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Tips

じんき【神器】

 何らかの魔法を引き起こす道具のこと。大きく分けて3種類あり、自然に出来る神器と、祈りによって出来る神器と、人工的に魔法式を刻むことで出来る神器がある。どれにしても魔法式が刻まれているが、特に自然に出来る神器に関しては、人が理解できる魔法式で刻まれていない場合が多く、今なお盛んに魔法式の解読が行われている。

歴史

種類

出典 Wekpedia




 学校に向かって自転車で安全に爆走している最中、私はスマホに届いたメールを思い出していた。


 差出人:魔法捜査研究所

 宛先: 灯帖茜

 内容:6月10日の午後5時に、カフェdelizioso(場所は添付ファイルを参照)に行ってください。詳細はその時に追って連絡します。持ち物は特に必要ありません。


 これは私のバイト先である魔法捜査研究所からのものだ。


 魔法捜査研究所。

 これは、この世界における警察組織の一つである。

 その名前の通り、魔法に関する捜査の鑑定や研究を行う機関で、ようするに科捜研の魔法版のような組織だ。


 この世界は魔法が当たり前に使われるから、魔法による犯罪も日夜発生する。

 だからこそ、このような魔法に関する捜査の専門機関もまた、当然のように存在するわけである。

 

 さて、そのような公的な組織でなぜ私がバイトをしているのかというと、単純な話で、私がどんな魔法でも使えるということを知られたからである。


 その経緯を説明しよう。


 魔法というのは、勉強すれば大抵は使えるようになるとはいえ、より高度な魔法やユニークな魔法となると、人によって明らかな得意不得意が現れてきて、使える人には限りが出てくるものである。

 だからこの世界では、薬の治験のようなものと同じで、魔法の使用試験のバイトがあるのだ。

 例えば、この新しく作った魔法はどのような人が使えるのかとか、この魔法はどれくらいの威力があるかとか、そういったデータをとるわけである。

 この手のバイトはその性質上、最新の研究に基づいた新しい魔法をその場で教えてもらえたりするので、前世では使えなかった魔法を存分に知り尽くすために、私は嬉々として魔法の使用試験のバイトをしまくっていたわけだ。

 そのおかげかそのせいかは分からないが、個人差があるはずの魔法の使用試験で、どんな難しい魔法であっても一切の不足なく発動し続けたのが魔法捜査研究所に知られてしまい、その能力を買われてスカウトされたというわけだ。

 (そもそも魔法捜査研究所が主体となって使用試験が行われていることが良くあるので、見つかるのは必然だったといえるのかもしれない。)


 それから今では魔法捜査研究所に所属の研究員のバイトという名目で、犯罪に使われたであろう魔法の効果を確かめるための実験や、最新の魔法理論に基づく魔法の発動実験、神器などから得られた未解析の魔法式の解読と、その魔法の効果のデータ集めなどの多岐にわたる仕事をしている。

 高校一年生の身でありながらも最先端の魔法技術の研究に触れられて、しかも一緒に研究までできるので、この研究所に雇われたのはとてもラッキーであった。

 特に神器に関する研究は難解で面白く、存分に頭脳チートを有効活用したおかげで、今現在では神器魔法式解読分野の第一人者にまでなってしまったくらいにのめり込んでいる。

 その際に恥ずかしいあだ名(神の文字を読む者)まで付けられたが、忘れたいので忘れることにする。


 まあ、そんな感じで魔法捜査研究所のバイトをやっているわけだ。

 

 ちなみに、さんざんバイトバイトとは言っているが、実はほとんど正社員並みの給料をもらっているので、あまりバイトという感じはしない。

 昼間学校に行って、放課後時間がある時に行くだけでこれだけ貰えるってこれバグでは?


