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受け×受け  作者: ピチャ
2/8

漫画の最新巻

 今日は町田さんが漫画を読んでいる。

昨日発売されたばかりのものだ。教室でも話題となったから早速買ったのかもしれない。彼女はあまり大きなリアクションをしない。ときどき笑っているが、周囲の注目を引くほどではない。クスクスと、静かに笑う。それを近くで見ているのは、心地よい。

友人たちが近づいてくると、その本は閉じられる。自分だけの時間より、みんなとの時間を優先しているのだろう。しかしその漫画の内容は、話題となって出てくる。ここが良かった、など、ネタバレにならない程度に。すると他の人たちも興味を持つ。彼女は宣伝が上手い。

「ねえ、佐々木くんはもう読んだ?」

 周りに人がいなくなると、ときどき話しかけてくる。内容がよほど良かったのだろう。彼女はその内容を楽しげに語る。

「僕はまだ読んでないよ」

「えー、じゃあ話しすぎちゃったかも。なんか佐々木くんだったら読んでいるような気がして話しちゃった」

「なにその固定観念」

「だって前漫画貸してくれたことあったじゃん」

「ああ、って1年くらい前のことじゃなかった?」

「えっ、そんなに前だったっけ」

以前のことを覚えていてくれるのは嬉しい。声をかけることはあっても、仲良しというには程遠い距離感。

彼女は友人たちと日常的に話すから、僕との会話なんて、些細なことのひとつだろう。それでも覚えていてくれる。いや、毎回覚えていてくれることを期待しているわけではないのだが。こうしてそれを知ると、やはり嬉しさが込み上げてくる。

漫画を貸したときは、偶然その話になったから、今読んでいるものを話した。そうしたら彼女が興味を持って、貸すことになったのだ。

「まだ買ってなかったら、これ貸そうか?私はもう読んだから。あっ、それともこのシリーズは読んでない?」

「・・・ありがとう。最新の巻はまだだから、借りる」

「はいどうぞ」

そうして彼女から手渡される。渡された漫画からは、少しふんわりとした香りがした。

僕はその漫画を、折れないように気を付けながら鞄にしまう。

って、さっき読みかけで閉じていなかった?

もう一回読み通していたのかもしれない。聞くのはやめておこう。

感想を話すのが、明日の楽しみになる。

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