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2奈落

僕は生きていて、目が覚めた。


「…僕、生きている」


なんで生きている? 僕は周りを見渡した。


「どうなっているんだこれ?」


不思議だった。液体が僕を包んでいた。しかも、喋れるし、呼吸もできる。


「窒息はしないんだ……」


僕は泳いでみた。普通に泳げた……


「ぷはー」


僕は液体の塊の表面に出た。


「地面がある」


僕は地面に向かって泳いだ。幸い、それ程の距離ではなかった。液体から地面へあがる。


「……この液体の上に落ちたから助かったのか?」


僕は上を見あげた、果てしない闇。一体どれだけ落ちたのか?


「助かっても、いつまで生きていられるか?」


僕は勇者に食糧や水を奪われていた。いや、殺す為に、この奈落の底に落とされたのだ。


僕はしがない『底辺回復術士』だ。謎の最高レアリティの『才能』を持つ。僕達は15才の成人式でもらう『才能』で全てが決まる。僕は15才で『才能』をもらい。幼馴染のエルヴィン、フィーネと妹シャルロッテも才能を授かり、勇者パーティに選抜された。それは名誉な事だった。その筈だった。


ここは修羅のダンジョンの最下層、奈落の底。このダンジョンはこの王国でも有名なダンジョンだ。代々の勇者がこのダンジョンを攻略してきた。経験値を得て、レベルを上げて、魔王討伐の為に切磋琢磨する為に。


「何とか生き残る方法が……このまま死にたくない」


昨日の夜の出来事が思いだされた。僕は拳に力を込めた…このまま死んでたまるか!


この奈落の底のダンジョンは有名だ。落ちて帰ってきたものはほんのわずかだ。帰ってきたものがいる理由はわかった。普通、落ちた段階で死ぬだろう。


帰ってきたものは無類の強さを得て帰ってきている。ただし、帰ってきたものは自分の意思でこの奈落の底へ落ちている。みな更なる強さを求める強者の所業だった。


「強くなったのは、ここにべらぼうに強い魔物がいるって事だよね?」


僕は呟いた。戦士が強くなるには魔物を倒して多量の経験値を得て、倒した魔物から貴重なアイテムをもらって強くなるしか無い。強い魔物程多くの経験値をもらえるし、貴重なアイテムももらえる。


「多分、最初に魔物にあった段階で僕の死亡が確定するんだよね?」


僕は自暴自棄になりそうだった。このまま死にたくない…でも。


「なんだ? あれ?」


僕は見慣れないものを見つけた。昔の戦士の成れの果てだろう。誰かの骸がある。その近くに何かアイテムが落ちていた。


「ここで、この戦士が魔物と戦って、相打ちになったのか? そして、アイテムだけが残されたのか?」


僕はアイテムを手にした。


「―――――!!!!」


それは驚愕のアイテムだった。


「ラジエルの書!?」


それは希少なアイテム、ラジエルの書だった。読むと戦わずして多量の経験値を得る事ができる魔法の書。


「しかし、このラジエルの書、おかしい」


僕は訝しんだ。何故ならラジエルの書はゴールド、シルバー、ブロンズの3種類しか無い。しかし、このラジエルの書はレインボーとある。偽物か呪われたアイテムかもしれない。


「でも、やるしかないか?」


僕は覚悟を決めた。ラジエルの書・ゴールドは多量の経験値を与え、通常はレベルを10位底上げしてくれる。今の僕はレベル40、せめてレベル50になれば、生存率があがるか?


僕はラジエルの書の封を切り、読み上げる。


「な!?」


僕は愕然とした。頭には天の声が聞こえた。


経験値99999999が付与されました。


レベル99になりました。


天の声のスキルを獲得しました。


光魔法レベル9に上昇。


剣スキルLv9に上昇。


鑑定スキルLv9に上昇。


パーティ解除を確認、パーティバフ、ステータス全員2倍のスキルを解除します。


パーティ解除を確認、パーティバフ、経験値取得率全員2倍のスキルを解除します。


パーティバフの犠牲処置、本人ステータス1/2を停止します。


パーティバフの犠牲処置、本人経験値取得率1/2を停止します。


ソロ特典、本人ステータス2倍のスキルを発動します。


ソロ特典、本人経験値取得率2倍のスキルを発動します。


「凄い、力も魔力も溢れ出ている!」


僕はもしかしたら帰れるかもしれないと思った。




僕は昨日の事を思い出し、怒りに打ち震えていた。幼馴染の婚約者を奪われて、命までも奪われそうになった。かつての友達エルヴィン、あんなヤツ…


だが、皮肉にも、この修羅ダンジョンの奈落を攻略するには、友達であったエルヴィンと子供の頃から何度もしたちゃんばらごっこで身に付けた剣のスキルが役にたった。レベル99になったと同時に剣のスキルレベルが最大値の9になったのだ。おかげで攻撃の術がなかった僕にも剣で戦う事ができる様になった。幸い、剣はあの冒険者の亡骸の近くに落ちていた。


