表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/164

旅立ちの前の一呼吸

「え……私一緒に行くよ?」


「いや君ここで結構いい仕事してるんだろう?無理についてこなくても…」


「……何言ってるのこのムシケラは?」


 たまにお嬢ちゃんがびっくりするくらい辛辣なの怖すぎて泣きそうになるんだけど。


「私、冒険者になりたいの」


「事務員になりたいわけじゃない」


「…………忘れてたでしょ?」


「……忘れてたね」


「はーいドスッとします」


 オギャア!?


「いっっっってえなおい!」


 大根なんちゃらで刺されると普段ダメージなんてろくに受けない身体な分余計痛え!!


「まさか本当に忘れた上でグラトニカ殿を泣かせるとは……お父さん、軽蔑しますよ」


『泣いとらんが?』


「お前が今刺した身体もグラトニカ殿って知ってた?」


『なあ、泣いとらんぞ?』


「まあ……確かにそれはそうだけどさ」


「……逆に君とブレ子、グラさんを一度に失ってこの街大丈夫?」


「「ノックス(殿)死にます(死ぬかな)」」


「ノックス……辺境伯か!労ってやれよ彼奴を!?」


 この3年間頑張ったって聞いたぞ!?


「元々そういう契約で働いていましたからね、強いて言うなら……引き継ぎがあるのでしばらく旅立ちは待っていただけると」


「引き継がず行くとキーラも死ぬ」


 従者さんね、まあそれもそうか……


「うん、そこはもう君らの終わり次第でいいよ」


「ところで…次はどちらに行く気なんですか?」


「あんまり決めちゃいないけど……そうだね、ここが北海道だとしたら近くは……ロシアか中韓あたりか」


「……?ホッカイドウ?」


「ああ、多分この世界私が前いたところと所々一致してるみたいだからね、北海道はその時の名前さ」


「……グラさん、隣の国ってどんなかわかる?」


『隣か…香辛料や食を大切にしているが貧富の差が激しく餓死者が多い国…とされていた筈だ』


 まあ予想どおり中国っぽいな、北海道でアイヌ文化なら……向こうはキョンシーとか仙人とかカンフーマスターとかか?


「ていうかグラさんが内情とかに詳しいの意外だね、知るか!って言われるかと思ったよ」


「グラトニカ殿も共に働いていましたからね、それはそれはもう我々一同日毎に目から生気が失せておりました」


「どうしよう、パパ軽い気持ちで王都まで文句言いに行きたくなってきちゃった」


「はは……散々やって軽くなった上でこれです……」


「国を立て直すって仕事の一部でもとんでもない苦労があるんだよ……」


『人の世は無情が常と…思い知らされた…』


「ハリガネさんがいない間にそんなことが……いても役には立たないけども」


「……てかグラさん仕事あるのに最近の挨拶回りで身体貸してくれてて平気なの?」


『皺寄せが残りの者に…』


「ごめん!!!マジでごめん!!!」


 娘達のこんなハイライトの消えた顔見たくなかった…!!


「じゃあ明日から引き継ぎに身体返す……てかしばらく別の身体借りて生活することにするよ」


 何かいたかな適当な生き物が。


『は?他の者に寄生するつもりか?』


 駄目かね。


『駄目ではないが嫌ではある、覚えておけ』


 はっきり言ってくれるからグラさん好きだわ、終わったらまた戻るからね。


「でも誰の身体借りるつもり?」


「喋れてこの街の住人で…尚且自由に動けるもの…」


 うーん……………


 ……………


 ……





「私!?私なの!?」


「ごめんねマメシバ、君が一番下っ端だからいなくても問題ないって三兄弟と族長とその他大勢が」


「ウォォォォン!!?」


 凄い、絵に書いたような慟哭だ。


「はあ……嫌だぁ…あんまうねうねしないでよね…」


「ちゃんと拒絶するじゃん、巨大ミミズ握りしめてた頃のお前はどうしたのよ」


「大人になると触れないんだよぉ…」


 あ、ちょっとわかるその気持ち。


「というわけで寄生させてくれ」


「というわけじゃないよぉぉぉ…!」


「頼む、マメシバ様を男の中の男と見込んでの申し出だから」


「雌だよ!!?」


 そうだったの!?


