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慈悲を乞うのに遠慮はいらない

 夕飯もいよいよ寂しくなってきたな…というか今日においてはレプンカムイがどっか行っちゃって食料が無いもんだから本格的に質素なもんだけど。


 正直な話ハヌさんの貯金も限界だし海の幸だけじゃ栄養が偏っちゃう……その上…


「……武器、いるよなぁ…」


「唐突ですねお父さん……武器ですか?」


「うん、より詳しく言うならシャルヴの武器だね」


「僕の…?」


「いやそらだって君、今のままじゃひのきの棒に布の服でそこそこ中盤のクエストに挑むことになるぜ?」


「ひの…くえ…?」


 流石の王様も無茶振りが過ぎるよねそれは。


「まあそんなわけだから剣を買おうと思うんだけども、非常に逼迫した問題があってだな」


「……そんな金無いよ、アンタ等の飯で殆ど空っ欠だ」


「その通り、諸君我々は今文明社会に生きる上で命の次に大切な物……金が無いわけだ」


「ふむ……どうしようね」


「あ、打つ手は無いんですね」


「そんな簡単に金策できるなら人々は豪華客船に人生賭けてジャンケンしに行かないんだよ」


「極まった金欠でもかなりレアケースだとは思いますがそれ…」


「……クエスト、やる?」


「それも考えたんだけどさぁ……この国、いやこの街か?どうやらギルドとか無いみたいなんだよね……」


 ていうかギルドが動くほどの事が起こらないってのが正しいのかな?


「まあ…俺等は一々魔物退治とか依頼しなくても大抵の奴は何人かでやっちまうからな」


「ちなみに人探しとか希少な薬草の採取とかも無いみたい」


それ(・・)を生業にしてる奴等で事足りちまうしなぁ…」


「やだもう皆たくましいんだから……そんなわけで余所者の私達には仕事が無いのよね、どうしよっか」


「あの……僕別に木の棒でも」


「お馬鹿、装備が弱かったりピーキーなだけで死にかけるやつだっているんだぞ」


 わかりやすい例で言えばそこの似非侍。


「…儂は不殺の誓いを守ってるだけです」


 生きるか死ぬかでも正直に守り続けるやつがいるかーい。


『ふむ……装備品を売るか?』


 あー、ブレ子の鎧とか?でもあいつも祭出るから結局戦力が変わらなそうなんだよね。


「……ハヌさんなんか無い?」


「あてが無いことは無いが……」


 渋い顔してるところを見るにあんまり良い案ではなさそうね……


「そうなぁ…まあいざとなればブレ子を売るけど」


「儂を…?鎧ではなく儂そのものを…?」


 冗談はさておきラブハート氏なら本格的にドナドナしてもそれなりの価値が付きそうなあたり今いなくて良かったよね、見世物小屋とかに需要がありそうだもの。


「……まあ、行って見るかぁ…鍛冶屋」


 

 鍛冶屋……どうしよう、ちょっと心踊った。





「らっさぁ!!」「どっせい!」「よっしゃあ!」「おっしゃあ!」


 ああ凄い、もう熱気というか男臭さと気合いが煮凝って熱苦しさ(・・・・)が視認できそうなくらい凄い。


 リズミカルに金属を叩く音、視界いっぱいに広がるやや赤味がかった筋肉もりもりの肌色……胸焼けしてきた。


「こんにちはー」


「せいやあ!」「おっらあ!」「ふんぬらぁぁ!!」「せりやぁ!」


 …………


「こんにちはー!!」


「……聞こえてないみたいですよ父さん」


 ………………


「こんにちはぁぁ!!!!」


「「「「うるせぇぇぇ!!!」」」」




「……いや失礼した、仕事中は皆気が立っている上に鍛冶の音で少し聞こえにくくてな」


「うん……大丈夫です…」


 ……泣いてないさ、ちょっと急に怒鳴られてびっくりしただけさ。


「して、この鍛冶場に何用で?」


「ああいや…武器を買いたくてね」


「おおそれはそれは、そちらにありますので好きなだけ見ていってくだされ」


 わあ、並んでた筋肉が道を開けた先に武器が……夢に出る。


『あのゲテモノが並んでいても気付かなそうだな……』


 むしろ二〜三人混ざってたかもしれないよ?


「さ、選びなミリア(・・・)


 そうそう、街の人間の前でシャルヴをそのまんま呼んだら面倒くさそうだから服装と一緒に名前もお嬢ちゃんと交換してみたんだ、お嬢ちゃんのが身体はデカいが……まあ体型が隠れたほうが好都合だからね。


「さて……店主、子供が選んでいる間にちとご相談が」


「へい何でしょう、武器の調節でしたらサービスで」


「儂等にはその……金が無いのです」


「お帰りだ!!おめえ等仕事に戻るぞ!!」


「「「「へい親方ぁ!!!」」」」


「待って待って、聞いておくれよ親方ぁ…私等次の祭に出るのに金も無けりゃ武器も無くてさ……幼気な子達が蹂躙されちゃうかもしれない瀬戸際なんだよ?」


「金がねえなら客じゃねえんだよ失せろ!!」


 ごもっとも過ぎて言い返す気が無くなりそうになるね全く、資本主義に牙を剥く行いだぞこれは。


「まあまあそんな冷たいこと言わないで……手土産もありますよほら、タコ足」


 土産はブレ子が昨日くらいに結局取りに行ったタコの足をブーケみたいにしてみた。


「いるかボケ!そんな気色悪…生臭!?」


 殺したあと一日くらい置くとアンモニアみたいな臭い出すんだよねこいつ。


「頼むよー…必要な材料は私等で集めるし何でもするからー…」


「ええい喧しい!」


「頼むよぉ……これで死んだら化けて出るよぉぉ…」


「わかったわかった!話くらいは聞いてやるから寄り付くな!!」


 ま、ざっとこんなもんよ。


『……貴様我の身体であることを理解しているか?』


 それに関しては本当に申し訳ない、まあ祭りでどの道見返すさ。


「凄いですね父さん……情け無さで言えば右に出る者がいません…!」


「ふ、慈悲を乞うのは私の専売特許さ」


「何誇らしげにしてんだいこのクズは…」


 うむ、仲間からの確固たる信頼を得ると共に好感度がまんべんなく下がった気配を感じるね。



「おいこっち来い、店の前にいられちゃ迷惑だ」


「さあ、商談するぞ皆、ミリア(・・・)もそんな申し訳無さそうな顔してないでおいで?」


「……………はい……」



 ……子供ってこんなに申し訳無さが顔に出る生き物だっけかな。

Q.喧嘩祭り編今年中に終わる?


A.無理だよ。


Q.ハヌさんって結局グラさんの見た目が好きなの?


A.ハリガネさんの普段と戦ってる時のギャップにやられつつある。


Q.レプンカムイってどのくらい強いの?


A.今はすっごく強いくらい、彼等の神話が機能してる場所だと理不尽の塊みたいな強さしてる。

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[一言] この作品、ちらほらむさいおっさん出てくるけ好きやわ
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