百足の街道
うねうね、うねうねうね。
だーれも来ない。
待てど待てどもだーれも来ないんだなこれが。
色々と実験してみたらこのボディは乾くとだんだん体がカチコチになって文字通りハリガネみたいになっちゃうようだ、おかげで水辺から離れられない現状。
乾燥耐性の大事さが身にしみるねまったく。
ううん、私は多分寄生さえしてれば基本死なないんだろうけど…さっきから強烈にお腹が空いてるんだなぁ。
お腹はどこなのか知らない、多分この辺?
おやあれは…か、カメレオン君だ!生きてる訳ないから確実に別個体のカメレオン君じゃないか!
お、見つけたね私を!
さあその長い舌でペロリといっておくれ!
なぁぜ逃げる?
一目散か、一目散かおうコラ。
いやまあ、同族の臓物の匂い漂うハリガネムシに寄ってくる奴は有り得ないくらい酔狂か危機感が欠如しているかのどちらかだろうよ。
しかし参ったな、この辺りを支配してた奴が死んだからか全く何も寄ってこない。
いや何ならその支配者の死体は目の前にある、依然として水に首をだらんとつけて寝ている。
わーん、このままじゃ一生ここでうねうねしてるだけの生活だよー!
っとまあ駄々をこねても不思議なポッケで助けてくれるロボも自分の顔を引きちぎって差し出してくれるパンも来るはずは無いので自分でどうにかしなければいけないわけだが、それが何より大変だ。
て言うか何週間もいたらこの鱗ドッグも腐って水質汚染が始まってしまいそうだ。
…拡張解析
[死体]
ふふ、見りゃわかるんだよおらぁ!
駄目だ割れる気配どころかびくともしない、て言うかなにこれちゃんと質量あんの?
武器を失ったら最悪ステータス画面で殴ればいいわけ?
こう、角のところでごりっと?
すげえ痛そう…
しかし散々成長して何とまあ成長限界ステータスが普通にカメレオン君より弱そうなあたりハリガネムシって根本的には弱者なんだろうね。
そして多分本来救済のためのスキルが『寄生』か。
おや…鱗ドッグの腹の辺りからごしゃごしゃと異音が?
あれは…ムカデかな?
大きく見えるのは私が小さいからか、ううんそんなわけない。
だってそれより手前にいる鱗ドッグの頭より軽く大きいもの、これは化け物だね。
そして凄い速さで平らげていくね。
明らかに減ってる部位より体積小さそうなのにね。
ははーん、さてはそう言うスキルかな?
そんで食べ終わったらデザートは喉越し爽やかそうなハリガネムシかい?
ふふ……
無理無理無理無理!
いや本当ムカデは私無理だから!
共演NG過ぎるから、たとえ乗っ取れても体見る度にびびるから!
……まあ、逃げられないよね。
まず水辺から出られないし。
いやぁ、食われた食われた…何なら追い付かれた後は噛み千切られないように体内めがけて突き進んでやったよね。
[アクティブスキル『寄生LV.7』による生体浸食100%を確認。]
[視点を切り替えます。]
[生体の持つ全能力を使えます。]
第4の人生はムカデか…生体解析。
種族名 ヘカトントレイル
LV. 21 HP 790/790 MP 1020/1020 SP 2708/690
アクティブスキル 『急速消化LV.3』『毒牙LV.9』『スタミナ延長LV.8』『高速移動LV.6』『パラライズLV.10<standby>』『拡張解析LV.7』
『アーマーブレイクLV.7』
パッシブスキル 『嗅覚LV.4』『思考加速LV.4』『飢餓LV.7』『スタミナ急速低下LV.6』『闘争本能LV.5』『逃走本能LV.7』
魔法 『微睡みの瞳LV.1』『衰弱の瞳LV.1』
称号 『飢える者』『貪る者』『同族を喰らう者』『破滅の先触れ』
状態 寄生 幼体
突っ込みどころ過多!
しかし強い…レベル私より9も低いのに。
ついに出てきたな魔法、瞳シリーズって感じ?
後で適当に使ってみよ…MP四桁あるならそうそう枯渇もしなさそうだしね。
いやスタミナ化け物かよ、どっから見ても化け物だけども。
これは…ハズレの可能性あるな、アクティブスキルは強そうだけどパッシブがデメリットっぽいのついてる。
うーん…内容的にはいっぱい食べ続けないとすぐバテるみたいな意味か…果たしてバテるだけで済むのか。
てかパラ…麻痺だな。
すてんど…ばい…あ、スタンバイか。
何か進化したりするのかな?