「おりゃぁああああああ!」


何百体めかの魔物を斬り殺し、僕は肩で息をしていた。最初は簡単だったが、段々と辛くなってきていた。魔物の強さがどんどんと強くなり、底辺回復術士の僕には厳しい戦いが続いた。


だが、一つ思いついた事がある。攻撃魔法を使えばいいのではないか? 才能が無くても何度も何度も剣や魔法を使えば、スキルが身につく、女神様の加護を受けられる。ならば、攻撃魔法を使えば、身につくのでは? 僕の知っている生活魔法をアレンジして、術式に工夫をすれば、理論上は攻撃魔法になる。いや、才能を持たない者はそうするしかないのだ。そもそも才能は100人に一人の確率でしかもらえないものだ。


僕は生活魔法の冷気の魔法を工夫して、フリーズブリッドという氷結系の攻撃魔法を編み出した。そして、やたらと火属性の魔物が多く出るこの階層の魔物に使う事で、戦いは俄然有利になっていった。そして何階層目かの強い魔物があるアイテムをドロップした。


「見た事ないアイテムだな」


俺は訝しんだが、早速鑑定してみた。鑑定のスキルはありがたかった。偶然僕に宿ったユニークスキル。このユニークスキルは突然発現して、罠やアイテム、特定の物事・分野に対しての知識が自然に流れ込み、本物と精巧な偽物を並べても真贋が判別できる、ものの由来や伝聞されている程度の知識ならすぐに引き出せる。


不思議なスキルだ。早速、鑑定のスキルを発動する。


『オーブ:使用者に経験値999999999とユニークスキルをランダムに付与する』


「経験値はともかく、ユニークスキルが手に入るのはありがたい」


つくづく底辺回復術士という謎の才能には閉口した。レベルがカンストしていても、ステータスは十分とはいえなかった。勇者エルヴィンならとてつもないステータスになっていただろう。


「せめてユニークスキルを手に入れて、有利にしないと。使ってみよう」


僕は早速オーブを使った。


「うおぉぉぉぉぉぉぉうぉぉぉぉぉぉぉぉ」


僕は叫んでしまった。ラジエルの書の時に似ているが更に何かが違う。そして天の声が聞こえてきた。


『経験値Lv99の上限を突破、レベル199になりました。


ユニークスキル【魔剣】を習得しました。


剣のスキルレベルがLV19になりました。


光魔法のスキルレベルがLV19になりました。


闇魔法のスキルレベルがLV19になりました。


火魔法のスキルレベルがLV19になりました。


水魔法のスキルレベルがLV19になりました。


風魔法のスキルレベルがLV19になりました。


ステータス魔法を習得しました。


「ステータス魔法? 聞いた事がある。自分のステータスを確認できる便利な魔法、それにユニークスキル【魔剣】? どんなスキルなんだ? ステータス魔法でわかるのかな?」


僕は早速ステータス魔法を唱えた。


【名 前】 アルベルト


【年 齢】 17


【才 能】 底辺回復術士


【レベル】 199


【体 力】 60(+120)=180


【魔 力】 80(+160)=240


【攻撃力】 50(+100)=150


【耐久力】 40(+80)=120


【素早さ】 80(+160)=240


【知 力】 80(+160)=240


【幸 運】 10(+20)=30


【スキル】 光魔法〈Lv19〉、闇魔法〈Lv19〉、火魔法〈Lv19〉、水魔法〈Lv19〉、風魔法〈Lv19〉、土魔法〈Lv19〉、剣術〈Lv19〉、鑑定〈Lv19〉


【ユニークスキル】 魔剣〈Lv9〉、パーティステータス強化3倍〈Lv19〉、自己ステータス強化3倍〈 Lv19〉


「レベルが上限を超えている!」


僕は驚いた。この世界のレベルは99まで、それが常識だった。それにスキルレベルの上限も越えている。スキルレベルの上限は9の筈だ。


「奈落の底の正体はこれなのか?」


僕は理解した。過去の強者が何故更に強くなれたのか。彼らはレベルをカンストするだけでなく、それ以上の力を求めるにはレベルの上限突破が一番理解できる。彼らもこの事実は知らなかったのかもしれないが、事実として更に強者となった者がいるから、この奈落の底に挑むものがいるのだろう。


こうして僕はダンジョンをどんどん突き進んで行った。途中、何度かラジエルの書やオーブをゲットした。オーブで収納のユニークスキルを得て、それまであきらめていたレアアイテムも収納する事ができるようになった。


そして、とうとう最終階層まで来た。最終階層のボスはエンシャントドラゴンだった。人が一人で倒せる様な魔物ではない。だが、苦戦はしたものの、なんとか勝利した。そして物凄い量の経験値が僕に流れてきた。


こうして僕の最終的なレベルは999になった。


僕、魔王倒せるんじゃないの? 僕はそう思った。

連載のモチベーションにつながるので、面白いと思って頂いたら、ブックマークや作品のページの下の方の☆の評価をいただけると嬉しいです。ぺこり (__)

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