サバイバルには知識が武器となる
「お、あれは長めに煮れば食べられるわ…ね!」
ほうほう、覚えておこう。
「ラブさん!ラブさん!いいの見つけた!」
「取れる量は少ないけどこの種類の蔓に生ってるこれは水に晒しておけば渋みが抜けて芋みたいな味がするんだ!」
はえー、そんなんあるんだ。
ヤバい、今から死ぬかも知れないのに道中の食べられる野草や木ノ実講座がかなり面白くて集中できない。
あ、ちなみに今推定むかごか何かを持ってきた二人…二匹?は愛称としてチャシバ、シロシバと呼んでいる、クロシバとは三兄弟とのことだ。
人の頃だったらモフモフに癒やされたい心もあったんだろうけどどうにもこの姿になってからというもの、人間だった時の欲求が異様に低い。
まあハリガネムシとか寄生して卵産むくらいしか欲求なんてねえか!ガハハ!
「ちょっと…変なテンションになられると頭の中が煩くて仕方ないんだけ…ど!」
すんません、ただ…ただもう…自分が昔人間だったって記憶も薄くなってきてて…どっかのアンチキショウに閲覧制限みたいなのかけられてるし…
「相っ当に呪われるようなことしたの…ね」
身に覚えがねえんだよなぁ……
「ラブさん、これも喰える、毒あるけど」
食えねえって言うんだよ一般的にそれは。
身体に異常はあるけど食えるって意味でいいならフライパンだって食べられるパンやろがい!
てか怖何そのキノコ!?真っ赤に白い斑点みたいなのあんだけど!?スーパーな私になっちゃうか即死するかのどっちかだよその色は!?
「いいえ、これは白い部分を丁寧に洗え……ば」
「食べすぎなければ問題ないくらいには毒を落とせるの…よ!」
ああ、つまりは食べ過ぎたらヤバいのね。
安心できねえよ。
「んもう…最悪アタシは毒に耐性があるんだから問題ないわ…よ」
少なくとも今飢饉に直面してる状態の奴が食べるわけにはいかなそうだしラブハート氏の食料ってことにしとこうか。
「ラブさん!見てこれ!見て!」
うわあキッショい!?
デカいミミズ!?食うの!?
「あら…それは食べれないわ…よ?」
「うん!!食べれない!」
食えねえんじゃねえかバカ野郎お前何で持ってきた!?
「まあ早口……坊や、それは近づけないで頂戴、アタシは平気だけ…ど」
落ち着こう、素数を数えよう、1、2、3、4…?まあいいや。
子供のやったことだ、怒るほど狭量じゃないともさ、アイムハリガネサン、心広い、オーケー。
「ああ!ハリガネサンが嫌なんだね!似てるのに!」
ぶっ殺すぞクソガキ。
「でも確かに…駄目なの…ね?」
いや、普通のサイズならいいのよ別に。
「ふぅむ……しかしまあ、あれは弱いけど麻痺毒の素材になる…の」
「見つけたなら手の空いてる者達で抽出しなさ…い」
「うん!頑張って踏む!」
抽出方法が原始!絶対見たくねえ!
てかそんなん効くの?大概の毒には耐性あるでしょ彼奴等。
「まさか、溶解王くらいの毒ならあれとて溶かせたかもしれないけ…ど」
「これは魚を取るのに使うの…よ」
あー、成程ね。
そういえば昔未開の種族に話を聞くみたいなテレビでやってたわそんな狩り。
しかし行けども行けども森だねえ、結構進んだと思ったけど一向にムカデのムの字も感じないし。
まあ痕跡だけは途絶えてないみたいだからそのうち着くんだろうけど。
「病犬の面々も着々と回復してってるし…ね!」
おかしな回復速度だよね、餓死寸前だったやつがちょくちょく捕まえた鳥やら木の実やら食べてるだけなのにもう何匹か歩いてるし。
そもそも餓死寸前のやつに肉なんて食わせたらそのままお陀仏なんだけども。
「恐らくだけ…ど」
「彼等は冬籠りをしない種族……食べたものは即座に栄養に還元されるスキルでも持ってるんでしょう…ね!」
生命の神秘だね……いやムカデが持ってたやつもその類か。
「歴史的に見ても暴食王は倒されるより餓死の方が死因としては多い…し?」
「燃費がさぞ悪い身体なんでしょう…ね」
そうだよ、普通に走ってるだけで目に見えて萎れていくような燃費してた。
何なら餓死しかけたし。
「それって…どういう感覚な…の?」
「もしアタシが大怪我したらアンタも痛いってこ…と?」
そこの心配はいらないかな、お嬢ちゃんが頭ぶん殴られて昏倒したときも真っ暗なだけで私の意識はあったから。
まあもっとも、素の私じゃ踏んづけられただけで死ぬしラブハート氏の胃が穿かれたら諸共死ぬだろうね。
「あら、アタシは刺された程度じゃ死なないわ…よ!」
死んどけよ、人類として。
「………止まろう」
ん?どうしたクロシバ。
………は?
おま…これ…え…?
ムカデの…死体…?
クロシバ(長男、戦士長)
チャシバ(次男、スキルの開花が遅い代わりに怪力)
シロシバ(三男、移動速度高い、回避が得意)
マメシバ(クロシバの子、まだお嬢ちゃんよりちょっと強いくらい)
今週繋のため短いですがご了承くだされー