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後顧の憂いは断っておけ

「お父さん、これは何事ですか」


「何事なんだろうねえ…」


「早く戻ってこい、なあ、もういいだろ、おい」


 やあ今は犬人間なハリガネさんだよ、そしてこの私の背中に張り付いているのが皆も大好きグラトニカさんだ。


「何か生えたスキルの影響でたまに精神にバグが発生してるみたいなんだよね」


「お父さんは平気なのですか?」


 平気なわけあるか、片っ端から排除してるだけでこちとら割かし限界じゃ。


 とはいえ、私の方はある程度マシだけどね。


 何を隠そうこれを見よ、パッシブスキル『精神汚染耐性LV.4』!


 ………いつの間に追加されたのこれ。


 いやまあ、ハリガネさんちょくちょく精神汚染みたいな霊界通信受信しちゃってけどそれでか?


「まあ私はある程度耐性があるから耐えられてるけど……この子よく考えたら絶望的に精神攻撃に弱そうだもんね」


 良く言えば純心、悪く言えば単純な馬鹿。


「何事かは把握していませんが……そうですね」





【ブレ子回想】


「旅立ちまでには気合で片付けますよグラトニカ殿、覚悟はいいですか?」


「………あいつに会いたい」


「グラトニカ殿…?」


「……何故だ…」


「何故と言われましても……お二人の仲が良いのは結構なことなのですが…」


「……何故我はあいつと一緒にいないのだ…」


「そっち!?」


【回想終わり】




「的な?」


「いや的な?って言われてもね?」


 ハリガネさんスケールで言うならグラさんが感情的にならず淡々と物を言っている時は緑色(セーフライン)に見えて真っ赤(超アウト)だと思うんだよね。


「概ねそのとおりです、取り敢えず戻られては?」


「……グラさん、戻るから口開けて」


「早くしろ、ほら、さっさとしろ」


 っと…ハリガネダイブー!懐かしいなこれ。


「オッケー戻った」


「やっと体帰ってきたよ…!もう嫌だからね…!」


 すまんて。


「グラトニカ殿の様子はどうですか?」


「うーん……」


「………描写できない…系?」


「いや、系?と言われましても」


『やはり離れること自体が間違っていたのだ、我と貴様は元より1つ、それで良いではないか』


 ああ、これでもかなりマイルドに描写してる方だ。


「そんなわけで物理的に離れるのが難しくなったことがわかりました」


「悪化してるじゃないですか…!」


「参ったね!!これ旅立ち前にわかるものじゃないよね!!」


「……ところでお嬢ちゃんは?」


「グラトニカ殿が残してきた仕事を気合のみで相殺し ております」


「よしわかった、今すぐ戻ろう」


 お嬢ちゃんがこれ以上目から光を失ったら大変だ。


 グラトニカ!正気に戻りやがれ!


『……ああ、くそ…何だったのださっきまでのは』


 おかえり正気、言って見るもんだね。


『ああ…すまんな、スキルの影響とはいえ取り乱した』


『……ところで貴様、我の服装とかに好みは無いか?』


 さよなら正気、こんにちは狂気。


「駄目そう、取り敢えず辺境伯のとこには行くけど、こいつ今日は使い物にならないかもよ」


「……まあ記憶も共有しているならある程度お父さんにできることもあるでしょう」


「では」


 ?


 何だいその手は。


「?……抱っこですが」


「抱っこですが、ではないんだけどさ決して」


 普通は親といえど成人した娘を抱っこすることは無いはずなんだよ。


「ああ、地味にここからあの館は遠いので普段グラトニカ殿に抱えて移動してもらっているのです」


「グラトニカタクシー…まあいいや」


 ほっと……重いなこいつ。


「ちょっと!?娘に失礼では!?」


「いやその、思ってたよりってだけだよ?はは」


「お父さんがフォローに入ると信憑性が増すのですが!?儂そんなに重いですか!?」


 はは、ははは。


 ……うん。


「甲冑です!鎧が重いに決まってます!」


「いいから行くよほら、舌噛むから黙ってな」


「いえここは全て明らかにしてからですね!!」


 うるさいので出発しよう。





「めっちゃ速く着いたね」


「……普段の…倍くらいスピード出ていたのですが……」


 え、嘘マジで?言ってくれればいいのに。


「…………」


 目は見えないけど辛辣な訴えを感じるね。


「ただいまー」


「お帰りなさいま……えーと」


「ハリガネさんです、ご機嫌よう」


 この人は確か従者のキーラさん。


 宴の時は留守番させられていた哀れな男。


「ああ…英雄ハリガネサン、お会いできて光栄です」


「うん、以前も会ってるけどね」


「………ミリア殿のふりを…」


「オッケー忘れていいや、初めましてキーラさん、私ハリガネサン、ヨロシク」


 どうしよう、多分この土地に未来永劫幼女ロールプレイ大好き英雄として祀られる私。


「先程グラトニカ殿の様子がおかしかったのは…何かあったのですか?」


「ホームシックさ、知らんけど」


「……?」


「あー……すまん、先程は取り乱した…我はもう大丈夫だ」


 うお…復活かい?


