昔の喧嘩とあれやこれ
丸々一話書き直したから遅くなっちゃった……
申し訳ございません!!
Q.私が何者か。
A.ハリガネムシが寄生して思考や体の操作を奪われた女児です。
どうあがいても絶望すぎるだろ、言い逃れとかできる台詞じゃねえよこれ。
んー、だとしても嘘は見破られるだろうし…スキルの類か?そもそもこんなオカマッチョに見つめられてたら嘘の一つ吐くにも内臓ごと出ていきそうなくらいストレスを受けることになる。
その場合私も吐き出されるからもれなく致命傷を叩き込まれるだろうね。
沈黙が続けられる時間は長くない…とくればここはもう…これしかないよね。
仕方ないけど、これはもう一回死ぬかね。
「今から証明します……でも私はいいけどこの二人には手出すんじゃねえぞ…」
さて…お嬢ちゃん、代わっておくれ。
[オーダー、アクティブスキル『寄生LV.8』を使用した緊急脱出]
[射出開始]
えらい久々のシャバだぜヒャッハー!!
……そして久々の明確な自分へのダメージ…体軽くなけりゃそこそこ痛かっただろうなこれ。
「うわっ…!戻すなら…言ってよ」
急に体の主導権を返され尻もちをつくお嬢ちゃんの風圧でちょっと浮いた気がする今、そんな長い間入ってたわけじゃないはずなのに元の体とのギャップが凄いな……
「……成程…ね、そう言うこと」
うぉお…くっそ怖いなオカマッチョ。
「…敵意はないよ…私には」
ならよか……いや私は?
むしろお嬢ちゃんから出てきたことで心置きなくぶっ潰されるだけでは?ちゃんと説明して?
「……こいつに寄生されて、操られた」
お前ちょっと待て馬鹿野郎、今絶対やっちゃ駄目な冗談だそれ。
全部真実なだけに尚の事質が悪い。
「……私は森林小人、体を貸す代わりに旅の手伝いをお願いしてたの」
「嘘は無い……か、ふぅん…亜人や準亜人じゃなくて完全なる魔物と共存…それが貴方の恩寵ってわけね」
多分違うと思うよ、お嬢ちゃんは純粋にお話ができるだけだもの。
「……まあいいよそれで、納得した?」
すこぶる不機嫌そうだな…まだすねてんのか?
……睨むなよ。
「……まだ若いのに…取り返しがつかないことになるわよそんな無茶してたら」
魔物の力借りるなんてあの豚だって同じようなもんだろうに。
何だ、差別か?ハリガネムシ差別か?
「もう既に少し混ざってる……まあこのくらいなら時間が経てば治るでしょうけど」
混ざっ…え?
「……どう言うこと?」
「……どう言うことか、何てアタシが知りたいわよン…貴方とそのムシケラ…どうやったのか融合しかけてる……あら、契約には含まれていなかったの?」
え、知らないよそんなの?
「…?知らないってさ」
「ああ…そう、それは随分とアコギなことするじゃない」
「……つまり?」
「そのムシケラは貴方に言わなかったようだけど、もう少し出てくるのに時間がかかってたら完全に貴方の魂ごとぶん取られてたって言ってるの」
待て。
「嘘…」
違う。
「嘘なもんですか、アタシはちょっと眼が良いの♡半分くらいくっつきかけてたのか…随分寿命を吸われてるようね」
「あのままじゃじきに自我も全部奪われてたんじゃない?」
お嬢ちゃん、違う、聞いてくれ。
「そんな…」
違うんだよ、知らなかった、私はただ体を間借りするだけだと。
「何て……そんなこと知ってたよ」
……え?
