晩御飯
雫は取り敢えず翔をリビングまで案内しようとした。「もうそろそろ晩御飯の時間だし、リビングのソファに座って待っててね、色々話したいこともあるけど」
翔は無言で頷き、雫の後をついていった
彼女は晩御飯の材料が一人前しかないことを思い出した。今から買い物に行く時間もない。
冷蔵庫と睨めっこをしながら、チャーハンならギリギリ作れるかもしれないと判断した。
翔の様子を見ると、昔遊んではいたが、この家で一緒に遊んだことがなかった。そのせいで気まずそうに、慣れない様子でスマホを見ていた。
この家でどれくらいの期間、過ごすことなるのか分からないので早くなれてほしいな、と雫は考えていた。考え事をしている内にチャーハンが完成し、机に並べた。
「チャーハン作ったから、一緒に食べよっか」
「……ちょっと早めかもしんないけどね」
翔は椅子に座り、手を合わせて小さな声で
「…いただきます…」と言い、食べ始めて
雫も同じように手を合わせ、一口食べて翔に聞いた
「どう?おいしい?」
翔は無言で頷いた。
この子はこんな無口なタイプじゃなかった、と雫は考えていた。緊張しているのか、それとも思春期特有の症状なのかもしれない。
その後は会話らしい会話はなく、食事は終わった。翔の皿にはごはんつぶ一つ残っておらず、とりあえずおいしかったのは本当だったんだと雫は安心した。