 とはいいつつ、バグではないちゃんとした理由がある。


 この世界での犯罪者というのは、前世と比べると驚くほど凶悪な人が多い。

 というのも、科学技術という、政府が管理できるような技術しかなかった前世と比べて、今世では、才能さえあれば誰に知られることもなく持てる攻撃的な技術である魔法があるのだ。

 ナイフなどという人目につくものを持たずとも人は殺せるし、銃器や爆発物といった輸入しなければならないものを使わなくても、一方的に魔法で人を殺す事ができるのである。


 つまり、犯罪を犯す準備段階で人に見つかるというアドバンテージを負うことなく人を害せる今世では、魔法の才能が人よりずば抜けている人がそのような犯罪者になると、本当に大変なことになるのだ。

 生死問わずの懸賞金がかけられている魔法使いの国際指名手配犯が何人もいる事を考えると、どれだけ彼らが危険視されているかが窺い知れるというものだ。


 だからこそ、そういう事態になることを防ぐための予防線として、世界各国でさまざまな対策がなされている。


 ここ日本では、魔法人材育成法などという法律のもと、並外れた魔法の才能がある人に対して、その人が望むものを与える代わりに政府の組織に所属させることで、危険な存在になりうる人材を合法的に管理下に置いておき、できたら有効活用しようという方法をとっている。

 なんだか才能がある人を優遇しているようで不公平感があるが、実際それはほとんど世間からも反対なく認められている。

 ここからも分かるように、魔法を使える人が犯罪者になることは、人々に本当に恐れられていることなのだ。


 ただ、成人であれば普通に雇えばいいが、私のような学生の場合はそういうわけにもいかないので、バイトのような形で政府の機関に所属する。

 私は魔法の知識とお金が欲しいものだったので、魔法捜査研究所に高待遇で所属することになったわけだ。


 やはり、人生において必要なのは、金と知識なんだよな。


 そんなことを考えながらいつもの通学路を歩いていると、見えてきたのは私の通う赤鳥高校であった。




 ずらっと並ぶ下駄箱に靴を入れ、入れてある上靴に足を通す。これから数時間の学校生活を予感させる行為に懐かしさを思い出していると、私のほうに近付いてくる影が一つあった。


「やっほ」


 そう言って寄ってきたのは、私の友達の大富士怜(おおふじれい)である。

 黒いショートの髪の毛は、彼女の高身長によく似合っている。


「今日は放課後遊べるかい?」

「いや、ちょっと魔捜研に呼ばれてて…。」

「あー、それなら仕方ないね。じゃあ、また今度遊ぼうよ。」

「誘ってくれてありがと。じゃあ今度ね。」


 いつもニコニコ笑顔のクールな怜に放課後誘われたが、残念ながらそれに乗ることは出来ない。

 今日は6月10日。

 いくらバイト先とはいえ政府の人に呼ばれているわけだから、ちょっとやそっとのことで休んでいるわけにもいかない。

 たしかに学校の友達を優先したくはあるのだが、高待遇にしてもらっている手前、そういうことを考えると心苦しいところもあるのだ。

 もし私が本物の高校一年生であれば友達を優先したことだろうが、私の魂は人生2週目。

 前世と今世合わせて30歳はゆうに超えている成熟した魂が、断った方がより迷惑のかかる方の用事を優先させてしまうのだ。

 ここにきて前世が足を引っ張っている感もあるが、こればっかりは仕方がない。


 少しだけ気を落としたらしい彼女は、頭のうしろに手を回して言う。


「いやぁ、それにしても参ったな。君がいてくれれば良かったんだけど。」

「参ったなって、なんかあったの?」


 私がそう聞くと、彼女はその内容をポツポツ話始めた。

 いわく、仲良くしてる男女グループが、明日が土曜日ということで、今日の夜に近くの心霊スポットに遊びに行こうと画策しているらしい。

 自分はあまり乗り気ではないが、グループの皆んなで行こうという流れになってて、断るに断れなかったと。


「それに、その心霊スポット、本当に『でる』みたいでさ。彼らは自分達の魔法で、もし出ても何とかなると思ってるみたいだけど、私はそんなに魔法が得意じゃないからさ。だから、茜に、言っちゃアレだけど、ボディーガードを頼もうと思ってね。ま、フラれちゃったけど。」


