偽蛸判明
「速く乗ってくださいハヌ殿!」
「ハリガネとグラトニカを置いてく気かい!?」
「父さんが逃げろと言ったのです!!」
「……儂等を巻き込む可能性がある、だから隙を見て加勢をしかけます…必要な言葉が足りない父ですが、勝算無く命を捨てる真似はしない」
「……行こう、ハリガネさん達もどこまでやれるかわかんない……レプンカムイ様のとこまで戻れれば…」
さーて、どうするかね。
「上等と言って見たものの……さて勝てるかねこんなデカブツ」
『言葉だけは弱気だな……その実我以上に猛っておるではないか』
まあ実際ワクワクはしてるさ、これが長老級か!ってね。
ここ最近のちょっとだけ特訓した成果……出てるといいなあ。
『……で、どうするのだ?』
どうするってそりゃ……どうしようね、どうしょうもないかも。
だって……これだよ?
「……洞窟どころか島の外壁にへばりついて丸々自分を島の一部に擬態させてやがったか……蛇連中に見つからないのも仕方ないね」
〔何じゃ……貴様等可愛い儂の子分達食い散らかしただけじゃ足りのうて儂まで殺しに来たっちゅーんかい我ぇ!〕
どこ出身お前!?……いや異世界言語を私向けに翻訳してりゃたまにこうもなるか。
「違うのよ、君の子分はまあ食べたけどそれは食物連鎖って奴じゃない?」
〔……せやな、せやったら納得するわ〕
〔……美味く食べてもらえたなら彼奴等もまあ本望やろ〕
「いや別に美味しくはなかったんだけどさ」
〔そこは世辞でも美味かった言えや!!どんな教育受けとんねんこのガキ!〕
あやべ口に出てた。
〔もぉぉ許さへんぞ!次の祭まで待ったらぁ思ってたけど今からこの島の奴等も含めて…〕
〔擦り潰したる!!〕
レプンカムイより大分デカいか……加えて触手はどれもこれも太くてマッチョ……ていうかさっき頑張って倒した奴ですら一本分だったもんな。
「待ってくれタコさん!」
〔そのさっきから儂のことタコタコ言いおってからに!儂にはちゃーんと【偽蛸王ポリプシオン】つー名前があんじゃボケ!〕
「名前格好いいね!ちょ、ちょっと話し聞かない!?」
〔お…おおん、そうか?そうやろ?ふふ、わかっとやん自分、名前は?〕
ちょろいぞこのタコ。
「ハリガネさんって皆呼んでるよ、名前らしい名前は無いんだけどさ」
〔……そうかー、自分苦労してんやな…教育の話とかしてスマンかったわ〕
すげえ気の使われ方してんな私。
「君の子分を食べちゃったのも君に攻撃したのも謝るよ、でも君くらいの強者相手じゃ急にぶん殴る以外じゃ戦いにもならないとこだったからさー」
〔ほ、ほほぉん?せやろ?儂、結構強いよな?魔法もちょっとは使えるし…自分等最初儂の足一本を本体だと思ってたもんな?〕
「やー、本当に……こっちの総攻撃で足一本引っ込ませられただけなんて力の差感じちゃうよね」
〔いやいやいや!!儂の足一本でも潰せたんやったら大したもんやて君!誇ってええよ!〕
気持ちいいくらい乗せやすいなこいつ。
〔あー、何か怒ってた気持ちどっか行ってもうたな……わかってくれたんやったらええわ、自分等今度からはちゃんと戦う前に挨拶するんやで?いくら魔物言うても1つの命やからな!〕
「本当!?……じゃあ図々しいんだけどついでに君の墨とか皮膚とか何でもいいんだけど少し貰っていっちゃ駄目かな!?」
〔いや怖!?何やいきなり……自分で言うのもあれやけど不味くなることで他の魔物に襲われにくくなってる種族やからあんまりオススメは…〕
「そうじゃなくて!君の素材があれば私の子供に武器を作ってあげられるんだ!」
〔……子供?ああ、さっき後おったお嬢ちゃん達?〕
「そうそう、親心としては武器の一つくらい持たせてやりたいんだよ……未だに木刀一本じゃ格好つかないし虐められちゃう…」
〔あー、あー、わかったわかった……ったくもう上手いんやから…買い物上手って言われるやろ自分、エグい手口やでほんまに…〕
〔まあでもな、儂も子供ぎょーさんおるから気持ちもわかるわ、お母さ…お父さん?すまん、わからんわ他種族の性別とか〕
まあわからないが正解だから気にしなくていいや。
〔ゆーて、儂の腕とかすぐ生え変わるし、墨なんざいくらでも吐けるわ、ほれ持ってけや〕
おお…でっかい触手をそんな容易く引き千切る当りやっぱ腕力すげえな…てか痛覚とかないの?
〔ところで自分等そんなすぐに武器必要やったん?まあ今のこの国じゃそんなすぐに金なんて貯まらんもんな?〕
〔まあでも……どうせもうバレとるやろしこのままおっちゃんはこの国潰すから、あんますぐには戻らん方がええよ〕
……マジか。
どうしよ、このタコさんなら本気で今からターハル乗り込みそうだし……蛇連中の強さは置いといてもこんな巨体が暴れたら祭なんて無くなっちゃうんじゃないの…?
〔あー、久々に全身動かしたから腰痛いわ、ま……いい運動になるわな〕
「ポリプシオンさん……ちょっと聞いていい?」
〔ん?何やまだ居ったん?そこ危ないで〕
「あのー、何であの国潰そうとしてるの?」
〔そんなん決まっとるやん、あそこにはな、ぎょーさんリソース溜まってんねん〕
〔何や昔の神だの何だのそのものがあるからな、そこ擦り潰して全部儂のもんにする……そうしたら、儂も晴れて海の神の仲間入りやで〕
……ま、分からなかった単語は後で考えるとして……マズイよね。
『我等の本来の目的も達成できず……それどころか神のリソースを一介の長老級風情が取り込みきれるわけもない……爆ぜるぞ』
この巨体が?そんなん…
『死ぬであろうな……欠片も残らぬ』
……結局?
『……結局だ』
……………しゃーないやるか。
〔……何や、やるん?〕
「悪いね、こっちにも都合があるもんで」
『更に先へ』
〔えらい豪華になるやん、てか…自分特異点やったん?ほんなら……そのリソースも頂いとこか〕
「【暴食王 グラトニカ】だよ、名前なんだっけ?タコさん」
〔ほんま無礼なガキやで、まあええわ……〕
〔擦り潰したる〕
Q.骨髄はいつ出るの?
A.彼はハリガネさんで言うところのシストの状態でまあまあな距離移動する生物に食われたのではるか遠くです、その内出るよ。
Q.ヒロインって決めてる?
A.ハリガネさんがヒロインだよ。
Q.刀鍛冶のおっさん達って毒されてないの?
A.ばっちりされてるけどアブドゥルと同様になんかしらスイッチが無いと基本普通の人よ。