師と仰ぐ人は選んだ方がいい
「はいはい脚を止めなーい!そんな緩慢な動きじゃ2秒と生き残れないよ」
私祭初参加だから一切知らないけども。
「は、はい!」
うーむ、動きは割といい……ていうか同い年とかと比較したらとんでもなく強いんじゃないかシャルヴ。
踊るような脚捌きに異常に高い構えから振り下ろされる攻撃……当てにくいけど強力な攻撃を当てられるようにした、みたいな戦い方って感じ?
何かやってたんだろうか?ハリガネさんの知ってる武術じゃないとは思うけども、ってやべ。
『汝!?』
「ごっはぁ!?」
「ごめんレプンカムイ!回収頼む!普通にカウンター入れちゃった今!」
「本体から景気のいい水飛沫が見えたからもう拾い上げてるね!」
有能なシャチだ。
「ちょっとハリガネさん……あんまり病み上がりの子に無理させないで」
「ごめんよ……考え事してたら足刀が綺麗に側頭部に」
「いやお父さんそのダメージは人体に許容されないのでは…?」
ここ3時間くらい打ち合ってたけど割と頑丈だったし死にゃせんだろ。
『人の子は脆いぞ……』
「まあでも交代、休憩終わったらブレ子次やりな」
「構いませんが……儂の刀はちと刺激が強くはありませんか?」
「薄皮程度にしてやんな、でもなきゃ死なない便利な刀さ」
ショック死とかしなければ。
ふー……いやしかし…スラムにいた栄養失調のガキでこの強さか…前回の祭で上の方にいたあのアブドゥルはどの程度強いんだか…
「……ハヌ、厄介な選手とかわかんないの?」
「何だ急に……そうだな、祭は武器もスキルも何でもありな都合上厄介なスキルを使うやつはいる…それに序盤はどうしても乱闘になりがちだからな」
「例えば『屍商人 ヤマ』とかか…こいつは先にリタイアやつの体を自分で操ってきやがる……胸糞悪い野郎さ」
「ゾンビ作りとかもっと終盤に出てきそうなやつだな…」
「まあ能力が厄介な分本体は貧弱だけどな」
よし、見かけ次第蹴散らそう。
「あとは…『鬼宿老 ブブ』、こいつはある程度殺ったら後は逃げてるだけだが…恐ろしく強い」
「ならできるだけぶつからないように立ち回らないとね……スキルとかは?」
「さあな、ただ前に見たときは『鬼族』とか呼ばれてるアタシの5倍はデカい奴を細切れにしちまってたよ」
詳細不明で異常に強い剣士か……関わりたくない奴筆頭だね。
「……アブドゥルは?」
「あいつは……身体からベタベタする体液みたいなのを出すんだが…それに触れると武器も拳もまともに通らなくなっちまう」
「関わりたくない奴の筆頭が一瞬で入れ替わったな……」
戦いたくない以前に近寄りたくないね、油であれよせめて、体液ってとこがなんとなく2乗って感じで嫌だよ。
「……まあ最悪『魔王の吐瀉』でも当ててみるか」
「しっかしまあ……そんだけ強い奴等も誰もかれも酒浸りってのは随分な祭りだよねホント…」
「まあな……あの酒が人を狂わす毒って言われてる所以だろうよ、何せあの酒のためなら命も惜しまないで鍛えるような奴ばっかなんだ」
ひえぇ……
「レプンカムイ、神の酒にありつけても程々にしようね」
「大丈夫大丈夫、一応僕神様だからね」
熊さんにボコられた経験がある時点で信用ならないんだけども。
「……ちなみに今回出るのが私達ことハリグラさんコンビと、ハヌさんと、シャルヴでいいのかな?」
「流石に僕が出るのは大人気なさすぎる気もするからね、というか認められないだろうしね?」
「レプンカムイはなぁ…少なくとも魔王を一撃で消し飛ばしちゃう奴は駄目だろうよ」
それも人形で。
「……私も出られれば」
「んー…お嬢ちゃんはちょっとこの戦いにはキツいんじゃないかい?」
「……わかってる、危うきには近付かないのが冒険者の鉄則……応援してる」
まあ、そのうち戦い方も教えて野営にでも連れて行ってやるかね。
「……約束」
「おうよ、ところでブレ子も留守番かい?」
「いえ、儂は出ますよ」
「戦闘力はさておき攻撃力に関してはお嬢ちゃんとタメを張るだろお前、無理すんなよ」
「父さん……ゲス相手には振るえる技もございますので」
「……危なくなったら寄生虫だけは外に飛ばせよ」
「勿論、逃げ足の速さは父さん譲りですから」
「…………ちなみにそこで物言わず倒れ伏したシャルヴは生きてるのかい」
「あの……その……なまじ戦える分綺麗にカウンターが…」
お前私の子だよ……確実に……
「まあ起きたら休憩挟んでもうワンセット行こうか、次ハヌさん行っとく?」
「俺かよ…いいけど」
できるだけ色んな戦い方するやつとぶつけとかないとね、実戦が一番身に付くから。
『……説得力あるな』
……伊達にこの世界入ってから生きるか死ぬかに生きて無いよね。
『ああ……というか近接格闘術はどこで…』
こんなもん戦いながら身に着けた喧嘩殺法よ?……いやオカマッチョさんの技術はある程度受け継いだのかもしれないけども。
「……やってみるか…パワーボム」
「ほう…爆弾でございますか?」
「爆弾のような威力は出る」
「ほう……」
「刀に反応するのはいいんだけど爆弾にも反応するのはなんなんだよ…たまに使ってるとこ見るけどさ」
「侍たるもの爆薬も火筒も使えねばなりませぬので…」
「おお……私の知ってる侍と違う…」
「今日はここまでにするか……よしシャルヴ、結構いいトレーニングになったんじゃないかい?」
「……『苦痛耐性』と『気絶耐性』が発現しました」
「持ってて損はないから問題無ーし!」
「ハリガネさん…?ブレさん…?病み上がり、わかってる?」
「ごめんて……明日からは私達も要領つかんだし軽くやるから…」
「いえ……むしろもっと厳しくしてください」
「え、稀代のドマゾだったりす……ブレ子、パパの脇腹に刀突き立てるのは止めなさい、膝が笑うくらい痛かったぞ今」
「失礼、つい」
「時間もありませんし……何より優しくされてちゃ勝ち残れないんです」
立派な子だわぁ……
「じゃあ明日からは感情というものがその顔から抜け落ちるまでボコボコにするからしっかり強くなろうね」
「え……いやその……」
おや、武者震いかな?やる気バッチリでいいじゃないか。
「……明日はグラさんにやってもらうね」
『うむ、明日は我が稽古を付けよう、貴様は休んでおれ』
……あれ?戦力外通告?
一週間跨いで久々の更新でございます!いやあもう、書いてないと気が狂いそうなくらい課題が多いよ。
えー、来月くらいを目処に設定資料集書いていきます。