意見と知見のぶつけ合い
「まあね、僕も君のその不敬とか存在しない考え方嫌いじゃないよね」
「いやぁ…そんな」
「褒めてはないねえ!?しかし……何でまたヒレ?この土地じゃご利益とかないよ?」
「いやその…武器を頼みに行ったら特異点個体の素材を求められちゃってさ、身近な方から行こうかと…」
「仲間はやめとこうとか思わないかね…というか、僕は特異点ではないんだけどね?」
「そんだけの力を持ってして特異点ではないのですか…?」
「あー、いや難しいんだよね…僕はほら、要するにあの土地において沖の神、近海で一番偉かったのだね」
「あー、何かキラウシが言ってたっけ?穢れから逃げれたみたいな」
「そう、厳密にはあの品定めが来たとき、僕はこの世の理の外にいた……ざっくり言うと別の世界にいたのだね」
異世界転生してたの…?
「つまり君は転生者…?」
「それとこれとは別だね、まあ簡単に神の世界とでも思っていてくれていいと思うよね」
神の世界……天国的な?日本だと極楽浄土?いやでもアイヌ神話においてはどこになるのそれ?
「まあさっぱりわからんけど君は特異点じゃないのか……うーんどうしたものかな」
「まあそもそも僕の身体の一部もぎ取っても人間じゃ加工すらできないだろうからね……信仰の届かない異国でも僕はまだ神だもの」
なーんかもう少し考察はできそうだけど……そこにいたるための発想が見つけられないな……グラさんわかる?
『我とて神になったのは半分のみよ、まあ汝よりかは理解できるが…我から説明したとて同じ事、貴様にはそれを知るための土台が無い』
意味深な言い方するじゃない…土台?
『……汝、今立っている船の板材を食えるか?我の体でなく、汝の体で』
や……無理だろうね、養分みたいなのを吸ったりとかはできるけどそもそも口がない。
『であろう?つまり汝は木材を糧とは捉えられぬ、そうする発想が無いのだ』
あー……蟹とかも食べ物って知らなきゃエイリアンだもんな…何となくわかってきた。
『貴様は今、神という存在について知識を得るための知識が無い、考えようとも思えぬのはそれ故よ』
馬鹿すぎる人が勉強でわからないところがわからないみたいな話なのか……ハリガネさんバカにされた?
『いや、そんなものだ……それに何もいつまでもわからないものではないからな、我とてこの姿になってから得た知見よ』
やっぱりさっさと人にならないと何が起きてるかすらわからなくなっちゃうのか……勉強嫌い。
ってちげえ、今はそこじゃなくて特異点の素材がだね。
「特異点素材……って言っても特異点なんて倒したらそのまま武器になることのが多いと思うがね」
「長老個体ならまだしも特異点は倒したら消えちゃうじゃないかね?」
「私特異点倒したことないのよ、キラウシは勝ったけど滅殺はしてないし」
消えちゃうの?
『む……汝と別れた後に出会った存在は生きたまま食らってしまった故わからぬ、が……確かに腹に貯まらなかった覚えはある』
「いや僕も詳しくはないんだがね?ちゃんと倒したことも少ないし、ただ奴等は決まって死んだあとどういうわけか肉体が解けて消えるのよね、何かしら武器やお宝だけ残して」
ドロップアイテムじゃん……明確にドロップアイテムじゃん…これあれだな、鍛冶屋の親父あんまり特異点について知らなかったんだな……いやまあ、倒せるやつがいなけりゃそんなもんか?
「つまりはボスエネミー専用のドロップ品か…確かにレプンカムイ倒して素材全部持って帰れって言われたら不可能だもんな…」
「仲間を倒そうとするんじゃないよね…」
「てかレプンカムイは倒したことあるだ?どんなもの落としたの?」
「やー、それが僕の知識じゃさっぱり分からなくて住処にしてたとこに置き去りだよね…おそらく人間が扱うキカイの類なんだろうけどね」
キカイ…機械か。
「あれは妙な匂いのする鉄でできたクジラみたいな……友達はセンスイカンとか言ってたね」
ねえグラさん、知見が増えれば増えるほど混乱が増していくんだけど話と違くない?特異点って何?今のレプンカムイの話聞く限りじゃ完全無機物だったんだけど?
『…………寝る』
逃げやがった!?
