ハリガネムシの目にも涙
「ま、話してみなさいな、ここ座るわよ?いいわ…ね?」
どっかりと座り込んだはずなのにやたらと姿勢が綺麗なのちょった腹立たしいな。
「……我々は…あなた方の思っているような存在ではありません」
「過去には確かに向かってくる人類種と戦った事もあります」
「ですがそれは家族を守るためです」
長老っぽいのが喋るのを皮切りに後ろに控えてる女性的な…見た目?多分女性っぽい方々も口々に話し始める。
犬の雌雄って顔付きだと微妙にわからないんだこれが、革鎧みたいな厚手の服のせいで殆ど体型の線も隠れてるし。
声は長老犬はややしゃがれた低い声だし残りは少し高いかな?くらいにしか違いがない。
まあ子供はわかりやすいね、骨格以外は殆ど子犬だもの、顔付きも前足の長さも……前足おかしくね?
途中までは確かに普通の犬脚なのにいきなり関節増えてるように見えるんだけど?
「そう…そういう事だったの…」
やっべ完全に聞き逃した、何て?
「……つまり貴方達は過去の人間との遺恨のせいで恐れられ交流などもできず、そもそも亜人故に他の国に亡命もできず、悪い力に頼る他生き残れなかったと」
「…はい…その通りです」
ありがとう、めっちゃ説明してくれありがとう…
いやまあでも、大体察してた程度だわな。
あの犯罪者が裏切り者は殺されるだの本気で怖がってたのもまあ、こんだけ犬っぽい連中なら犬の能力…てか狼?の嗅覚とかある程度はあるだろうし。
大方裏切ればどこまでも追跡して殺しに来るとかそんな風に脅されてたんだろ、実際さっきまで襲い掛かってきてた連中も強かったみたいだしね、ラブハート氏が規格外だから瞬殺は瞬殺だったけど。
「解せないの…は」
「コボルトがこんな地域にいることよ…ね?」
ん?普通はいないの?
「アンタ達…こっちの生まれじゃないでしょ、確かここから比較的近い大陸の方の…」
「……ええ、コボルトと呼ばれる種族はあちら側の混合大陸に多いと聞いています」
何か引っかかる言い方だね、コボルトじゃないのか君等は。
「……貴方達にも見分けは付きませんか」
「いえ、無理も無いことです」
「……話が読めないのだけ…ど?」
失望の混じったような声色、表情からは何にもわからないけど何かに酷くがっかりしたような言い方をしやがる。
「我々は…コボルトなんぞではありません」
「我々は神を失いました、もはや降りてくることも叶わない程に神を打ち砕かれたのです」
「故にもはや氏族と呼ばれるものでもなく病狗の名も畏怖され付けられたものです」
「ですが我々は、元々神の氏族」
「ホロケウ族と呼ばれるものでした」
うん、例によってさっぱりわからんけどラブハート氏なら理解してくれてるだろうし後で説明だけ頼むね!
「……」
ラブハート氏?
「そう……」
「我々は人でない…確かに亜人とはいえ生き残る道はあったかも知れません、人の奴隷となればあるいは…」
「ですがそれを神の氏族であった我々の体は許してはくれないのです」
「……そう」
うーむラブハート氏の様子がおかしげ、大丈夫かおい。
「アンタ達が十分同情に値することも、やらなければアタシ達が来るよりも早く終わってたこともとりあえずは納得してあげ…る」
「でもそれとこれとは別、何よりここでアタシを言い包められても…アンタ達の終わりは早いか遅いか…そうじゃない?」
「……その通りです」
絞り出される言葉に何が籠もっているのか何て私には理解できない。
でも今は一心同体だからこそわかることがある。
ラブハートはもうこいつ等を救うって決めたんだな。
そっか、そうだよな、じゃないと自分らしくないもんな。
いいよラブハート氏、やり方は任せる。
君の美しいと思うままにやってくれ。
「……ええ、勿論」
「…はい?」
「いやぁねこっちの話よ、気にしないで続けましょ?」
「人を食べた遺恨、過去こちらもアンタ達に酷いことをしたであろう遺恨…両者納得させないかぎりアンタ達に明日はない…わかるでしょう?」
「はい…それは承知しております…」
「それで、何が出せる…の?」
「金品は限られた数しか…後は我々の首を差し出す代わりに攻めて子供達や女達だけでもと…」
「アンタ達の首が、何の役にたつっていうのよ」
「氏族の誇りだか何だか知らないけ…ど」
「アンタ達が死んで、この極限が良くなることなんてない、女子供も助からない、誇りやプライドなんて今の人類には通じないのよ」
まあ確かに死ぬか生きるかの話してるのに精神面の話されても困るよね。
「……外の連中は全員生きてる、家族のために死なせるなら、せめて戦わせてから死になさい」
「誇りを大切にするなら、死を逃げ道にするんじゃない、戦って掴み取りなさいよ、美しい勝利を!!」
「……これから暴食王を探す、その後は暴食王ひきつれて黄金神鹿とも戦う、怖気づくなら見逃してあげる…でも戦うと決めたなら…」
「アタシがアンタ達を守る」
健全なる精神は…強靭なる肉体に宿る…だっけ?何か違う気がするけどラブハート氏に置いてはあってるだろ。
参ったな、本当に私はこの人の中にいたら良い奴に染まっちまいそうだ。
このままじゃ虫ケラに戻りたく無くなっちまう。
そう思わせるくらいに、今のラブハートはかっこいい。
「…お…おぉ…この老体…いえ病狗改め【ホロケウ族】一同、この命預けさせて…いただきます」
ボロボロ泣いてる、そら泣くか。
私でさえ涙が流せるなら泣けるかもしれない。
ハカセ…涙とは…悲しい…とは…?
一人ボケはツッコミがいないからつまらんな。
「っぐぬぅ…ひっっぐ…ぅう…」
そんで老犬の倍くらい泣いてるのがこのオカマッチョだ。
いや、マジで、今さっきまでのかっこ良かった貴方をカムバック。
そんな泣く?そんな?
「辛かったわね…アンタ達…人類に代わって謝ることは無い、それはしないけど…アタシが面倒を見るから…ドンと任せな……さい!!」
遅れて申し訳ない!!リアルの課題に追われておるので今年いっぱいは取り敢えず忙しいです!!申し訳ない!




