風呂上がり
ただぼーっとしていると、翔がリビングに戻ってきた。
翔の黒い髪がしっとりと濡れていて、顔が少し赤くなっていた。
雫は風呂上がりに、どういう言葉をかければいいのかを考えた。ジュースを飲みながらゆっくりテレビでも見てればいいか、と考えついた。
「ねえ、ジュースすき?」と翔に聞いた
「…うん」と翔は控えめに頷いた。
彼女はコップに果汁100%のオレンジジュースを注いだ。雫はオレンジジュースが好きなので、常に2リットルほど常備している。オレンジジュースの入ったコップをソファの前に置いてある、小さめの机に置いた。
「テレビ見ながら、一緒にのもっか」と彼女は声をかけた。
雫が座ると、翔もその横にちょこんと座った。
翔からは石鹸のいい匂いがした。
雫はテレビを付けて、面白そうで2人で楽しめそうな番組はないか探した。
よくあるゴールデンタイムのバラエティにチャンネルを変えて、オレンジジュースを一口飲んだ。
翔もゆっくりとジュースを飲んでいた。
2人ともあまり喋らなかったが、テレビがある分、食事の時よりは気まずくなかった。
なんとも言えない時間を過ごして、ふと、時計を見ると8時30分、小学生がどれくらいの時間で寝るのかは知らない。翔に聞けばいいと思い、声をかけた。
「翔くんは、普段何時くらいに寝てるの?」
翔はこちらをちらっと見て答えた。
「……だいたい、9時、くらい、かな」
「じゃあ、そろそろ、寝る?」と雫は聞いた。
翔はやはり控えめに頷き、返事をした、
「うん、そうする…」返事の声が少しとろんとしていて眠いんだな、と雫は感じた。
「あっ、歯磨きしてない、一緒にしよっか」
眠そうな翔をつれて、洗面台で2人並んで歯磨きをした。まるで姉弟みたいだな、と雫は感じた