬいぐるみのヒーロー(・・・・・・・・・・)、ぬいぐるみガイだからさっ!」


 私は爽やかな笑顔でサムズアップすると、再びスタッフドシティの夜空を駆けていくのだった。


(了)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 言い方が悪くて大変申し訳なく思っておりますが... いちいち面白いです。 これでもかと笑いの波が押し寄せてくるような文章です。 >フェイスッター って(笑) お腹が痛いです。 楽しく拝…
[一言] ぬいぐるみのヒーローとは、また斬新ですね~笑 色んな名前が混ざりまくってて面白かったです。
[一言]  主人公の暴れっぷりが清々しいほど独善的でサイコーっす。何か細かいところに妙なくすぐりの入るのも好みでした。続編希望、ガイがもっとゲスに暴れまくるやつを。  楽しませていただきました。
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