家族に紹介しづらい関係
何となくだけど地味に一番難易度が高い筈のムカデのリクルートは難なくこなせた気がしてたよね。
そして帰ったら娘達が暖かく迎えて労ってくれると思ってたよね。
現実は板間に正座させられてるけどね。
「どうして戦力を確保しにいって新しい女性の肉体を奪ってきたのですかお父さん」
「最低だよ、真面目に住人避難とかさせてたのに私達」
「違うんだよ君等」
何なら女性ですら無いし。
「それにラブハート殿はどうしたのですか?逢引に邪魔だから消したのですか?」
「お前の中で私はいったいどんだけの外道なの!?」
「儂はそう簡単に新しいお母さんだなんて認めませんからね!」
「私も……」
「仮に新しいお母さんだとして、そのうち認める方向なら性別不詳の昆虫王者が君等の母親なわけだが」
『そんな急に娘に紹介なぞ…心の準備が…』
戻ってこいポンコツ恋愛脳。
『はっ…貴様誰がポンコツだ!』
恋愛脳を否定しろよ、何ならお前が母親を否定してくれると思っていたよ。
「まあ冗談はここまでに、状況から察するにその身体が暴食王グラトニカの物なのですか?」
「お、飲み込みが早くて助かるけど信じるんだ?」
「いえ、決して落ち着いてはいませんし混乱を極めている最中ではありますがこんなタイミングでそんな悪趣味な嘘はつかないだろうなと」
あら本当だ、膝が大爆笑していらっしゃる。
流石にね、私も最後の希望をそんな茶化し方をしないとも。
……いやするか?
「ちなみにラブハート氏は新しく仲間にした仲間達と一緒に隠れてもらってるよ」
「ちょっと町中に連れてくるには目立つし何なら悪評が酷すぎて最悪お縄だから今は決戦の舞台と言う名の姑息砦建築中さ」
「成程……ちなみに何故暴食王はそんな姿に?」
「愛故に」
「違う!!」
落ち着けよ、急に変わったら物凄く情緒不安定な人みたいだろう。
「貴様が適当なことをほざくからだ!」
「おはおはおは…おは…つにお目に…かか」
落ち着いて我が子よ、バグったラジオみたいだから。
「……お初にお目にかかりやす…儂はそちらの虫の娘でござりやす、名前は……ブレ子と呼ばれております、不本意ですが」
何か変な盗賊みたいになってるけどまあいいや。
「…娘は然程喧しくも無いのだな、我はグラトニカ…貴様が知っている暴食王と認識して問題無い」
何だ私は喧しいみたいな言い方をするじゃないか。
「全くもって否定のしようがない事実だが?」
「……うるさいし変な人だしうるさいけど…悪い人じゃないから、ハリガネさんをお願いします」
うるさいで変な人を挟むんじゃないよお嬢ちゃん。
「貴様は……此奴の子ではないのか?」
話すと面倒くさいんだけど拾った子だから血縁ではないね。
でも私の子みたいなものだし、違うとしても同じくらいには思っているさ。
「ほう……」
「今はミリアと名乗っています…」
「まあその実の子への扱いがぼちぼち雑なものなんですがね」
細けえこたぁいいんだよ。
「ブレ子……奇特な名前だな」
「ええもう本当に…ブレインイーターという種族だからブレ子という安直且つセンスの欠片も見当たらないような名前でございます」
「貴様…ちゃんとした名前を着けてやれ、子供なのだろう」
えー、何だかんだ気に入ってるだろうに。
「そんなわけあると…思いますか?」
……ごめんよ。
「せめて使える名前をつけてください…この身体から出たらコノハ殿の名前も使えないのですから」
考えとくことにしよう。
「さて皆の衆、首尾はどうだい?」
「住民の避難は不十分ですが辺境伯が協力的なのですぐに完了するかと、それから…残念ながら戦力は期待できそうにありません」
「仕方ないね、そもそも農民やガラス職人が合間合間で掛け持ちしてるような兵士にそこまでの戦闘力を求めてないさ」
これがマンパワー大事な人類相手の防衛戦とかならその程度でも大切な物だけど……今回は重火器もない人類が立ち向かったところで時間稼ぎにもならんだろうよ。
てなわけで頼みますよ先生。
『ふん…現金なものだ、ごまをするなら呼び方をもっと考えるのだな』
心から信頼してるよ、マイフレンド…君の力が必要だ。
『……………うん』
防御力0かよ。
「んん……ミリア殿の前では控えてください」
「私そんなに子供じゃないけど…?」
「こらこら邪推はいけないよ、私達に恋愛要素を含めたら誰も得をしないラブコメの始まりだからね」
『マイフレンド………マイフレンド……』
帰ってきて、そこで反芻してないで帰ってきてムカデ様。
『マイフレ…いや貴様あの姿を消すトカゲもそう呼んで無かったか?』
記憶力良いね、その通りさ。
『ほう…貴様は我をあれと同格だと』
気に入らないなら心の友と書いてしんゆうと読んでやるが?
『……それで良いか』
体の関係(曲解)のある友達って卑猥だね。
『何を言っておる貴様!?』
「あの……何があったらユニーク…もとい魔王にそこまで好かれるのですか」
「やっぱりハリガネさんの格好良さはわかる人にはわかっちゃうものなんだよねー」
「……まあ」
「たまにね…」
おや、素直に納得してもらえたのは嬉しいけど三人中二人ほど節足動物なのシンプルに嫌だな。
本当に私がモテるなら当初憧れてたハーレム路線行けるか…?まず男女どっちを集めるべきなのかはわからないけど。
「挨拶も済んだことだし…取り敢えず私達はラブハート氏のとこで備えていようかね」
「儂等はどうすれば?」
「火力皆無の君と回避すらままならないお嬢ちゃんを連れて行くことは無いから避難して?」
「……役に立ちませんか?」
「立たん、役割が違うからね……辺境伯や街の連中守ってあげてよ」
「……承知」
「心配するな、我の名において此奴の事は守ってやる」
急に操作ぶん取るのやめて…びっくりするから…
「いえ、危なくなったらグラトニカ殿だけ逃げてください、その者は死しても復活します」
おっと娘からの心配が皆無、いやまあ実際そうだけど。
「クハ…逃げなどせんよ……立ち止まらない限り我は無敵なのでな」
「噂に名高い武勇、期待しております」
「ああ、座して待つと良い…どこまで避難しようとも奴めの悲鳴を轟かせてくれるわ」
かっこいいなぁ此奴等……ムカつくな。
ブレ子とかグラさんの名前聞いただけで泣きそうなくらいビビってたし、グラさんは金がかかってなさすぎる恋愛ゲームばりのチョロさなのに。
「黙りなさい」
「黙ってろ」
わあ…相性良さそうで何より。
最近グラさんの人気にびっくりしてます