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受け×受け  作者: ピチャ
8/8

継続

 僕は趣味がオタク寄りだ。

オタクを自称しても良いのだが、本当に好きなことを全力で享受している人に申し訳ない。

ただ一人でいることが多くて、内向的な趣味を持っているだけのことだ。

休み時間には、こうして文章を書くことがある。


 「佐々木くん。何を書いているの?」

隣席の町田さんだ。僕に声をかけてくれる数少ない人でもある。

「いや、ちょっと・・・趣味で物語を」

「物語?凄いね。もしよかったら見せてくれない?」

「下手の横好きだし・・・痛々しいから」

「好きなことをしているってすごいことなんだよ。うちのお父さんがいつも言ってる」

「そうなの?じゃあ見せるけど・・・自信ないから、笑わないでいてくれると嬉しい」

そう言って僕はノートを差し出した。

「了解だよ」

町田さんは僕からノートを受け取ると、内容を読み始めた。

それから、休み時間の度にノートを開く。

どう思われているか心配でならない。こういうとき、楽観的に考えられる才能は、僕にはない。


 昼休み。

「佐々木くん」

満を持したように町田さんは話しかけてきた。

「書いているところまで読み終わったよ。ありがとう」

どうだった、と聞ければいいのだろう。

どんな厳しい現実も、素直に受け止めて直せばいいことだ。

「面白かったよ!すごいね」

「・・・そう、それならよかった」

心がじんわりと熱くなる。もしかしたら将来は作家になれるかもしれない・・・いやいや、そんなことはない。極端に考えすぎるのは僕の悪い癖だ。

「痛々しいことなんてなかったよ。そりゃ本物の作家さんとは比較にならないけど、今の佐々木くんは本物の作家さんじゃないからね。ここにいる、私の隣の席の人がこんな物語を書いていた、その事実をベースにすれば、すごいことだよ」

「ありがとう」

僕が欲しかったのはその言葉かもしれない。

そうだ、本物の作家ではない。それは言い訳にもなるけれども、それ以上に直視しなければならない今の現実だ。

今の僕の評価が上がった。それは純粋に嬉しいことだ。

「ねえ、続き書いたらまた見せてね」

「わかった」

続き、書こう。

今の僕の横には小さなファンがいてくれる、そのことが嬉しい。

頑張ろうと思える。

失敗することは多いだろうし、プロには酷評されるだろう。本にしても売れないかもしれない。

でも、町田さんがまた見たいと思ってくれたのも現実だ。

良い現実も、嫌な現実も、繋がっている。

僕はただ書けばいい。継続以上に現実とできるものなどない。

どんなに上手かろうと、下手だろうと、そこは変わらない。

書き続けよう、そう思った。

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