「ふむふむ……お手上げだわ、この話はまた今度にして解決策を考えよう、案のある人は挙手を…はいブレ子早かった」
「海に出てもらってレプンカムイ殿に倒してきていただくのは?」
「特異点倒したからって思うような素材になるとは限らないってことを今話したでしょうが!次、ハヌさんいける?」
「木刀尖らせたら以外と殺れるんじゃないかい?」
「諦めんないでハヌさん……次、シャルヴは?」
「えーと……すみません…さっきから話してることの半分もわからなくて…その、特異点っていうのが駄目なら別の強い奴を探せばいいんじゃないですか…?」
「あ、長老級とかかね?それなら確かに消えないしいいかもしれんね」
あー、いたなぁ…長老級。
今まで出会った中にいなすぎてわかんなかったわ、前にラブハート氏が倒したんだっけ?何かえげつなく臭い素材になったみたいな事言ってたね。
「ナイスシャルヴ、方向は決まったよ」
「じゃあ任せたぜレプンカムイ!」
「僕かね?」
「強いってわかってる奴と戦うなら迷うことなく最高戦力を叩き付けるのが一番だろうよ、任せた」
「んー……ヤりたいのは山々だがね、僕がこの土地で暴れたらそれはそれで問題なのではないかね?」
「俺も反対だよ、蛇の連中は目聡い…さっきからアンタ達が話してる神云々が本当なら不味いことになりそうだ」
結局戦闘は避けられないか……まあ、いい練習になるわな
「どう探すのです?結局のところこの国で有名な強者など即座に抱え込まれているのが常なのでしょう?」
「……私、この話し始めた時から魚とかの耳で探してる、鳥とかも…」
「お嬢ちゃん……仕事が速いね、自慢の娘だよ本当」
「……せい…!」
ンッ…何故脇腹を突いた貴様、照れ隠しか?パパへの小さな照れ隠しなのか?
「黙って」
「はい」
「……シャルヴが出るなら、できる限り準備は整えてあげたい、一度拾ったからには」
……母さん、うちの娘は立派です……私より遥かに立派になってます……出る杭か。
『倒すな……貴様もあやかれ…』
年下が自分より立派だとさ、自分でも驚くほどにドス黒い感情が腹から湧き上がるよね。
『共感を求めるでない、我は知らん』
「じゃあ、発見次第討伐に向かうという方向で行きたいんだけどさ、大前提としてまず勝てるかな…割と最近の戦績良くない気もするんだけど」
「儂も出ましょう、祭り前の肩慣らしです」
「俺もまあ……あんまり期待はすんなよ」
「わーい頼もしい女性陣……レプンは例によって待機してて、留守番任せるよ」
「……私も、行く 」
「あー……駄目」
「……私も、行く…!」
「お嬢ちゃん、適材適所で行こうぜ…お嬢ちゃん探す、私達倒してくる、それでいいじゃない」
「……私もやれる」
なーんでこんな時に我儘かねこの子は……あー……
「そうか……ならよしシャルヴ、君も来い……娘を任せる」
「え…あ…はい!」
いい返事だ!いや娘を任せるってそういう意味じゃないぞ勘違いすんなよ?
まあ兎も角……
「やれるんだろ?」
「うん……試したことは無いけど、殺る」
『汝……』
完成した秘密兵器早く使いたくてたまらない顔してたら止められないよ、それなら見えるとこで戦わせた方がいいさ……子供に無茶する経験積ませるなら大人が死んでも守ればいい。
それに…君の娘だろ?
『……汝の娘でもあるから心配なのだ、平気で命すら投げ出しかねん』
その節はすまんかったです。
「………まって、いた」
「……これは…蛸?」
……蛸かぁ…
Q.人魚って卵生?胎生?
A.下半身ってか生殖器が魚寄りなら卵生でいいんじゃねえかなぁとは思ってる。
ハリガネムシ世界においては卵生だし体外受精、いやまあ人魚の定義にもよるけどね、マーメイドもいればインスマスもいるからね、マーメイドは魚寄りに進化した人類だしインスマスは人寄りの魚だもん。
Q.ハリガネ世界の人類って弱いの?
A.技術力はあるし人数は多いから滅多なことがないと負けないけどタイマンなら勝てる種族のが少ないんじゃないかな。
ただ別にハリガネ世界の人類が弱いわけじゃなくてシンプルに他種族亜人種に上位互換が多すぎるのが問題なのよ。
獣人はデフォルトで夜目が効くし完全な闇の中でも舌を弾いた音の反響で探ってくる種族もいるからね。
ゴブリンとかには骨格も体重も違うからよーいスタートで殴り合ったら勝てると思う。
Q.グラさんってミリアとかに戦い方教えなかったの?
A.グラさんの戦い方はグラさん並の腕力と耐久力があって成り立つものだからむしろ教えてたのはブレ子
「岩を絶え間なく投げ付け続ければこの辺りにいるやつなら殺れる、やってみろ」