猛襲×猛臭
凄い、ここまで一切の動物に出会わない。
「悪臭袋の効果関係無しにこの辺りの生き物は食べられちゃってるんだけどねン」
あのムカデの食欲恐るべしだな…あとスライム爺ちゃんも。
「ま、暴食王も離れて溶王も粉々…それじゃじきに動物も帰ってくるでしょう」
なら安心なんだけどさ、いつまでもこんな調子じゃあの街が本当に滅んじまう。
しかしまあ、この前も思ったけどラブハート氏って異常に足速いよね。
「そうかし…ら!」
うん、人類の中でも最強格なんじゃない?
「ふ、アタシは自信の塊…とはいえそれはいいすぎ…よ!」
「アタシなんて、最上位に比べたら大したことはない…わ!」
「今は…ね」
そうなの?前に会った槍聖とか言う肩書きの強そうなおっさんは全く大したこと無かったからなあ…あれどの程度なんだろうこの世界だと。
「槍聖…どの?」
バルゴ…バルゴ何とか。
「バルゴ=ジークバルゴね…あの人も強いわ、いや…強かったと言うべきかしら」
どう言うこと?
「少し前に犯罪をね…それでレベルをリセットされたの…よ」
そんなシステムあんのこの世界、カルマの値が高いと駄目とか?
「ああいえ…それができるのは数人しか知らないけど、リソースを剥奪して文字通り人生の歩み直しをさせる刑罰があるの…よ」
犯罪者のレベルをね……それまずくない?
だってレベルに物を言わせて強くなれるんだからそれを剥奪したらさ?
「その者の罪がそれ程高ければ…確かにレベルを下げた瞬間殺されることもあるかも知れない、それでもそれも含めて刑罰と言えるものだもの…甘んじて受けるべき…ね」
自分達で死刑にしたくないからってそう言う制度作ったのかね……何にせよ胸糞悪くはなりそうだ。
じゃああのおっさんは犯罪者だったのか……
「その口ぶりだと…殺った?」
まあ、不慮の事故とも言えるけどね……犯罪者なら気も楽だ。
ちなみにどんな犯罪なの?
「さあ……殺人だった筈だけど」
命の欠損がこんなにも近い世界なのにその程度で…と思えるようになったら駄目なんだろうね。
しかしそうか…そんな経緯だったかあのおっさん。
「ま、大方武者修行がてら魔物狩りでもしてたんでしょうね」
私…というかムカデに出会っちゃったのが運の尽きだね。
「そいつだってアンタを殺しにかかってたなら…本望でしょう、戦いの中で死ねたんだも…の!」
それもそうか…ところでまだ着かない?
「もうそろそろ……ここら辺だったとおもうんだけ…ど」
「あ、あそこかしら」
む、わかりやすく洞穴…帰りたくなるね。
「怖気づくまでが早いわ…ね」
ハリガネさんはホラー展開とか望んでないタイプの人だから、古き良きジャパニーズホラークソ喰らえだから。
「さて…頼゛も゛ぉ゛ぉ゛ぉ!!」
声デッカ!!?鼓膜無いけど体そのものが震動したぞ今!
しかもそんな声量洞窟に放っちまったらお前…
「……ふむ、誰も来ないわ…ね」
中で全員死んだんじゃねえの?
「ま、いいわ…お邪魔するわよ」
転けんなよ、少しでも擦り傷作ったら破傷風が怖いって前世にアニメで見た。
「何それ…まあ確かに洞窟の壁や天井や床全部が毒って洞窟もあるみたいだけど…ここは違うわ、むしろ中は清潔な水も流れてるらしいわ…よ」
やけに詳しいね、来たことあるの?
「街で聞いたの…よ!」
ふーん、まあ今となっちゃ悪党達が根城にしてるらしいからどうなってるかなんてわからないけどさ。
「……気配はするわ…ね」
例の病狗?
「さあ、どうかし…ら」
「息のある者は出て来なさぁい!出て来ないとこっちから行くわよー♡」
凄い、奥から凄い勢いで出てくる音がする。
「何者だ貴様等ぁ!!」
ブチギレフェイスの柴犬みたいなのが沢山!!可愛い!!
でも肉体は毛むくじゃらだけど人間骨格だな…あんまり可愛くない。
ていうか皆革鎧か、結構ちゃんと文明してんだな見た目の割に。
「ぐがっ!この…!臭い゛…」
「ゲホッ…毒か…!?」
「お前ら…来る…な…!」
と思ったら悶絶してる、悪臭袋恐るべしだな。
「お話し合いがしたい…の、ボスを呼びなさいボウヤ達」
「うる…せえ!!」
殺すな。
「ふん…承…知!」
いやお前今承知って言いながら心臓の辺りぶん殴ったよね?殺しに行く拳だったよね?
「峰打ちよ♡」
どこだよ、拳の峰。
「ごぶっ…!?ぁ…」
気絶したぞおい、生きてるよね本当に?
「この手の亜人種は妙に頑丈だから大丈夫…よ」
「てめえよくもイロンシスを!」
「落ち着けワシリー、息はある…!」
まあ、君等どうせ悪人なんだから多少ボコられるくらいは大目に見たまえよ。
「さてと、逆立ちしても勝てないことはわかったかし……ら!!」
「舐めるなぁ…!!」
あー、まあこうなるか。
よしラブハート氏!やっちまってくだせえ!!
「ふぅん…なら、殴り合いま……しょ!!」
今年最後の更新です!来年もよろしくおねがいします!!