表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/162

天喰。

 これこれ、やめなさい鹿君よ。



 刺さらないからと下からにょきにょきとはやすのはやめなさい。


 さっきから私の視線が上下上下とガクガクよ?



 気持ち悪くなってきた、三半規管があるというのか私のハリガネボディよ。


 しかしどうしたものか、定期的に下から湧いて出てくる弱い鹿の群達はどうにかなる、てか勝手に死ぬから気にしてない。


 そんで奴の攻撃を見続けてたら何となくわかってきた、植物みたいな生え方してるね。


 種子である核みたいなものを足踏みで地面に埋めて、それが横に広がるように水晶として発芽、何でかわかんないけどかぐや姫よろしく鹿が誕生……タケノコなのか?



 ふふ…何か神秘的だね、そうでもねえか。



 しかしどんどんキルスコアが入ってくるけど一向に何も育たない、まあねぶっちゃけ理由はわかるのよ。


 隠れて毒ガス炊いてるだけで経験値入ったら誰も苦労しないんだよ。



 よし、やめた。



 ジリ貧で毒ガス撒いてても効いてる気配が無いしな。



 いや、言い方を変えよう。


 こいつさっきから自分の手下の鹿を出す距離を変えながら毒ガスの出てくる距離を測っていやがる。


 突進仕掛けてくる時は遠くから、一撃当てたら即離脱。



 お前普通に人間レベルに頭いいな?嫌になってくるよ。



 でも頭の良さが災いしたか、合理的極めすぎて行動変わらなくなってきてんじゃねえか!


 タケノコ攻撃して、鹿産まれて、鹿死んでからのタックル、ここだぁ!



 至近距離で防がれた瞬間に合わせて解除、そのまま『毒牙LV.9』!


 がっ!角で防ぐとはお主やりよるな…でももう離れてやらねえぞこの野郎、この距離じゃタケノコ攻撃もできねえよなぁ!


 そらいくぞ!上!下!右!左!左!





 ……駄目だ全部防がれたわ、達人かよ。


 このまま行くしかねえから攻撃の手は止めないけどな、通る気がしない。


 サッカーやったことない奴がサッカー部からボール争いしてるような、遊ばれている感じはないけど一切手加減もされてない。


 それ故一切通らない。


 手下の鹿は来ない、来たところで残留ガスで死ぬだろうけどな。


 そして突進ができる間合いでもない、だけど私の攻撃は届かない…泥沼だなぁ。


 まあ問題は千日手では無いって事よね、私のスタミナが尽きたら終わる。



 けど……こいつのスタミナは?


 無尽ってことは無いだろう、ステータスには書いてあったし。


 

 なら、きっと毒牙を防ぎ続ける角捌きに遅れが見えるのも気のせいじゃないさ……!








 ……気のせいかも知れない。


 嘘だろおい、だんだんこっちの動きも鈍くなってきた。


 あれか?スタミナ急速低下のレベルアップの影響か?



 いやー、普通に見誤ったかね。



 

 まあ、思惑通りなんだけどさ。


 そっちはさっきお前が作った水晶の槍地帯だぜ?



 ふははは!ムカデの体の曲がり加減を甘くみたな四足歩行!


 お前にとっちゃ針のむしろだろうが私にとってはすり抜けられるのだよ!


 そんなわけで1ヒットだ!『毒牙LV.9』!



 ムカデの口の端から覗く二本の毒滴る巨大な牙が鹿の首筋に当たり、真っ赤な血飛沫を上げながら肉が裂ける。


 けたたましい叫び声が振動として伝わり暖かな飛沫がムカデを赤く染め上げる。


 グロい、とてもグロい。



 何だろう凄く今更だし散々手下の鹿を屠ったのに。



 あれか?自分の肉体で攻撃したから感触的な……いや自分の肉体じゃねえな。



 まあいいや、流石に傷口に直接入れる毒は効いたろ?



 効いたよな?これであんまり削れてないとか泣くぞ?


 のた打ち回る鹿を観察してたいが、そんな暇も無い。


 悪く思うなよ、怨みは無いんだ。



 嘘だめっちゃくちゃある、よって殺す。


 うぉらぁ!『毒牙LV.9』!『毒牙LV.9』!


 この野郎!いきなり攻撃かまして来やがってこの野郎!


 一般的な人間に急に命をかけた戦いとかさせてるんじゃねえよ!



 そして『アーマーブレイクLV.7』!


