寵愛の子は滅びに向かう歌を囁く
「蛸の長老……となればやはり」
「……ブレさんが倒した奴の親玉だろうね、でもすっごく怒ってるって」
ふむ……お嬢ちゃんのスキルである『思考盗聴』やらなんやら、私が使ってもいいとこ考えてることがわかる程度のものだってのに、見事なものよね。
コミュ力の問題なのかな?ハリガネさんかなりコミュ力高い気はしてるけど。
『阿呆……ミリアのは生まれついた称号の問題ぞ、我等が真似をしようとも簡単ではないさ』
『獣の寵愛』とかいうあれか、確かラブハート氏が言うにはギフトがどうとか言ってたね、結局詳細は聞かなかったけどまあ…その内わかるでしょ。
「父さん、準備は終わりましたか?」
「身一つだよ、回復薬も無ければ武器だって持ってないんだ私達は……調味料は置いてけな?」
「なんと…それは本気ですか父さん…」
「嘘…信じらんない……みたいな顔してんじゃないよバカチンが、長老級まで食べる気か!とは言わないけど……お前あのタコ臭くて不味いって言ってただろ?」
「時間が経ってしまうとどうしても……ですが父さん、長老級ともなれば味の向上は」
「多分してねえよ!何なんだお前のその食に対する姿勢は!」
かと思いきや食育がしっかりしてるわけじゃないからねこいつ、好きなものを好きなときに好きなだけ食べてるだけだもの。
「……太ったらその鎧入んなくなるからな」
「んな…!?乙女にそんなこと言います!?」
「黙れ雌雄同体!早う準備してこいや!」
やれやれ……おや、ハヌさんがゴテゴテした謎の小手を。
「イメチェン?似合っちゃいるけどハヌさんが扱うにはゴツすぎない?」
「違えよ、この前の石像戦であんまり俺の攻撃は通らなかったからな……ま、こいつがあれば盾にもなれるってもんさ」
「頼もしいね……シャルヴは…行けるか」
「えと……はい」
うーん緊張してますな……よし。
「シャルヴ、私の目を見て」
「え、あ、は、はい…」
……赤くなってんじゃねえよ。
「これはお前達のデビュー戦みたいなもんだ、一瞬の気の迷いで君も、あの子も、私すら死にかねない」
「……だからしっかり戦いな、そんな心配しなくてもケツはしっかり守ってやるさ、それから必勝法を教えてやろう」
「…必勝法…?」
「怖い時、絶望した時こそな、笑え」
「どうにかしないと死ぬ、どうにかしても死ぬ、それなら笑ってできるだけリラックスしてた方がいいだろ?」
ほれスマイルスマイル、にっとね。
「……少し…肩の力が抜けた気がします」
「そりゃ良かった、頑張んな……何度もピンチ乗り越えてきたハリガネさん流の必勝法さ」
ま、笑うことすらできない相手もいんだけどね……
『…………ふん』
どしたの?
『……別に』
「なあハリガネ、俺も少し緊張が…」
「ハヌさんは行けるでしょ、ワクワクしてるじゃん」
「ぐぬ……」
「さぁて……それじゃあさくっとタコ爺さん倒して武器作って祭りと洒落込もうか!!」
「行くぞー、えいえい」
「……?」
「…えい?」
「嘘だろ通じないのかよこれ」
戦う前からハリガネさんの士気だけ驚きの下がり方を見せたじゃねえかどうしてくれるんだ。
『……我等は汝とは住む世界が違ったのだ、知らんのも無理はない』
とんだカルチャーショックだよ畜生……まあ、しゃーないね。
『……だから教えろと言うのだ、汝の士気を高めるそれを』
「あー、これはね…皆で声合わせてえいえいおー…って叫ぶ…そんな大それた物では無いんだけどさ……」
「なる程、掛け声ですか」
「………やってみよ?」
「えいえいおー、で良いんだよな?じゃあハリガネ、また音頭を取りな」
「お、おねがいします…」
「あー…えいえいおー!」
「「「おー!」」」
「ウォォォォオオ!!」
どわぁうるせえ!?何事ですか鯱ゴッド!?
