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受け×受け  作者: ピチャ
3/8

メモ用紙のイラスト

 メモ用紙に簡単なイラストを描くことがある。

人に何かを渡すときにメモを添えると、そういうことがままある。

いや、大したことじゃない。僕は人より言葉にして伝えるのが苦手だから、メモを貼るだけだ。今もそれをしている。

それを毎回写真撮ってから捨てている人がいる。町田さんだ。僕のイラストをどう思っているのだろうか。

じっと見ていると、視線に気がついてちょっと気まずいような顔をする。

「ごめん。可愛いのでつい写真を・・・」

「いや謝ることじゃないよ。なんで写真撮るんだろうなって思っていただけ。あのイラストが可愛いのか」

僕としては、10秒もかからないで書いたサイン代わりのイラストなんて、価値がないのだが。

「勝手に写真撮っているし捨てているし、怒られるかと思った」

「は?」

こちらが怒る気がないのを確認したからか、町田さんは少し安心した様子。

「前は捨てられなくて、メモを溜めていたんだけど・・・。ちょっとストーカーっぽいかなって思って、捨てるようにしたんだ。写真撮れば後で見ることもできるし。捨てることで、また書いてくれるような気がして」

不思議な感性だ。

僕もコレクター気質があるから、取っておきたいのはわかる。人からもらったキーホルダーなど、使い倒して紐が切れても、なかなか捨てられない。

捨てることでまた新たなものと巡り合うことができる、そんな考え方はしたことがなかった。縁切り神社みたいなものか。悪い縁を断つことで良い縁を呼び込む。

「面白い考え方だね」

「そうかな?ありがとう」


 彼女は嬉しそうにスマホをスワイプしている。よっぽど大事なものを見直すように、ゆっくり何度も行ったり来たり。その顔はほころんでいる。

「僕としてはそれほど価値がないものだけど、そうやって見てくれると嬉しいな」

「えへへ・・・佐々木くんが喜んでくれると、私も嬉しい」

僕の何気ないイラストが、彼女の手元に大切に残っている。そうされることで価値が倍増するような気がする。

どこかに自分の影響が残ってくれるのが、こんなにも嬉しいなんて。

これからも書き続けたいと思う。

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