「すまん、正直あんまり見分けつかんお前等」


「オスメス関係なく大人はマッチョだし毛皮のせいで体型がな」


「失礼だなぁ!?」


「……まあいいや身体貸して」


「わー!?心の準備!!?」


『討伐したくなる見栄えだの…』


 仮にも嫁入り前の女の子の口に寄生虫ねじ込もうとしてるからね、ホラー映画の冒頭って感じ。


 っと……グラさんの方の繋がりが外れたか…『寄生LV.10』。


 あ、そうそう寄生スキルカンストしたわ、実質あんま変わってないけど。


[生体侵蝕率100%]


[生体の権限を全て使用可能です]


 ん、問題ないね。


『うわーん……乗っ取られちゃったよ…』


 そういうなって、別にこれで戦うつもりも無いんだしさ。


『当たり前だよ…私の身体で何する気だよ……』


 いや、正直あんまりやること無いから旅立ちの準備程度なものさ。


「我は辺境伯のもとへ行く、貴様は街の外には出るなよ」


「はいよー」


「………後でな」


「おう」


『何見せられてるの私は…』


 気にしたら負けさ。


「さて……ここらでちょっとじゃあ進化したハリガネサンの力を見ようかね」


 そう、何やかんや色々あってアナウンスさんからの連絡見てなかったんだけど割と成長したっぽいのよね。


[レベルキャップが90まで引き上げられました]


 まずこれ、デカいよね普通に。


 ただ正直これからグラさんに寄生することを考えると大した恩恵が無いのが辛い。


 次は、スキル。


『寄生LV.10《standby》』そう、さっきも言ったけどついにカンストした。


 あと他にも耐性やらなんやらがチラホラと…それからこれだね、パッシブスキル『死がふたりを分かつまで』


 うん、何だこれ。


 テキスト出して。


[かつて分かたれた運命の相手にいつか捧げた愛の歌]


[彼の者との離れた時間だけ深まり続ける心の認知(カタチ)]


[想いは深まり欲望は加速するだろう]


[死がふたりを分かつまで、私はただ君を想う]


 うん、わからん、わからんだろう。


 これね、デバフ。


『デバフ?』


 呪いみたいなもん。


『何で!!?』


 私が聞きてえよ。


 効果としては何かしらの条件を満たしている間思考に対してノイズがかかり続けるらしい。


 ……今のところその兆候は無いから放置でいいかな。


『存在がノイズみたいなものだもんね……』


 お?身体の主導権が我が手にあることをお忘れか?


 まあいいや、次だ。


 ユニーク。


[通知は存在しません]


 はっはっは、こやつめ。


 ギフト。


[通知は存在しません]


 ……ね?


 こんなもんですよ、ハリガネサンがどんなに頑張ってもね、世間は認めちゃあくれやせんよ。


 これの何がムカつくってグラさんのステータスにしっかりと『砕け散れ、我が宿業(グラトニカ)』が追加されてた事よ。


 アクティブの『加速』とユニークの『更に先へ』、パッシブの『クライマックスビート』『百足走り』『我が覇道ここにあり』の複合スキルだってよ。


 かっこいいよなぁ!!?ズルいよなぁ!!?


 もう彼奴(グラさん)ばっか!彼奴ばっかかっこいいのよ!!


 でもそんなとこが良いんだよな……一生守ってもらえそうな逞しさ……はあ…早く会いたい……





『……あっ…』


 うん、私も察した……『死がふたりを分かつまで』だろうね。


 ……危険だこれ、特にグラさんが。

プロット作成当初より予定されてたスキル『死がふたりを分かつまで』


これね、鹿ちゃんがヒロインだった筈の世界であの子滅茶苦茶ヤンデレの予定だったから作ったんだけど、まあ世界レベルの認知として付き合いたてのカップルなんていつでも会いたくなるものやろって感じで組込まれてしまったあれ。


システム上の処理としては一緒にいるときに脳内麻薬みたいなものが常に分泌され続けてたのが急激に止まったせいで離脱症状として依存が現れております、この離脱症状に慣れた時倦怠期が始まる。


Q.グラトニカの人形態の見た目は?


A.中性的な顔立ちで背丈が高く黒髪で肌はやや褐色、笑うと八重歯が見えるが目元はツリ気味でちょいキツめの美人だが角度や見方によって男性にも見える。


体に凹凸は無い(重要)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鹿寄生ifちょっと読みたいわ 神に寄生は熱い
[一言] 死がふたりをわかつまで...やったぜ? 裏話みたいの個人的には好きです(ネタバレにならない範囲で)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