祭の秘事と人と蛇
薬漬けの気狂いとな。
この発言を少年誌で出したら後日PTAがアサルトライフル持って出版社に殴り込みに来そうな表現だけどハリガネさん今からそれになるの?
私ならなれそう。
「ああいや本当に薬漬けになれってわけじゃねえよ?その…ああ何から話すか」
「んー…あの広場って何なの?」
「あそこは…まあ狩り場とか餌場って感じ、アンタも危ないとこではあったんだから感謝してよ」
「狩り場ね……あの毒入りワインは?」
「あれはアイツ等の常套手段、踊って歌って獲物を誘い、あれを飲ませて正気を奪う」
やっぱ飲まなくて正解だったか……グラさんに効かなくてもハリガネさんがやられてたらヤバかったもんね。
しかし正気を奪う毒って言うと幻覚とか妄想とかってことかね、それってつまり……
「麻薬みたいなものか」
「ああ、そんな認識でいい」
「私以外の喧嘩祭り参加者は?もう薬漬けに?」
「まあ…というか殆ど俺の言うこと聞かずに飲んだからな彼奴等、酒ってそんなに大事か?」
「さあね、私は飲まない」
グラさん飲むっけ?
『大して強くはない、あのゲテモノやブレ子は好んでいたがな』
ブレ子だったらやばかったかもなここ…
「じゃあ喧嘩祭りってのは出来レースみたいなもんなのか」
「いや…そうでもない」
「正気を無くした連中相手でも危ないくらいレベル低いの?」
「逆だ……あれに参加する人間は皆、リミッターが外れてる」
何だその昔のアニメの噛ませ犬みたいなのは。
「つまりお薬決まってパッパラパーな奴等が殴り合うのか」
「……そんな優しい表現で済むようなもんじゃないよ、あー…なんて言ったらいいか…」
つまり整理すると……あの毒薬を飲むと狂戦士になって、それに混ざって街の人も狂戦士になって、殴り合いパーリナイ。
そんで私も危うくパーリナイ、そこをこの猿っ娘ことハヌさんが助けてくれた、と。
「何だこの頭のおかしい国は、私達入国から2時間経ってねえぞまだ」
「それに関してはアンタがただしいよ……私達?他にも仲間が?」
……あ。
『馬鹿者…』
1、見えない友達と来たことにする
2、入国直前で喧嘩別れしたことにする
3、どうせバレるし一部ぼかして正直に話す
さあどうするグラさん!?
『我か?ここで我に委ねるのか?』
『ま、まあそうだな…ええと…いやそもそも隠す必要があるのか?』
この体は仲間ので今会話してるのはとっても不思議な寄生虫(呪われまくり)でーす!って言ったら素面で頭おかしいやつだと思われて終わるだろうが。
『ぬぅ……3だ、舞踏王にたどり着くことや薬を手に入れるためには協力者は必要…であろう』
オッケー私も同じ考え。
「あー、えっとね……実は私この体の持ち主にお願いして肉体を借りてるんだよね?」
「な!!?」
「おま…お前も神着だったのか!?」
「うん、全然違うけど取り敢えず重要そうだから話は聞こうか」
また覚えないと行けないことが増えたぞ、メモを用意しないと。
「え、あ…違うのか……いやならいいんだ」
「露骨に残念そうね、まあ……話したくないと言うなら無理には聞かないけどさ」
思考盗聴しとく?
『汝……任せるが』
……やめとこっか、きっと後々になってからわかるさ。
それより私が気になるのはお薬の話だよ。
「そう言えばさっきの話聞いてたと思うけど、薬って無いの?あと非人って何さ」
「アンタ…本当に何も知らねえんだな」
「あいにくこの国は初めて来たからね……3歳くらいだし」
「ふざけた野郎だ…薬な、あることはあるだろうよ…」
「だが非人に与えるのは無理だ、ああそもそも非人ってのは……」
「言いづらそうだから当てようか、奴隷階級だ」
「いや違う……あれ等は言わばその…敗北者って言えばいいか」
「伝わらないか……あー…前回の祭で負けて持ち越せなかった連中……くっそこんな当たり前のことを説明するのが意外と難しいなんて…」
「気持ちはわかる、頭の中がハテナでいっぱいだけど取り敢えず一個一個聞こうか」
「…アンタ『輪廻転生』ってスキルに聞き覚えはあるか?」
ある?
『いや……無いな』
「無いね、リンカーネイション……まあ転生か、何となくどんなものかはわかる」
「……理解はできるのか、不思議だなアンタ……知っているか、理解すらできないことが大半だってのに」
宗教観の問題だろうか。
「産まれが特殊なんだ、言ったろ?」
「はっ、そうだな……『輪廻転生』はアンタのある程度理解している通り、元々は人生を終わる時命が廻るってスキルなんだが……」
「元々はとな?」
「ああ……いつの日かこの国に住んでる奴等が皆そういう風に理解しちまったもんだからぶっ壊れたんだ」
何かだんだん難しくなってきたな……
「えーっと、元々か普通に私の知ってるポピュラーな転生……ポピュラーな転生って何だ…?まあいいや」
「ぶっ壊れた後は…今はどうなってんの?」
「……一定周期でこの国そのものが転生するようになった」
「なるほど……もう一回噛み砕いて説明してくれないかな?」
びっくりするくらい理解できなかった。
「だよな……その……やり直しって言えばわかりやすいか?領土内の人も時間も巻き戻してやり直しになってんだ」
今日日SF作品でもあんまやらない様なシナリオだね、すげえな……何よりこれが映画なら駄作って言えたけど困ったことに今は現実だ。
「ここまでいいか?」
「んー…うん、取り敢えず進めて」
「そんで非人が敗北者ってのは…文字通りある程度の成績すら残せず喧嘩祭り内で息絶えた連中は…記憶も金も立場や名前すらも引き継げないでやり直しになる」
「そうなりゃ…引き継ぎができた奴等とは何もかんも違う、生まれながらの負け犬だ…なんせ、なんにも持っていないんだからな」
「そういう奴らはもう人じゃない、この国は…立場の無くなった奴は人として扱わなくていいって風になってるのさ」
「何だってそんな決まりが……今の王様?」
「……ああ、どうせ本当の王が来たら自分は殺されるって好き勝手やってんのさ…」
つまり、喧嘩祭り内でイカレポンチと殴り合って、死んだやつは次の転生で人の立場を失う……
「なら何で外から人なんて呼ぶの?そんなルールなら死ぬ要素のない喧嘩にしちゃえば…」
「……俺はその時をあまり知らないけど……何回か前の転生の時に誰も戦わない、誰も死なない祭があったらしい」
「……その時は?」
「さあな……何せ記憶がない、大方ブチ切れた王様が全部ぶっ殺して終わりにしたんだろ」
………とんでもねえ国だな、今からでも故郷に帰るか。
『ううむ……』
正直全速力で行けばあの子が死ぬまでに帰れるんじゃない?
『だが……汝よ』
ああ……恐らくこの国にかかってる『転生』というシステム的に不可能なんだろうね、ていうか……それができたらストーリーが成立しなくなる。
「……じゃあそろそろ改めて聞かせてもらおうかな」
「私達に何をさせたい?」
腹くくろっか、逃げてばっかじゃ傲慢王に勝てないからね。
Q.ハリガネムシはグラさんをどう思ってる?
A.相棒
Q.モンハン何使ってんの?
A.弓
Q.グラさんが貧乳な理由は?
A.そもそも哺乳類ですらねえからだ!!