その思い乗せて
『迂闊に飛び込むでないぞ、奴固有の御業…ネタがまだ割れとらん』
らしくないね、君が突貫しないなんて。
まあでも……金ピカになったのと仲間呼んだの、あれ正直別のものって考えたほうが良いかも知れんね。
『……というと?』
データが少なすぎるし確信はないんだけど……ユニークスキルってもっとこう、雑味が少ない気がするんだハリガネさんは。
例えば君は長く走り続けて敵を蹂躙するのに特化してるわけだけど。
あれはもっと別の何かな気がしてる。
「キラウシカムイ、君のそのスキルはどういうものか教えてくれたりしない?」
『聞くのか!?』
ダメ元ダメ元。
「………戦っている相手に…随分とお喋りですね」
いや全くその通りです。
「君と同じですよ、本質はね」
さっぱりわからんね、まあ聞いたところで大した意味もないんだけどさ。
『更に先へ』スタンバイ……あそこまでなら3歩ってとこかね。
『結局突っ込む気か、それはあまりにも…』
んなわけないない、見てな。
一歩、二歩、三……ここ!
「『魔王の吐瀉LV.10』!!」
前も便利だったよねこの溶解液…!
知らぬ間にえらいこと強化されてるみたいだけどこれも結構気に入って使ってた?
『………』
あらノーコメント。
それはともかく三歩分の加速に加えてこの至近距離ならいい威力出ちゃうんじゃなーい?
「……ふん」
うん、効いてなさすぎて笑けてくる。
『駄目ではないかぁ!?』
駄目だったねえ!!
「『壊滅の角LV.10』!」
させるか!!
「『強制停止命令権LV.10《Extend4》』『無双椀・百LV.10』!」
「ちょっと角失礼!」
たいそう硬そうなその角、ハンドルにさせてもらうよ!
「んー……どっこいしょぉぉ!!」
変速背負投!!
いや、飛び込み?…まあいいか。
『たわけ!まだだ!』
「『魔槍錬成LV.10』」
「あっ……がぁぁ…!!?」
ごめん油断した!!いってえなちくしょう!
「お前その棘…自分からもはやせんのかよ……ってえ…」
喋れてるあたり肺は無事かも知れんけど……グラさんのプリティな腹に穴が空いちまったじゃねえか、一旦下がろ……
『貴様本体は無事なのか!?』
……全体質量残り4割弱…あればいい方。
問題ないさ、ハリガネさんは追い詰められてからが強い上に厭らしいんだからね。
『……よ』
何て?
『…逃げよ!もうよい!』
良かねえでしょ……それにまだグラさんボディは耐えれてるし、まだやれる。
『貴様がやられては意味が無かろう!』
『貴様が…貴様が死ぬくらいならこの戦いなど…』
日和ってんじゃねえグラトニカ!!
『っ…!!』
一発ラッキーパンチ返されたから何だってんだ、前はもっと酷かった筈だろ。
『だが貴様は…』
私が死んじまってこいつが生き残ったら……次に死ぬのは私の娘達だよ。
『なら何故此奴を殺そうとせんのだ!』
……わかるだろ?
『当たり前だ……以前より繋がりは深いのだ…嫌でも頭に流れ込むわ』
『貴様がケリをつけられるのに付けていないことなど裕にわかる』
『だが最初は助けるつもりだっただろうが……今となってはそれも叶わん事はわかっているはずだぞ』
そうね、私はこいつを殺す気がない。
厳密に言うなら最初から殺すつもりは無かったさ。
いや具体的に言うならこいつにはまだ生きていてもらわないと困る、そんな気がしてるのよね。
『……考えなしの戯言では…無いようだな』
流石にそこはね…
「……終わりに…しますか?」
「ちょっと待って……まだやれっから」
いや膝が笑いやがるね全く、困った困った。
もう少し動かさないといけないってのにさ。
よぉし、やるぞグラさん!当たって砕く作戦だ!
『貴様……』
……信じて。
『……勝手にしろ、終わったら…せいぜい我をなだめるのに尽力するのだな』
イエス、ボス。
「『加速LV.10』『加速LV.10』『加速LV.10』……」
やあテレビの前の皆、必殺技の前に正直明確に隠してたことを話そう。
こいつは強い、化け物どころか本当に神の領域って言うのかな?
そもそも普通の生き物なら爆散して血煙になる威力のパンチも、地面が溶解して大穴になっちまうような酸の弾も耐えちまうからね。
硬いとか頑丈とかそんなちゃちなものじゃない、まあ何かはわからないんだけどね。
ただ、正直最初からやろうと思えば瞬殺ではあったんだよ。
………本当だよ?
ただ私が何故それをしなかったのか。
答えは簡単、私が主人公の話ならそれは良いかも知れないけど。
きっと今回は私じゃない。
さて、そろそろ助走バッチリだね。
「………そんなことが……できたのですね」
「うん、実はね」
「行くよキラウシカムイ、本気の疾さだ」
一歩ごとに溢れてくる活力、背骨を突き抜けるような爽快感の渦、耳を劈く空気の悲鳴。
方向よーし、速度よーし、覚悟ばっちり!
ラブハート氏達みたいに私達も勝手にこれに名前付けちゃおっか?
