放課後の買い食い
下校中、町田さんと帰りが一緒になった。
特に合わせたわけじゃなく、偶然というやつだ。方面が同じなので、会えばそのまま一緒にいることになる。
こんなことは良くあることだ。僕も何でもなく彼女を受け入れているし、彼女も何でもなく近づいてくる。誰かに見られて冷やかされると、逆に意識するのでやめてほしい。僕はこのままが居心地良いのだ。
「今日は、コンビニに寄ってから帰ろうと思う」
「買い食いじゃん」
「学校ははっきり禁止しているわけじゃないからいいの」
「そういうもんかなあ」
良いですか、と聞いたらダメと返事が来るだろう。
だけれども、緊急事態でもダメですか、と聞いたら返事に困りそうだ。
これは、しれっと寄ってもお咎めなしだろう。
「なんでまた、今日は寄ろうと思ったの」
「アイスが食べたいから」
「適当だなあ」
「その気まぐれがいいんじゃん」
彼女はコンビニの看板を見つけて、指を差す。
少しだけ暗くなった景色に明かりがほわんと漏れている。
アイスには時期が早い。
僕もついでだから飲み物を買った。
そばにある公園で一休みして行こうと提案し、「それがいいね」と返事をもらった。
どこかが寄付してくれたのか、名前の書いてあるベンチに腰掛ける。
ペットボトルの蓋を開けると、シュワっと炭酸の音がした。
町田さんは袋の中を漁っている。
アイス以外にも彼女はいろいろ買っていた。
「割れるアイス買ったから、半分あげるよ!」
「いや、いらないよ」
「もらってくれないと、半分こできるアイス買った意味がないよ」
半分にできるアイス、ちょっとかわいそう。
でもせっかく買ってくれたんだしな。
嫌いなわけでもないし、大人しくもらっておこう。
「ありがとう」
「どういたしまして!」
ソーダ味のアイスだ。
一口食べると、口の中でみるみる溶けてゆく。
寄り道して食べるアイスはいつもよりちょっとおいしい。町田さんもおいしそうに食べていて、なんだか微笑ましい。
彼女は楽しめることがたくさんあっていいな。
「おいしかった!友だちと食べるアイスは最高だね!」
「そうだね」
「じゃあ次は新作スイーツの賞味といきますか」
「まだ食べるの」
「勿論。たくさん買ったもん」
一人で食べるよりは二人で食べたほうがおいしい。そのために支払う数百円は安い。
でも、やっぱりアイスにはまだ早い季節だったな。
ちょっと冷えた身体がぶるっと震えた。