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悪さ教えるも教育の内

「やあやあ、その後容体はどう?」


「父さん……いえやはり薬の物があまり良くないのか……栄養状態は徐々に良くなっていますがあまり安心はできませんね」


 免疫とバイ菌の合戦が長引いてるわけか……ふーむ。


「ハリガネさん…そろそろ小麦粉もお米もそんなに余裕ない……魚はレプンカムイ様が持ってきてくれるけど…」


「まあ元々大した量積んでなかったもんね……私がガメてきた食料も肉とかばっかだし…果物だって日持ちもしないから保って今日凌ぐくらいなもんだ」


 米、小麦粉、この2つを象徴する栄養素…炭水化物、つまりはまあ糖分。


 今まさにあの子供の体内で戦っている免疫機能を支えている大事なエネルギー…をポンポン食べさせてたらあっという間に在庫が尽きかけなわけで。


 何なら宴の広場にあるものも脂っこい、塩っ辛いっでとても病人且つ最近まで餓死寸前だったやつに食わせるのは推奨されない……


『やけに詳しいのだな…』


 いや全部『拡張解析』に聞いたら教えてくれただけなんだけどさ。


「ふーむ、切迫していますな」


「……」


 責任感じてる娘っ子にはほっぺを横ににょいっとな……3年前ほど伸びねえな。


「ひゃめへ……ほい…」


「暗い顔してんじゃないよお嬢ちゃん、一度始めたからには堂々としてな」


「…わかってる、でも…」


「いいのいいの、これがもっと本格的に食糧難だったらそれくらい落ち込んでも良いかもしれないけど……神一人元魔王一人に寄生虫2人だ、何とでもなるはずだよ」


 いや不安しかねえなこのメンツ。


「…俺は入れてくれないわけかい?」


「むしろ君が堂々と私等の船で寝泊まりしていることにびっくりしてるけどね?ハヌさんどこの部屋にいたんだ…」


「食料庫だ、アンタが広場で妙なことを口走ったからここにいたほうが勘ぐられなくて済むんでね」


「普通に部屋余ってなかった?レプンカムイは水中で寝てるから余裕あるだろ」


「ああ…それかアンタと同室でも俺は構わないんだけどね?」


 おやハヌさんの細長い指がグラさんの太ももの辺りに……すっげえ殺意。


『図に乗るなよ猿めが……』


 落ち着き給えよ、どっちかというとハヌさんが粉かけてんの君の方だしね。


『む……そうだったな……困る…』


「悪いけどうちの船は家族もいるからそういうのは駄目だよ」


「はん……そっちの鎧がアンタのツレってわけかい?」


「いやそれは娘」


「え、娘…?娘……女……?」


「儂そんなわかりにくいですかねぇ!?」


 哀れなコノハさん……3年でややガタイ良くなったもんね…鎧も所々改修されて厳つくなってるし。


「いやそうじゃなくてな、私はこれからの食糧問題をどうするかって話をしているのさ」


「ハヌさん、小麦粉とか盗んでこれる?」


「アンタ堂々と俺に盗みをやらせる気かい…」


 実際何度かやってそうなキャラはしてるけどな。


「君の職業って『盗賊』(シーフ)かなんかだろう?」


「この格好が踊り子以外に見えるっての…?」


 ふむ……確かに露出度の高さに目が行きがちだけどよく見たらベリーダンサーっぽくはある。


「じゃあハヌさんは『踊り子』(ダンサー)なんだ?」


『破舞師』(ブレイクダンサー)だ、こう見えて腕に覚えはあるんだよ……まあそれでも…敵わない相手もいるが」


 ブレイクダンサー……頭でくるくる回ったりするんだろうか、いやそもそもノリで言った《踊り子》自体存在してるのか。


「前に私をぶっ飛ばしたあの風は?」


「あれはまた別……っていいだろ俺のことは」


「冗談はさて置き、食料調達する程度ならまあそのくらいのお金はある……が、あの国の通貨だもんなこれ」


 少しの重さを持つ革袋はノックス君の優しさが詰まっているね、換金できなきゃ棍棒がわりにでも使ってみよう。


「ああこれは……多分いける、ただ他の国の硬貨をあまり持ち込むのはいい顔されないかもな…」


 となると……


「よしこうしよう……ハヌさん、お金貸してください」


「そんな真っ直ぐな顔でアンタそんな……」


 やや上目遣いでキュルッとしとこう。


「こ、困るだろ…ああもう、ちゃんと返せよな…!」


 行けるもんだな。


「このクソ野郎…!」


「おくちが汚いぞブレ子」


「すみませんカス、まさかいくらこのボケでも、パートナーの外見に物を言わせて女性から金銭をせびり始めるとは思ってもいなかったものですから、つい口が滑りましたこのすっとこどっこい」


 滑るねー、ツルッツル滑っていくねー、暴言が立て板に水って感じ。


「違うんだよブレ子、ただその……グラさんの顔なら行けるかなって」


「行けてしまった俺も俺だからこの際良い……そもそも協力してんだから構いやしないよ」


「かたじけない……ハヌ殿、この御恩は必ずや報いさせていただきとうございます」


「お、おう……アンタ苦労してそうだな」


 そいつも時間帯とかによっちゃわりかしぶっ飛んでることあるけどね、今は多分コノハさん成分強めだから義に熱く正義を愛する似非侍。


「金を貸すのは構わないけど…正直そんなに無いから……あまり期待はするんじゃないよ」


「ついでに言うともっといい薬も買いたいんだけど…」


「期待すんなって言ってんだろ、そら……心当たりは無くはないけど」


 ほほう、つまりもっといい薬は存在はする(・・・・・)んだな?


「よし、盗むか」


「おいおい…娘の前でそういうこと言っていいのか?」


「お嬢ちゃんくらい善悪の分別のついてる子なら今更さ、それに…」



「人様から利を奪うのが寄生虫(ハリガネさん)だからね」

Q.ハヌさんってヒロイン枠?


A.こいつか惚れたとしても恐らくグラさんの見た目にやぞ。


Q.アブドゥルのコレクションって?


A.あえて言わない事にしとく。


Q.ハリガネさんは非人達のことどう思ってる?


A.完全なる無関心が正しいかもしれない

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