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絶望は忘れた頃に

「この子を……ミリア殿をですか?」


「ああ、まあ働く場所が無いとね…」


 領主の家のメイドならまあ良いだろうさ、悪い奴じゃなさそうだし人でも足りてない。


『……本当についてっちゃ駄目なの?』


 いい、とは言えないよやっぱり……ハリガネさんは何となく自分の行く道を決めたところだし。


「さっき豚車で話してたやつですか?というかあれはいったい…」


「簡単な話しだよ、私をこの世界に追いやった推定神様…いや神様なんて呼びたくねえな」


 というかあれよ…見てる奴(・・・・)


「見てる奴……?」


「んー、まあそれは追々話すけど…そいつをいっちょぶっ飛ばして見ようかなって」


「随分大きく出ましたね……」


「だからこれから取り敢えず強くなってみようかなって」


「ざっくりしてますね……」


『それで……置いていくの』


 仕方ないでしょ、だって危ないもん。


『……そうだけど…冒険者になりたいのに』


 だからって攻撃力0のポンコツとバッタに完封される私じゃ守れないって話はしたろ?だから最低限生活基盤は整えてあげるからそこからは頑張りな。


『…………』


 お嬢ちゃん?


『………知らない!』


 ああもう…拗ねちまいやがった、若い子はわからんねまったく。


「とは言え……強くなるってどの程度に?」


 そこがネックだよねえ、その野郎がどこにいるかもわかんないし…何となくゲームっぽいからラスボス倒したらぁ!の感覚でいるけど。


「げーむ…らすぼす?まあそれはともかく…神の名を冠する者なら一応は心当たりが…と言ってもコノハ殿の記憶でですが」


「ほほう?それはどんな?」


「ええと……二人いまして、取り敢えずここからかなり離れた大陸で『破壊神』と呼ばれている男と…こっちは信仰の上でですが『飢餓神ヒナホオズキ』と呼ばれる邪神です」


 破壊神ってのはまああれかな…この間見た鹿みたいな感じのやつかな。


 ……ちょっと待て邪神?信仰されてんのに?


「ええ、どうやら……村単位で邪神を信仰している集落が直ぐ側の大陸…コノハ殿の故郷にあるそうですね」


 何それ怖い、一族総カルト?


 故郷って言うとあれか、例のヒノクニとかいう推定日本…か、それを模して創られたステージ。


「ですが…コノハ殿の記憶の中でもかなり味が薄くてこれ以上はわかりませんね、しかもかなり苦味が強いことから尋常じゃなく怖い思い出もしたのでしょうかね」


 気になってはいたけどお前記憶を味で判断してるの?


「ええ、脳を齧り取って穴を開けてそこに住んでますからね、記憶を司ってる部分はまず最初に食べて己でトレースします…記憶の味は副産物ですかね」


 怖!?詳しく説明されると予想してた以上に怖!?


「口から体内に入るのも怖いでしょうに…」


「生々しさがちげえんだよ…字面の」


「お待たせしまし…ふふ、仲がよろしいのですねお二人は」


 うわっちゃぁお!?帰ってきたのか…


「お、お帰りなさい…えと…聞こえちゃいました?」


「ふふ、いいんですよ子供らしくしていても」


「いえ……そういうわけには」


「年相応の振る舞いをするのも礼儀の内ではあるのですよ、特に君ほど幼ければね」


「そう…なの?」


「ええ、上品であることが悪いわけではありませんがね」


「……成程」


「さて、そろそろ御暇いたしましょうか」


「おや、もうですか?いえまあ突然呼び出してしまったので無理もありませんね…またいつでも来てください、冒険の話なども聞きたいので」


「ええ、必ず…では失礼します」


「はい、キーラ!お帰りだ!」


「もうですか!?は、はーいただいま!」


 一時間もいなかったからね、まあでも…正直長居する内容でも無かったし。


「こちらをお忘れなく…それではまたお会いしましょう」


「あ、はい…っと…重」


 金貨袋だもんな、持ったこと無かったけどめっちゃ重…これ80枚軽い気持ちで受け取ったら盛大に腰やるとこだったな。


 お嬢ちゃんの若い肉体なら大丈夫か…?そもそも上がらなそうだけど。




 帰りの豚車でもお嬢ちゃんは一言も発しなかった、いや元々声は出してないんだけどさ。


 あの後送って貰ってからは街で軽く買い物をした、まあ…ろくに食い物も売ってないけど取り敢えず良さそうなものをいくつかと、あとは少し値の張る酒をね。


 コノハさんの好みらしいけどこれ…多分日本酒ってか獨酒(どぶろく)の類いなのかな?宿の親父さんには世話になったから皆でお祝いしようってことでね。


 結構金入ったんだから贅沢してもいいだろう!私等頑張った!!


「宿代の滞納分と儂等の路銀を考えるとそこまで贅沢もしてられませんがね」


「だから今夜だけさ!」


 結局行き先は決めてないけどね、近さで言えばコノハさんの地元だけど正直カルト塗れのところに近付きたくないよね。


 土着信仰に関わって酷い目に合うやつ何て山程見てきたさ、インターネットで。


 とは言え、破壊神(なにがし)もぶっちゃけ遠いらしい、海を越える方法で行くならかなりの距離が短縮できるけど…見た感じの文明力でそこまで凝ったものがあるとも思えない。


 いや……?あるのかな、スキルや魔法があるなら何なら現代より素早く移動できたりしないかな?ほらあの…洞窟とか建物で使うと頭をぶつける類の移動魔法とかさ。


「……コノハさんってどうやってこっちに来たの?聞く限りじゃ少し離れてる別の島みたいなこと言ってたけど」


「ええと……昔…誰かに連れられて…?」


 誘拐か?


「いや、多分違うと思います…これは恐らく純粋に記憶が無いのでしょうね、何分幼い頃ですし」


「んー、船移動とかになるかなあ…」


「コノハ殿は手作りの船で一番近くの大陸に移動しようとして盛大に転覆した過去があるようですね」


 うん、コノハ殿もしかして阿呆か?ブレ子に取り憑かれた時もなんなら遭難してたっぽいし。


「阿呆とはなんですか人の宿主に……」


「はぁ…まあいいや、飯もある程度買ったしそろそろ宿戻ろうよ」


「ええ、そうですね…凱旋と行きましょう!」



 最早慣れ親しんだ扉を開けると宿屋に入ってすぐのカウンターには厳ついスキンヘッドが鎮座していた、宝玉みたいな輝き方してるな。


「ただいま戻りましたー」


「おう、帰ったか」


「お帰りなさい!ミリアちゃんにコノハさん!」


 野太く低い声に続いて可愛らしい声と共にお嬢さんが飛び出してくる、心が洗われる…


「ふっふっふ、もう儂等はタダ飯食らいは卒業ですよ…金が入りましたからな」


「やっとか馬鹿野郎共が!」


「その説は申し訳ない!!」


 いや…本当にごめんね……


「あの…お酒も食べ物も買ってきたから…今までの御礼も兼ねて一緒に…」


「いい心掛けじゃねえか、だが宿代はびた一文まけねえからな」


「ええそれは勿論、遠慮なく食べて飲んで受け取ってくださいな」


「おう、だがその前にな……」


 奥から親父、お嬢さんに続いてもう一つ人影が…デカくない?



「……お・か・え・り」

 

 見知った筈の建物内に、恐らく未来永劫見慣れることの無い筋肉(オカマ)がいた。

やたらと人気の高い未だ名前すら出ていないオネエ様、降臨。

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