「……混ぜて?神様も寂しいからね?」
「ごめんレプンカムイ…忘れてはいなかったんだけど君船の操縦するために本体に戻ってたからつい…」
ていうか今船の底からヌルっと出てきたけどお前その姿実体無いの…?いや傲慢王に吸われてたから実体はある…のか?
……いいや、考えだしたらきりがない。
「それじゃあ出発ー、忘れ物は無いね?行くぞー」
なんだかこうして見てると遠足の引率みたいな気分だな。
「……不審者と踊り子と私が教員は普通に考えてヤバいな」
「何か失礼なこと言いましたね父さん?」
「しばきまわすよ?」
「勘弁してください…鬼教師寄りだなぁ…」
「……んでお嬢ちゃんや、場所は?」
「……レプンカムイ様とこの船じゃ行けるとこまでに限りがあるからある程度進んだら小舟で行く…小舟なら中まで行けると思う」
「ん……ちょい待ち私等はどこに連れて行かれる感じ?」
「……海辺の洞窟、中は入り組んでるけど…案内は任せて」
また洞窟かよ……いい加減閉所恐怖症になりそうだ、ついでにピエロ恐怖症も発症したらどうしてくれようかな。
「……ついたみたい、行こ」
「憂鬱だなぁ…洞穴にいい思い出がないんだもん」
臭かったり怖かったりボッコボコにされたり……
「ぼやいてないで小舟下ろすの手伝って」
へいへい……2船か…ん?
「あり?この舟前からあった?」
「……シャルヴが乗ってきた奴……は盗品だったから塗装したりしてわからなくした」
「私が偽造しました」
「君等のその悪事に手を染めることに躊躇いの無い部分嫌いじゃないよ」
おかしいな、誰に似たんだか。
『貴様だ、貴様』
ははは、そんな馬鹿な。
「よっと……おー、案外しっかりしてるじゃない」
「そりゃ蛇共が貿易で使ってたやつだからね……こんなもん良く盗む気になったじゃないかさ」
「シャルヴ実は割と実力ある方だろお前…」
主に度胸方面で。
「あの頃は……無我夢中って言うか…何というか…」
藁にもすがる思いで乗り込んだらとんだ珍獣集団で申し訳ないね。
「配置は…私と子供達二人、ハヌさんとブレ子は一緒の舟にお願いね」
「それは構いませんが…どういう割り振りですか?」
「軽そうなハヌさんとお前だよ」
「……なるほど」
「うおぉい!?急に動くんじゃないよ阿呆侍!?」
「離してください!この虫ケラはだきゃあ生かしちゃおけない!」
はっはっは、我が家は賑やかだ。
「行くよー、ちゃんとぴったりついてきてよね?」
「待て貴様!話は終わっていな……ハヌ殿、儂の側に……何か来ます」
「な…入口だよ!?もう気付かれたってのかい!?」
……いや。
「多分コウモリか何かじゃないかな……ま、当然…私等を狙ってくるだろうけど」
うーん……レプンカムイかラブハート氏がいればなぁ…大声で全滅なのに。
「なんて考えてても仕方ねえか、やるよ皆」
「………待って」
……お嬢ちゃん?
「これくらいなら私がやる」
「すぅ……シィィィィィィ…」
え、何…喘息?
『……ミリアが貴様のおらぬ間に編み出した、ミリアの戦い方よ』
お嬢ちゃんが……?
……何だこの音、沢山の何かが水に落ちてくような……
お…来たか!……ってあれ?コウモリ…ではあるけど……一匹?
「うん…うん、怖かったね…向こうは安全だよ、早くお逃げ……」
少なくとも数百はいそうな気配だったんだけどな……他のはいったい…
「……皆、パニックになってお互いぶつかり合って落ちちゃったよ……見えない敵から逃げて…」
「ハリガネさん……これが今の私の戦い方……どう?」
…………やるじゃない。
Q.二次創作ってどこに書いたらいい?
A.基本プラットホームに書かれてる二次創作の規約に沿ってれば何も言わんよ、エロでもグロでも書くが良い。
Q.ハヌさんのデザはいつ頃に…
A.はは、忘れてたとかそんな、はは。
ごめん。