「取りつかれてる間は夢の中みたいだけど、自分の何かが吸われてるのはわかってた」
「……でもハリガネさんが悪意でそんなことするわけないじゃん」
……お嬢ちゃん。
「寿命が吸われた?それが何、このムシケラが来なかったらもっと早く死んでたよ…」
「言ってなかった?知らなかっただけでしょ……隠し事なんて器用なことできる程賢くないんだよハリガネさんは」
「それに……共犯者に命も預けられないで冒険者になれるか…!!」
オカマッチョが本気になったらお嬢ちゃんは即座に肉片にされる、それがわからないはずはないのに無茶を……私のためか…
「…………そう、無粋はアタシだったわねン…何をどうしたのか知らないけど…随分そのハリガネさん?を信用してるじゃない」
「……弱いし、頭も変だし、見た目も気持ち悪いし、娘に養われてるけど…いい人だから」
「……しかも人じゃないけど」
いや言い過ぎだよ、感動してたのにやや引っ込んだよ。
「謝ってよ、このムシケラは凄く心が弱いんだから…それに辛くても今はもう涙も流せないんだよ、謝ってよ…凄く傷付いてるから…!」
ちょっとずつ私に流れ弾してるのはわざとか?わざとだな、この野郎。
…でもありがとう。
「ええ、悪かったわ……そして…良かった」
「謝るわ…ごめんなさいね試すような真似しちゃって……じゃあ、本題に移るわ」
試すて…むしろ今までのはついでかよ、過去1肝冷えたわ。
「お父さんはちょっとこっち入っててくださいね」
む、懐かしの水筒だ、意外とね、体内も良いけどこうして自力で動ける空間も素敵なものだよ……まあ外側があるに越したことは無いけども。
「今から言う名前に聞き覚えがあったら何か反応してちょうだい」
発音はできないので頭…頭?まあそれっぽい部分を縦にクイクイと動かしておこう。
「《長老》個体『熔王ルル・ピター』」
知らない、強そう。
「《特異点》個体、『黄金神鹿ウェン・カムイ』」
知ら…知ってる!!殺されたことある!!
「ウェンカムイ……名前だけなら聞いたことがあります、確か…ここから少し離れた地域での神の名前です」
「元…だけどねン、今となっちゃあれは曲神もいいところよ何せ…喧嘩してたとは言え弟をぶっ殺されちゃったんだから、それも再誕した直後の弱い時に一方的にね」
読めて来た、そういうことか……私がムカデボディの時に倒したあの鹿のお兄ちゃんがあいつか……
「知ってるって、それが何?」
「嫌われちゃったわねン……まあいいわ、アタシの目的はそいつの復讐を止めるこ…と」
「止める…?」
「ええ、聞いた話によると同じく《特異点》個体『暴食王グラトニカ』との大戦争になるらしいわねン」
やらせとけば?とも言えないか……絶対あのムカデ強くなってるだろうし、何より鹿もあれで弱い部類とかマジか?森滅ぶだろそんなもん。
「我々に何をしろと…?」
「この二人の戦いから国を守る…それだけならアタシでもできるわ」
できるんかい。
「ただ…問題は『黄金神鹿』の軍勢がどう言うわけかこの国にも向かうって情報が入ってるのよね」
「まるで…復讐相手がこの国にもいるかのように…それも執拗なまでの数を」
「……どこまで知ってる?」
「知ってることしか知らないわン……でも今見て確信した、そこのおチビさん……貴方が件の復讐相手……ね?」
ズビシッと指を刺されてしまった。
身に覚えがないとは言えないしまあもうこれは仕方ない、知ってることは全部吐くので二人の命の保証だけはしてつかぁさい。
「私とこのお姉さんさえ生かしてくれれば煮るなり焼くなり好きにしていいって」
「じゃあ取り敢えず煮ようかしら」
一思いに頼みたい所存だよ。
「そんな冗談は置いておいて…話、聞かせてもらおうかし……ら!」
間のとり方独特すぎて慣れねえなこの人……まあもっとも見た目にも慣れそうにないけど。
「……これ私が翻訳するの…?」
特異点個体 ざっくり説明するとユニークスキル持ち
長老個体 ざっくり説明すると年取りまくってリソース溢れまくったお爺ちゃん、ユニークスキルは無いけどそのままユニークスキル貰って特異点個体になる奴もたまにいなくはない。
年の功によって知能の高さがとんでもないから普通のエルダー個体にえ、その年まで生きてきてユニーク持ってないの?とか煽ったらミンチにされる。