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異常事態

 唖然とする、そんな表現がここまで合う事もそうは無いかもしれない。

 目の前には昔馴染みの様相は保っているのに明らかに凶悪な戦闘力を有してる存在。

 もし私が人かそこらの身体を得てたら自然と笑みも溢れるかも知れないね、勿論笑うしか無いだけだけど。


 まずデカイ、知ってたとはいえこんなもん街中に出たらビーム兵器が必要だね。

 そんで見る気にもなれないだろうレベル差を肌で感じる。


 これ話通じないかもなー。


 まあいいやラブハート氏、取り敢えず全員落ち着かせて。


「ええ……でも」


 それからその場で膝をついて


「ねえ…それは…」


 いいからやれ、死にたいのか?


「……わかった…わ」


 そして全身全霊の土下座をして。


「妙に落ち着いてると思ったけどいっぱいいっぱいで頭働いてないだけなの…ね!?」


 落ち着けるかいバーカ!!ちょ!速く避難!できるだけ腹を守って避難!


「凄味が妙にあるものだから聞いちゃったじゃない…の!」


「……これ脱皮殻ですね」


「からっぽだー」


 よーし皆、一度ここにキャンプを張ろう、疲れただろう?


「………」


 わかるよ、凄く何か不満なんだね


「慣れよ…アタシ…あのお嬢ちゃんだって耐えたんだから…」


 いや取り乱すってあんなもん、無理だって。


「でかい」


「硬い」


「臭くない!!」


 シバ三兄弟、齧るのはおよし、そいつ物凄い毒なのかエゲツない体臭なのかわからないものを体から噴霧するからね。


「しかし抜け殻でこれか…相当…ね」


 抜け殻なあ…とはいえこの程度ならまだ想定内想定内?あの鹿並に相当な強敵と戦ってたらだけど。


 まあむしろヤバいのは病狗(こいつ等)の鼻に引っかからなかった事でしょ、御本人だったらほぼ終わりだったよこんなん。


「アンタ達、臭いはしなかった…の?」


「ラブさん、俺達は生まれ持ってから今まで嗅覚(こいつ)に裏切られたことはねえ…だがな、この抜け殻からは異質なまでに何の臭いもしねえんだ…!」


 おお君は……えー、その分厚い耳とデカい体…アキタイヌで。


「じゃあこれは無臭スキル……どうして…」


 何その便利そうなスキル、夏場の脇に必須?


「そんなもんじゃ無いわ…よ」


 そんなヤバいスキルなの?ナーフされる奴?


「スキル自体はそうでも無い…わ」


「ただ、暴食王がそれを持っている事自体おかしい…の」


 ん……どういうこと?


「暴食王は廻るけど目的(・・)は常に1つ…それは何度世代を交代しても変わらないの」


 食べる…ってこと?


「ええ…それも生物が絶滅するまで、まるでそういう災害…ね」


 まあ災害だよね、飢饉も起こすわダイレクトに街滅ぼせるわだし。


「……アンタ、雨が地面に垂れて、地面に染み込んで、空に行って、また落ちる…その循環に異常(イレギュラー)って起こると思…う?」


 雨だからって降るだけとかダセえ!俺落ちねえ!ってこと?


「それと同じこと…ありえないのよ」


 ………ごめん半分も理解してない多分。


「暴食王という災害が、食に関係ないスキルを持っている…戦うわけでもなく」


「知らないって怖いわ…」


 君の取り乱し方見てれば大凡どういうことかわかるさ。


 逃げよう、いの一番に逃げよう。


 私は最悪娘と小娘を回収出来てればそれでいい、後は領主に…任せ……られねえよなあ。


 そうかあ…美しくないかぁ…いっそ純度を帯びた生き汚さで行けるかなーって思ったけど無理かぁ。


 ……不便だよこの精神の同調みたいなの。


「……精神の…アンタ暴食王に取り付いて見逃されたのよ…ね?」


 うん、次会ったら殺されるとは聞いてるけど一応見逃して貰ってるよ?


「いや……でもそんな…まさか…」


「暴食王という循環する命の中にハリガネムシ(アンタ)という異物が入り込んだ…から?」


 ……もしかしてラブハート氏頭良い?


「ふっ…学卒…よ」


 そのレベルがどの程度なのかはわからないけどそうなんだ……凄い…のか…?


 そうかそういう…そういうことなの…かなー?


 正直確かにこの殻を見た瞬間何かしら繋がりみたいなのは感じた気もするし100%の気の所為の可能性も大いにある。


「……何も無くないかしらそ…れ?」


 まあうん、初見であんだけ怖い思いしたから何かもう足跡すら恐ろしく感じるよね。


 ていうかそれだとしたらまずくない?探知できないなら御本人様と余裕で鉢合わせる可能性もあるわけだし。


「ラブさん、ハリガネサン、こっち来てくれ」


 どうしたアキタイヌ、今付けた名前だけどしっくりくるずんぐりむっくりだ。


「どうしたのかし…ら?」


「長がこの殻見た、まだそんな古くない中身食われてる跡ある、こいつの中身食えるやつそういない」


 自分で食ったんじゃね?


「なら…まだ近くにいるわ…ね」


 ……やっぱりキャンプは張ろう、もう心労やらで皆落ちそうだ…主に私。


 ただ警戒は怠らずに、流石に地響きまでは隠せないだろうしあのデカブツなら近くに来て目に入らないことも無いだろうからね。


「…ええ、そうしましょう」


「総員、ここにキャンプを張るわ…年寄り女こどもから食料を渡して行きなさい」


 ていうか言っといてなんだけど抜け殻(こんなもの)の前で皆寝れるのかな。


「貴方もわかってるでしょう?これ自体にそこまでの威圧感は無い……おそらく気配を遮断するものも…」


 成程…絶望的だね!


 強いて希望を挙げるとすれば奴が率先して私達を殺しに来ないことくらいかな!まあ腹減ってたら食われるだろうしあいつが腹いっぱいなところ見たことないけどさ!ははは!!


 ああ……死ぬんだ…


「アタシの頭の中で壊れないでもらえるかし…ら?」

【補足】

この世界に暴食王は同時に二人といない、代わりに暴食王候補となる生き物は生息している。


現暴食王のグラトニカが発生した『ヘカトントレイル』種全員があの姿になるわけではなく、生活状況や成長期の栄養状態、居住環境で見た目もスキルもステータスも大きな差が出るものと考えてください。

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