え、拡張解析LV.7もあるじゃん!
っしゃあ!これなら色々調べられる!
例えば今そこで死にかけの鱗ドッグにー、拡張解析!
個体名 エルメザ・ボルガ
LV.78
アクティブスキル 解析失敗
パッシブスキル 解析失敗
魔法 解析失敗
称号 解析失敗
状態 死亡
[強き獣、■■■■■■により住処を追われた■■■■■■■の末裔。]
[偉大なる祖の力等最早殆ど存在しないが唯1つ]
[闘争こそが生き様、闘い、争い、奪う事だけが唯一残された原初の本能]
[それだけが、祖が生きたと言う世界への傷なのだ]
成る程わからん。
そして多分今出ちゃいけない情報だこれは。
ゲームで言うならバグが何かで重要なイベント10個くらいすっ飛ばした気分だもの。
と言うかレベルが私の上限値の二倍以上とな?
ステータスもスキルも何一つわからないのは死んでるからかレベルの差がありすぎるのか。
うーん、これ絶対勝てないってか…敵としても見なされない奴だな。
取り敢えずだ。
……お残しもあれだし食べとこ。
いやー、食った食った。
食べる側から空腹になるから全く食べた気がしないけどな。
あとそう、恐れてた事態がおきたよ。
味を感じる。
もうね、ずっっっと血の味。
雨の日に鉄棒かじった事はあるかい?転んで鼻から地面に叩きつけられたことは?思い出してご覧、その味だよ。
いやこれ想像以上につらいからな、もう虫とか食いたくない。
果物だけで生きていきたい。
そんな私に追い討ちをかけるムカデボディ……わっさわさしてるよ、体を捩ると沢山の逞しい機械っぽくもあるような脚が…
水辺を眺めて見る、多分飛び込んでみたら出てくることはできるだろうが…その後は?
また何か生物が通りかかるのを待つか?
そんな場合じゃない、さっさと森から出たいんだよ私はね!
はー……行くか。
このムカデの体になってから一時間くらい経ったかな?
めっちゃ乗り心地いいわ、ムカデ。
まずね、移動速度が半端じゃない。
あとこれがデカいんだけど、段差とか隙間とかなら物ともせずに進んでいけるんだよね。
まあ確かにムカデって結構壁とかにくっついたりしてるの見かけるけど自分で動かすとこんなに快適だとはね。
しかし行けども行けども森なんだよなぁ。
途中で何匹か友人を食いながら来たけど1レベルも上がらない辺りこの辺りではムカデは強い方なんだろうね。
ヘカトントレイル…ヘカトントレイル…由来が一切わかんないな、何を隠そう私の英語力は5だ。
通信簿じゃないぞ?戦闘力的な意味でだ、ゴミなのだ。
まあまず英語じゃない可能性もあるけどね、いやーステータスとかが日本語対応しててよかった。
スキルレベルとか教えてくれる声もアラビア語とかだったら凄く困っただろうしね。
おっとこれは…?
足跡かな?人間の。
今の私の体からしたら十分の一にも満たない足跡…靴をはいているから人間で間違いないだろう。
長かった…やっと人に会える。
そんなに寂しかったかって?
寂しかったよ!
いきなりこんなとこに産まれたと思ったら開幕はコオロギの腸内スタートだぞ!
友に不満は無いさ、ただな!わかるだろう!?
心細さで死ぬかと思ったわ!
足跡を全力で追いかける、待ってろ第一村人!
いやこの場合森人?ゴリラじゃねそれ?
この際ゴリラでもいい、霊長類でさえあればそれでいい。
いっそゴリラがいい、ゴリラに会いたい!会ってみたい!!
しばらくすると大きな槍を携えた丸太のような手足を持つ屈強なおっさんが見えた。
……ハロー!マイフレンド!
「■■■■■■■!」
何て?
「■■■!■■■■!」
いやわからんわからん、どうしたおっさん。
こっちを睨みながらー?
お、でっかいリュック降ろしたね。
邪魔なんだろうね、少しでも身軽の方がいいよね。
そんで槍を背中の帯から抜いてー?
はい構えた。
はは、まあ見た目ムカデだもんな。
それも言語の通じない自分よりはるかにデカいお化けムカデ。
まあ私も例え普通サイズだとしてもムカデがフレンドリーに近寄ってきたら刺すわ。
よぉし。
撤収!
走れ走れ私の50対の足達よ!風よりも速く!
せめて、せめて次は犬とか可愛い生き物になろう。
今ここにそう誓う!
ムカデのサイズはだいたい長さ2mくらいよー