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人をイメージで判断するべきではない

「到着いたしました、お足元お気をつけください」


 あら人が神への反逆を誓ってたら着いたみたいだ、いやそもそも(鹿)なら前に倒したから今更ではあるけどね。


 いや、倒したのはムカデか…どう言うわけか私にも神倒した奴への称号渡されちゃったけど。


「わあ…立派な建物」


 嘘だ、思ってたより数倍はしょぼい。


 爵位を持っているくらいだからもっとこう、大豪邸かと思ったけど大したことはなく、まあ現代日本で言えばかなりのものかも知れないが土地が安い地域ならこれくらいはあるだろうなってレベルだ。


「領主様は中でお待ちです、どうぞお入りください」


 厚みのありそうな木製の扉を押すと意外なことに簡単に開いた、結構ちゃんと油とか刺してんのかね。


 そして玄関の扉を開けたそこには……豪快そうな髭のオッサンかでっぷり太った卑しそうなオークが出てくると思ったら予想外にも血圧の低そうな青年だった。


 細く白い髪の毛を後ろで一つ結びにし、服装は……なんだろう、高そうってことしかわからないフリフリのついたシャツ系?わからんわ、即座に解説できる方がおかしいだろこんなもん。


『まず…誰に向けての解説なの…?』


 おそらくこれを見ている奴等だよ、反逆はするけど取り敢えず俯瞰させとくならわかりやすい方がいいかなって


『や、やさしい…のかな?』


「ようこそ我が館へ…王都エンシスハイム辺境伯のフィルメロ・ノックス三世と申します…すみません、領主になったのも最近なことで客人も少ないものですからろくに挨拶も…」


 出だしから謝り始めたぞこの兄ちゃん、大丈夫かおい。


「初めまして…この度はお招きいただき光栄でございます…最近この街に来ました、ミリアと申します」


「お……これは…お若いのにしっかりしてらっしゃる…」


 そうお若くも無いからね、不自然だったか?


「同じくコノハと申します……して、儂等のような流れ者にどのようなご要件で?」


「…とりあえず立ち話もなんですから、こちらへどうぞ……ああ、お茶を用意させます」


「お構いなく」


 結構飲んだしな。


 案内された先は客室か、絵画が飾られているけど例によってわからない、異世界の芸術とかわかるわけがない。


 まあ元の世界のもわからないけども。


「さて……単刀直入に申し上げます、この度呼び出した理由は…お二人が捕まえた男の事です」


 おん、だろうなとは思ってたよ。


「あの男が何か…?まさか儂等が仲間だとでも吐きましたか?」


「まさか、それならばこんな目の前に連れてきたりしませんよ…」


 この部屋に一人の護衛すらいないのは流石に不用心な気はする、人柄なのかはたまたシンプルに外の警護に出払ってるのか…


 どれにしろ人手不足は確かか。


「では…いったい何を?」


「あの男は……我が国の王都で指名手配をかけられておりまして、その褒賞金を渡すために足を運んでいただいた次第になっております」


 うおっしゃぁぁぁぁぁ!!!金ぇ!!


『……こうはなるまい』


「……成程、おいくらくらいですか?」


「その額…大金貨80枚」


 いまいちピンとこない、いくら?


『人間の通貨は…』


〔父さん…聞こえますか父さん……〕


 この声はマイドゥーター!お前の声コノハさんと本体が同時に響いてるみたいでめちゃくちゃ聞き取りにくいんだけど。


〔………いいから、あの…これは…どうしましょう…こんな大金……〕


 お前すげえ涼しい顔してるくせにテンパってるな?貰っとこうぜありがたく。


〔喧しいわ!……いやあの、こんな大金持ち歩くの怖いですよ、あの宿くらいなら余裕で買い取れますよこれ〕


 え、そんなに?5000万円くらいか?


〔ごせんまんえん…?〕


 いやこっちの話。


「あの…大丈夫ですか?」


「だぱば、大丈夫ですが…?」


「驚くのも無理はありませんね……王都から直々の褒賞ですから」


 王都がそんな即で報酬出すレベルの悪党か……何だか私達凄いことしちゃったみたいね。


〔ええ……〕


 でもさ、正直……色んな人に助けられた上での話だよね……


『……貰わないの?』


 貰うよ、でも…全部はちょっと欲張りすぎだろ?


 この兄ちゃんだって、ウーゴさんが言うには頑張ってるけど貧困層を救うことができないのは見てわかるし……何よりこんなガリガリになってまで自分の分の富を分けてんのかなって思うとな?


〔……お人好しですね、我々は人類ですら無いというのに〕


 虫けらにだってありがとうって思う気持ちはあるんだよ。


 なあブレ子にお嬢ちゃん、いいだろ?


〔…父さんが決めたなら、儂は構いませんよ〕


『…うん』


 よし。


「えと…20枚だけいただきます、残りは……貧困街や街の人のために使ってください…」


「……え…」


「残りは差し上げる、と言っているのですよ…その代わり領土のために役立ててください」


「よ、よろしいのですか…!?大金ですよ!?」


 意外と声でかいな兄ちゃん。


「旅をするには儂等にゃ財布が重すぎます」


 あ、ちょっと格好つけたろお前。


〔うるさいですよさっきから!!〕


「あ…ありがとうございます…何と御礼を言ったらいいのか……」


〔これで…これで皆を飢えさせないでいられる…〕


 こんな真面目に領土の事考えてるならこれくらいぱーっとくれてやっても気分が良いよな、恩も売れるし?


『素直に良い人でいればいいのに…』


 うるせいやい、いいだろ別に。


「あの…御礼と言ってはとても足りないのですが、ほんの気持ちばかりに我が領土の特産品を持って帰ってはいただけますか?」


〔全然売れなくて余ってるし…〕


 聞かなかった事にしとこう、美味しかったから。


「ありがとうございます、豚車で飲んだの凄く美味しかったから」


「気に入っていただけたようで何よりです…キーラ、土産用の茶葉を」


「今手が離せないのでご自分でお願いします!」


「あー、すみません…人手不足でして…少々席を外しますね」


 ああ、あの人キーラって言うんだ…てか二人しかいないのここ?


「あの…失礼ですが他の使用人等は…?」


「ええと……唯一いた私の先代が子供の頃から仕えていたメイドの一人が最近腰を痛めて暇を…」


「……成程」


「お恥ずかしい限りです…ですが、私も同じ人間ですから、できることは自分でやらねば」


 辺境伯って聞こえがいいけどめちゃくちゃストレスも多い問題解決係だろうに…大変だな。


 ……ふむ。


『……何か企んでる?』


 ちょっとね、まあ色々。


「それでは少し失礼します」




「……ウーゴさんたちから頑張ってるとは聞いてたけど、確かに良い奴そうだね」


「ええ、悪政を敷くなどと疑っていた己が恥ずかしいです」


「ここなら……この子、ミリアを任せられるかな」



『………え…?』

フィルメロ君は美青年ってよりはげっそりやつれてる感じ、多分40くらいでかさっとしてきたら化けるタイプのイケメン

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