『言ってる場合か?』
いいじゃんせっかくだし。
んー、よし。
君に捧げるよ、気に入ったら今後使ってくれや。
「『砕け散れ、我が宿業』」
直撃、轟音。
近くで戦ってたわんわん達大丈夫かなってくらいの威力の全身全霊を込めた体当たり。
正直当たった瞬間何も見えなくなったからどうなったかわかんないけど手応えはありって感じ?
「………終わりに………しま…すか…?」
わお……耐えようとして踏ん張ったのか後ろ足が削れて無くなってはいるけど……原形保つかねあの隕石みたいなぶちかましで。
いやまあ死なないことは承知だけどさ。
「まだ……」
「やらないよ、少なくともグラトニカは」
「……ここまで来て諦めるのですか…?まだやれるでしょう」
「いいんだキラウシ……それより…周りを見て」
あー、しんど……本体も半分になっちゃったのに加えて治りきる前にあんな体当たりかましたもんだからパパはボロボロだよ。
「相変わらず…いざとなったら発揮されるその覚悟は何なのですか…」
「ハリガネさん、ずっとそんな感じでいてよ」
まあ手厳しいこと言いますわね。
「……これは……」
「キラウシ、これうちの娘達……あと近くの街の皆様方、スラムの人達、ちょっとずつ亜人と…家畜の動物やらなんやら」
そう、ぶっ飛ばした方向には避難者達がいたわけだね。
多分どっかに辺境伯もいる。
「こんなことをしても……」
「神様ー!」
「神様!」
「……神様!!」
おっとあれは…スラムのおっさん達じゃん、元気そうで良かった。
「俺達、逃げようと思ったんです、飯も満足に食えなくて毎日餓死するガキが出てる」
「毎日毎日神様の助けを待って、どうにもならねえからって土地を捨てようとしていやした!」
「……でも、それじゃあ駄目だ」
「元々が悪かったんだ、カムイの力無しに生きていけないなら、俺達はあんたらに助けられてるだけじゃねえですか!」
「全部…全部聞きました、あの子から」
「……えと…」
「行っておいでお嬢ちゃん、大丈夫、見ててあげるから」
「…………私は貴方なんて知らなかった」
「神様の知識も記憶も薄くなった集落で……神様って言われてたでっかいミミズに食べられそうだった」
「お父さんは……私を守ろうとして死んだ…」
「でもね、外の世界に出てきて…色んな話も聞いたし、沢山あなたの事も聞いた」
「その……ありがとうございましたって…言いたくて」
「ありがとうございますカムイ!」
「ありがとうございます!神様!」
「もう大丈夫です!」
「人間は、我々は道を見つけることができます…いやしなきゃいけないんです!!」
街の人や街以外のとこから来たっぽい方々も口々に感謝を述べる、泣いてる人もいるね……これが正解だと良いんだけどなー。
「キラウシ、もう守らなくていいよ」
「君達を穢した奴らも、人間も…そもそも本気で怒っちゃいなかったんだろう?」
「……いやまあ取り憑かれちゃいるんだろうけど、君を見てたらわかる…それレベル足りてなくて大して権能奪えて無いでしょ」
「…………いつから知っていました…?」
「何となくそうかなーってくらいの認識だったけど…まあ最初の私暴走してます!って感じで戦った時?」
「はぁ……そうですか」
「…………」
「人の…時代ですか……」
「まあ、不安にもなるよね…私は……人間たちは結局お眼鏡にかなったのかい?」
「……ええ…もう、いいでしょう……ホロケウも楽しそうだ…時期に彼も満足して還る…」
「ああ……随分と……生きてしまいましたね……」
「ちょいちょい待てや、勝手に消えんな」
「………君との戦いで……もう長くない……見事な一撃でした」
いや待て待て困る、それは困る。
「……お口開けて?」
「………?」
グラさん、ごめんね。
また会おう。
グラさんの体をギリギリまで上手く使ってハリガネボディ…射出!
お邪魔しますキラウシカムイ!!
「んもぐっ!?」
同じ宿主に寄生虫二人……爆発四散すんだっけ?
……あー、怖…やりたくねえ…
「何をしている!早く戻ってこんか!」
何かグラさんの声聞こえんな、まあいいや……起きたら謝ろ。
「……君…何を」
君の助けがなきゃいけないほど人間たちは弱くないさ……それでも、神は必要だろ。
頼みたいこともあるしね。
『削ぎ落とす命』!
[アクティブスキル、『削ぎ落とす命』の使用を確認]
[リジェネレイト機能緊急停止]
[切削量を決めてください]
全部だ、持ってけ。
[承認]
[……汝、己が身を削った先に何を望む]
こいつから寄生虫を消してやってくれ……それからできれば脚も治してあげて……奇跡ってものがあるならおまけも期待しちゃうよ。
[無欲の極み]
[……だが気に入った]
[二度と会うことは無いが]
[汝の道に幸あらん事を]
あー……生き返れますよーに。
神頼みしながら神助けるとか新感かぺっ……………
……………
[………ワオ、マジか]
[君、ここまでやるんだね……流石に負けたよ]
[あーあ……俺ももっと上手いことやれてればなー…]
[どうやったらそんな宿主と仲良くなれんのさ……]
[いやそもそもこいつ抵抗強すぎだよ、無理ゲーじゃねえか]
[はあ……まあいいや……頑張れよ、兄弟]
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ゴールデンウィーク中って!ゴールデンウィーク中にって言ったじゃないですか!!
はい、ごめんなさい日付を間違っておりました。