 強力な酸の弾を顔面に受け、体内から溶ける感覚に流石に逃走を計ろうとしているって感じだが絶対に逃がさない。


 長い体で巻き付いて更に攻撃を続けてやる。






うん、 ()()()()()()


 確実に効いている筈なのに、何だこの落ち着かなさは。



 攻撃を止められない、息の根を止めるまでこいつはきっと反撃のチャンスを伺っている。




 スタミナが枯渇し、HPまで削れ始めたところでようやく鹿が殆ど動かなくなった。



 

 私も瀕死だけどな、空腹で。


 まあ決着ではないんだけどさ、それでももう虫の息だろ?



 ……虫は私か。



 いやでもハリガネムシって虫か?


 何かムカデとかは虫じゃなくてカニとかに近いって聞いたことあるような気がするけど……わかんない。


 スマホ無いのがこんなに不便だとはな。


 あってもこの身体じゃ使えないしね……ギブミー人間。



 やっぱあの時の人間…ぐきょぱ!?









 真っ暗。


 待て、何が起こった!?


 何も見えない、それにHPも一桁ってとこか?




 いや……違う、あの光は。


 ()()()()()ムカデの物じゃなくてハリガネムシの……




 あー、わかった。


 鉄壁ムカデボディ切断されたわ。


 だって斬られた身体の隙間から見えてんだもん、千切れ飛んだムカデの頭が。



 それに何だあのデッカい水晶?


 昔見たデッカいおっさんがデッカい剣を両手でぶん回して戦うような大味なB級映画。


 そんな大剣の切っ先だけを更に拡大したみたいな。



 ああ、彼奴の攻撃は地雷か……じゃ、最初から狙われてたってわけだ。



 私が最後にあそこを踏んだら感知して発動、見事頭と胴体が真っ二つと。



 完敗だわ、こんな化け物がちゃんと考えて戦うとかどうすりゃいいのよって話だね。



 よし、じゃあすっぱり諦めるか……勝てなかったって事で。





 ……お、嫌か?そうだよな。




 お前がそう言うなら足掻いてやるよ。



 頭の落ちたムカデが勢い良く満身創痍の鹿に飛びかかる。



 ホラーだね。



 巻きつき、締め付け、身体が動く限り命を奪うことに尽力する。


 最初の内はこのまま口の中にでも入ってやろうかと思ったけど、そんな馬鹿な作戦が通用してくれる状況でも無さそうだしね。


 それにここまで来たらトドメまで自分でやるのが華ってものよ、他ならぬ宿主がそう言ってる。


 気がするだけだ……けどここまで一緒に戦ったならそんな気がするだけで動いてやるのもいいだろう?



 毒牙はもうない、酸も吐けない。


 石化しようものなら先にHPが尽きるだろうさ。


 それ故に絞め殺す。



 振り落とされようとも、そのまま走ってぶちかます。



 進め進めムカデボディ、お前は後ろに下がれないんだろう?



 なら行く先は前しかないよなぁ!


見せてやろうぜ!死線すら越えた、終わりが確定してる大爆走!!




 吃驚してる、人は死を目の前にすると何も出来なくなるかと思いきやテンションがおかしな方に向くこともあるんだな。



 そして何かなこの状況、ロボット物でまあまあ破壊されてコックピット開いてるようなそんな気分






 はぁ……空気が新鮮。



 やってる場合じゃねえよ。



 相手に攻撃の暇を与えない渾身の連続攻撃、一撃ごとに僅かだけど削れてはいる気がする。



 ギリギリなんだろう?物理耐性強くても毒や酸は効いてたもんな。



 まあこっちもボロボロで早いとこ逃げたいしとっくにムカデは限界なんだ、最後まで付き合えよ……友達のラストランだぜ。



 ……いや私はできるだけ隙みて逃げるけど。



[実績達成]


 お!?


[命尽きようともただ殲滅するために駆け抜け、その体を一条の矢と変える暴食の王へといつか捧げられた1つだけの『スキル』]



[一歩でも先へ、一歩でも遠く、一歩でも自分を成長させるためのマスターピース。]


[その物に与えられた名前は<グラトニカ>全てを喰らい駆け抜ける者。]


[ユニークスキル『更に先へ(プルス・ウルトラ)』獲得。]




  


 ……今来ていい情報量じゃないんだけど?


プルス・ウルトラ!!


関係ないけど私はAPEXでオクタン好きです


関係ないけど

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