グッズ
僕は町田さんに影響を受けている。
彼女と話した後、話題に出たものが気になって、つい目をやってしまったり、話した内容を頭の中で思い返したり。彼女自身を思い出すこともたまにはある。でも、話した内容のほうが気になる。
僕の頭の中は、彼女がいるおかげか、ある程度楽しい。
彼女の頭の中はどうだろうか。
彼女は僕とだけ話しているわけではない。クラスメイトのほとんど全員に、彼女は声をかける。おそらく、彼女の頭にはスクールカーストという文字はないのだ。
きっと、いろんな人との交流で彩られていて、僕のことなど取るに足らないものだろう。
だけど、それでも彼女は僕との交流の内容を覚えていてくれる。ちっぽけなものでも大切にしてくれている。それは純粋に嬉しいことだ。彼女の温かさを感じる。
「あっ、それあのアニメのグッズじゃん」
「えっ、あっ・・・うん、そう」
「私も買おうと思ってチェックしていたところ。実物見るとやっぱり欲しいな」
町田さんは僕の鞄の内側にひっそりと忍ばせていたグッズにも気づいてくれる。というか、今期のアニメ見ていたんだ。
「よく気づいたね・・・。キャラがデザインされたわかりやすいグッズじゃないから、気づく人いると思わなかったんだけど」
「そういうさりげないグッズのほうが私は好き。色を押し出したものとか、キャラが使っていたものとか」
「僕もだよ」
そうか、彼女とは嗜好が合うんだ。だからこんなに話しやすいんだ。引かれるかも、って心配する必要がなくて。
でも彼女はいろんな人と話せているから、好みの幅が広いんだろうな。僕のように、一人でこなせる趣味ばかりではない。友人と出かけることも多い。そんな中でアニメも見ているとか実は凄いのでは。
「どこで買ったの?この町には売ってないでしょ」
「電車で二つ隣の町まで行った」
「さすがだね、行動力あるー!」
いや、貴女のほうが行動範囲広いしアクティブでしょ。いつも友人と出かけているようだし。というツッコミは心の中だけにしておこう。
「ね、今度お店まで案内して!」
「えっ、一人で行けばいいのでは・・・」
「方向音痴だから、人と一緒じゃないと出掛けられないの。いつものメンバーはあまり興味なさそうだったし、佐々木くんが案内してくれるなら有難いよ。お願い」
「わかった・・・いつ空いている?」
「えっと今週末は他の子と出かけるから・・・来週の土曜はどうかな?」
「いいよ」
「やったー」
休日に普段予定なんか入れませんよ。だらだらしていたいもの。
彼女にとっては他愛もない予定のひとつなんだろうけど、僕にとっては大切な珍しいお出かけの予定が入った。
ちょっとはまともな格好して出かけよう・・・と思ったけど服がスウェットしかない。今週のうちに買いに行っておくか。
こうして僕の思い出確定イベントが発生した。