 そう、この世界では、魔法がありふれているからなのか、幽霊という空想上の生物が実在する。


 幽霊は基本的に色々な形をしていてコレといった見た目の特徴はない。

 よくある、浮いてて白い三角の布を頭にかけた容姿をしている丸っこいやつみたいな感じで人前に出てくることはない。

 なぜなら、幽霊は人間の感情を機敏に感じ取ることができ、その人間が最も怖がる形になって襲ってくるからだ。


 まあ、とは言っても幽霊本体が直接襲ってくることはほとんど無い。

 実際はその前に、いわゆるポルターガイスト現象と呼ばれる現象を引き起こして、人間を撃退するのだ。


 例えばそれが室内であれば、窓ガラスを割ったり、棚を倒したりして、恐怖の感情を引き起こさせて人間にお帰り願うわけである。

 それでも帰らなければ、たとえば床や天井を破壊して人間を瓦礫の中に埋めたり、棚を倒した時ちょうど人間が挟まるようにしたりする事で、直接的に攻撃してきたりする。

 ただし、幽霊の攻撃の最大火力を出せるのもこのポルターガイスト現象によるものなので、それらを掻い潜れる能力があれば、あとは幽霊が取れる行動は、その人がもっとも嫌がるものを見せるくらいのものだ。

 そこまでくれば幽霊にはもう打つ手なし。

 幽霊は魔力の塊なので、何らかの方法で魔力を分解させれば、幽霊退治は完了である。


 まあ、しれっと直接のポルターガイスト現象を掻い潜れればとは言ったものの、瓦礫に潰されたり棚で潰されれば普通に死ぬので、鍛えた人以外はポルターガイスト現象を感じたら逃げるが吉であるというのは間違い無いが。


「まあでも、その心霊スポットは近くにある山の中のとある神社って言ってたから、多分そんなに危険じゃ無いとは思うけど。だからこそ彼らも行こうって話をしてるんだと思うし。」


 ということは、そこまで幽霊を怖がる必要はないということだ。

 どういうことかというと、屋外の幽霊は、周りが自然物に囲まれているので、基本的にポルターガイスト現象を起こせる物質が無い。

 そのため幽霊の攻撃方法が、人に恐怖を与えることくらいしかないため、冷静に対処すれば問題ない敵になる。


「まあ、とはいっても自然は自然で危ないところもあるかね。なんにせよ、足元には特に気をつけて。走ってころんだりしたら、怪我するからね。」

「それもそうだね、うん。それじゃ、行く時は運動靴に着替えとくわ。そんじゃまたねー。」


 そう言って彼女はバタバタと走り抜けていった。


「はぁ…。」


 私も参加したかったなぁ。

 青春の一ページを心スポで描きたかった。

 よりにもよってなぜ用事が入っている今日誘われるんだ。明日でいいでしょ。というか、むしろ土曜日である明日の方が心スポ探検には向いてるでしょ。なんで学校帰りに行くねん。元気よすぎやろ。




 私の所属するクラスは1-Aである。

 ちなみに、怜のクラスは1-Cなので、一緒に授業を受けたりとかは基本的に無い。

 友達と一緒に授業を受けるという学校体験が出来ないのは辛い所だが、自分の運のなさを恨んで諦めるしかない。


 1-Aと書かれた教室に入って、素早く自分の席に着く。

 窓際の1番後ろとか黒板のすぐ前だとか、そういう場所ではなく、なんともいえない端っこよりの真ん中よりの場所である。

 ただし、前にかけてある時計と横の黒板に貼ってある時間割が見やすい位置なので、むしろここはいい席なのかもしれない。


 キーンコーンカーンコーン。

 数度、特徴的な電子音がスピーカーから流れる。

 これから学校生活が始まる事を知らせる音だ。

 