「…こいつと一緒なら何も心配は無いだろうさ」


 怪しいラインだぁ…


「まあいいや、そんなわけでグラさんはちょっと野暮用…というか忘れ物取りに帰っただけだから大丈夫だよ」


「それは何より「キーラー!!お茶いれてー!」


「ただいまお持ちいたしますー!」


「……ノックス君、もとい辺境伯…元気そうね」


「いえ、あれはお茶の過剰摂取と徹夜によってハイになっているだけでございます」


 カフェイン!!中毒!!


「……寝かしてあげてください……」


 何でこの家には職員が増えてないんだ……外の警備は増えたのに……


 よし、グラさん。


 ……君が仕事頑張ってる姿、見せてほしいな?


「小僧、先程投げ出した我の業務に加えて辺境伯の物もいくつか回せ、今日は我が3倍働く」


 私の相棒はちょろいもんだぜ。


 まあグラさんなら過労死はせんやろ、曲がりなりにも元ユニークモンスターだし。


「ええと……あまり無茶はなさらぬようお願いいたします」


 雇い主の無茶も止めてやれよ。


「ふん、我を何と心得るか……立ち止まらず、引かぬからこそのグラトニカなのだ」


 多分それブラック業務を前にして言うセリフでは無いと思うんだハリガネさんは。



「あちょっと待って、その前に辺境伯に話が」


「ああ、ではお茶を2つお持ちしますので部屋までどうぞ」


 警備ザルよなー…私等だからってのはありそうだけど。




「へーい辺境伯、宴ぶりです」


 机に収まりきらない書類……羊皮紙なのかなあれ、が革紐に閉じられたものが散乱してやがる。


「おお!幼子の英雄!」


「次その呼び方したら屋敷の調度品粉砕して回りますからね?」


「はっはっは、調度品なんてものが見つかるならば……」


「………うん、それで話なんだけど」


「ええ…旅立ちのことですか?」


 あら、流石に伝わってんのか。


「娘達本当にいなくなっても大丈夫かい?」


「駄目に決まってるでしょう、この机見てくださいよ、死にますよ」


「清々しいくらい旅立つ子の後ろ髪引き抜く子だな君は…」


「……でも、ミリアの教育で徐々に使える人間も出てきましたし、何とかしますよ」


「おや、止めるかとばっかり」


「……止めて止まるなら号泣から足を舐めるまでやりますが…どうですか…?」


 床ペロと号泣を大の大人が対価に出し始めたらいよいよだよ。


「……みっともなく這いずる案はありましたがね、でも……少し楽しみなんです」


「ミリアの夢…一流の冒険者になって沢山土産話を聞かせてくれるのを」


「……私がいない間、娘達が世話になったね」


「こちらこそ……そもそも貴方達は恩人ですからね」


「海の向こうでも応援して待っていますよ、英雄ハリガネサン」


「……つきましては…冒険者として手に入れた高価な物等を王都エンシスハイムに流して頂けるとこの街も潤うのですが…」


「もう少しいい話で居られなかったかな?」


 3年するとあの低血圧そうな青年こんななっちゃうんだな……いやハイになってるだけの可能性もあるけど。


 まあ……取り敢えず残留の問題は無さそうだね。




「じゃあ、辺境伯」


「はい!」


「……死ぬなよ…?」


「………はい」


 あ、目が死んだ。

質問箱とかで出てる設定とか情報ってどっかに置いといた方がいいのかな?


今のところ言われたらやるくらいの感覚だから必要なら遠慮なく言ってください、まああとはTwitter見ていただければ幸いです!!

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― 新着の感想 ―
[一言] うーむハリガネシックムカデ氏は面白くていいんですが...これ次ハリガネさんが1回休みしたらまずそうな雰囲気ですねぇ。 これはやったぜとは言えない() でも読んでる分には面白いですね。
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