「おい、みんな席につけよー。ホームルーム始めるぞー。」


 先生がそういってみんなを席につかせる。

 数秒か経てばみんな席について、話を聞く体制になる。

 タイミングを見計らいながら、先生は連絡事項をつらつらと述べていく。


「今日も全員出席してるな。みんな健康でなによりだ。明日から土曜日で休みだと思うが、あまり羽目を外さずに、今度の定期テストの勉強でもしてるんだぞ。」


 はて、定期テストとな。


 そういえばそうだった。

 私自身はこのチートボディがあるから、人より勉強していれば勝手にテストの点数は取れるものだからうっかり忘れていたが、テストがあるんだった。

 流石にもう前世でいつのタイミングでテストをやっていたのかとかは思い出せないが、この時期だったか。


 テストといえば学生の定番イベント。

 お友達と一緒に机をくっつけてテスト勉強をしたり、きゃー、テスト怖いーとか廊下で会話をしたりする、なんだかんだで楽しい期間である。

 せっかく与えられた2度目の高校生だ。

 そういう小さなことも満喫しなければならないだろう。

 私は、我慢していられないと、早速隣の席の子に話しかける。


「ねえ、縁。テスト前に一緒に勉強しない?」

「え、普通にいやだ。私は赤点でもいいから。」

「えぇ…。」


 彼女は緑川縁(みどりかわゆかり)。漢字で書くとゲシュタルト崩壊しそうな名前をもつ、ギャルっぽい女の子である。

 短く切り揃えた髪の毛は薄く緑色で染めてあり、クラスの中でもかなり可愛らしい容姿をしている。


「そんなことより、今日心スポ一緒にいかね?」

「え、なに。最近心霊スポットは流行りなの?」


 今日はどうやら心霊スポットによく誘われる日であるようだった。

 何故用事が入っている今日に限ってこんなに誘われるのか。

 私も一緒に心スポ行きたかったよ。

 多分、今日の星座占いは最下位だったに違いない。

 天気以外のテレビを見てないからよく知らないけど。


「え、なんで流行りって思ったん?」

「いや、朝に怜にも誘われたから。」

「ああ。なるほど。」


 心霊スポット探検という、よくある学生リア充イベントをみすみす逃すのは辛いが、仕方がないので彼女のお願いも断る。


「ごめんね、今日は魔捜研によばれてて。」

「あー。なるほどね。それなら仕方ない。ボディガードがいれば、より楽しく心スポ探検ができるとおもったんだけど。」

「それ、怜にも全く同じこと言われたんだけど。山の神社の心スポ行くから着いてきてって。私はみんなのSPじゃないんだよ。」

「いやぁ、考えることは皆同じってね。やっぱり、強い人がいると安心するからさ。」


 まあ、それはそうである。

 ちなみに私が強いと思われているのは、例の法律でバイトとして政府に所属してることが知られているからだ。

 あの法律が適用される人はめちゃくちゃ魔法が使えるというのは全国民の共通認識であるので、そのなかの1人である私が強いと思われているのは当然なのである。

 特にこれに関しては隠してるわけじゃないので、私と仲の良い人は大抵知っている。

 まあ、言いふらしている訳でもないから、知らない人は知らないけど。

 

「というか、怜のグループも来るんか。もしいつメンだとすると、私たちで4人、怜たちで4人の合計8人が心スポに集まるということになる。これはもう、幽霊の方が怖がって出てこないかもね。人が多すぎて。」


 確かに。

 というか、8人もいたらやかまし過ぎてもう多分誰も怖がらないよ。


 ついでに、山にある心スポとか言ってたけど、うるさ過ぎて熊の心配もなさそうだ。


書いてある分はここまでだから、次はめちゃくちゃ遅くなるかもしれない。

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