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情けをかけて情無い結末

「俺は……ただの盗人(シーフ)だよ」


「盗人?」


 何それ?盗むのに特化したスキル的なあれ?


「盗人などと…あたかも職業のように言ってますが所詮はダンジョン攻略ができないから他所で盗みを働く犯罪者でしょうに」


「うるせえ!てめぇに何がわかる!」


「……その女の子の体は?そう言うスキル?」


「あ?……はっ、亜人のくせに知ってんのか」


 手が滑った!盛大に!盛大に滑った!剣先を用いて(はらわた)をシェイク!


『ハリガネさん…いいから、私は気にしてないから…』


「ぐぉぁあっが!!?やべど…死ぬ゛…!」


「ミリア、その辺で…恐怖や苦痛の感覚で死ぬこともありえます」


「……気分悪くなってきた、俺は外にいるぜ」


 すまんねウーゴさん、急に。


 いや、マジでごめんね?嫁さんとかいるんだか知らないけど傍から見たらよってたかって子供を拷問する鬼畜だもん。


 百年の恋も冷めるだろうし多分その先百年は独居房だ。


 さて……『探知LV.1』起動!え?何で急にって?ウーゴさんが近付いてくるのに気付くためだよ。


「……これくらい離れてくれれば声は聞こえねえか…なあ、これからいくつか質問がしてぇ…って言っても本当の事吐くとは思えないからな」


「な、は?おいお前もしかして…」


 今更気づいたか馬鹿め。


「ああ、多分似たようなスキルだよ…それで、どこから削がれたいかね?」


 顔かい?腕かい?それともちょっと言えない場所かい!?


『言えない場所…?』


 はっはっは!言えねえって言ってんだろ、聞くな。


「へっ、ならてめえだって俺と同じじゃねえか、何の意義があって俺を罰するってんだよ!」


「誰が罰するって言ったよ!ただ私は聞きたいだけだ!」


「お前は何の寄生虫だ!!」



「……あ?」


「いやほら、だから……私はワーム型だしこっちは脳型…お前も何か寄生虫だろう?」


「……いや?」


「そんな馬鹿な」


「いやそんな馬鹿なって……意味がわからねえんだよ」


「ブレ子、作戦会議」


「は、はい…」



「……どういうこと?」


「いや…どうと言われましても…儂等とはまた違うのでは?」


 マジでー?体乗っ取れるスキルなんてそんなあるかあ?


「……と言うか父さん、解析ありますよね?わざわざ尋問する理由は何ですか…?」


 理由なんてお前そんな……いやうん、あったね。


『拡張解析LV.10』!


種族名 霊長人類種(ヒューマン)


個体名 ラッサス


    LV. 8 HP 540/620  MP  110/120 SP 312/320




  アクティブスキル


 『強奪(アサルトシーフ)LV.2』『鍵開けLV.5』『拡張解析LV.4 『ステイタスシーフLV.2』「影写しLV.8」



  パッシブスキル  『恐怖耐性LV.1』


  

  称号 『同族殺し』

 

  状態  



「おいやめろ!見んじゃねえ!」


「いや…弱…」


「うるせえ!!」


 ステータスはともかくパッシブすらろくに無いんじゃあ……いやステータスも私に負けてるのか。


「確かに寄生スキルも無ければ種族は人っぽいね」


「側だけってのはどれかしらのスキルで見た目を似せてるのかね?」


 貌無き者と違ってダメージはちゃんとあるっぽいし上からそう見えるようにしてるフィルターみたいなのを被せてるだけか……うーん。


「ブレ子、ちょっとこの子の顔思いっきり蹴り飛ばしてみて?」


「はぁ!?」


「え…は、はい!」


 振り抜かれた革の靴、飛び散る前歯と無数の血の霧……いいキックだ、世界を狙える。


「やっぱりだね、子供の歯じゃないよこれ」


 子供にしてはデカいしエナ…メル?だか何だかが溶けて黄色くなっていやがる、つまり内部構造はそのままか、もしくはそれっぽく見せてるだけの可能性もあるね。


 お、気絶したか……ってうわぁ、見た目すげえ変わった!?


 何かこう…猿科に限りなく近くした小さいオッサン的な、新種のUMAとしてエリア51に着払いしてやりたくなる見た目だな。


「……どういうこと?」


「本人がダメージを受けて気絶したのでスキルが解けたのでは?」


「流石に痛いと思った(・・・)だけだと駄目だったのかね?」


 うーん……まあ、取り敢えずこの状態なら突き出せるし衛兵のとこまで連れてっちゃうか?


『待って、本物の子は?』


 まあ、こいつの口ぶりから察するに売り飛ばされて……いや…うん、どうだろうな。


『いいよ…気を使わないで……わかるから』


 子供が理解するべき事じゃねえんだけどなー……すまんね。


『子供扱いはやめてよ、全部覚悟して出てきたんだ』


 ……へいへいほー。



「父さん、もう助けるのが無理でも取り敢えず買った奴(・・・・)を探すことはできますしもう少し話を聞いては?」


 ……そだね、せめて弔ってやりたい…もしかしたらこの子の親だって死んだことはわかってたから、子供を探してくれなんて理由で罠を張ったのかも知れない。


「どうやって起こそうか?」


 水ぶっかけてみるか?


「それこそ大混夜叉(これ)の出番では?」


 返事もする間もなくドスドスと……


「がぁぁっ!!」


 ブレ子、怖いよ……散々やった私が言うことでは無いがせめて刺す前に少しの躊躇いを見せてくれよ。


「……こんなゲス、許してはおけないので」


 わかる、でも平和な国で生きていた身としてはある程度怒りも冷めてくると自分のやったことに混乱を覚えてしまう、そんな人種だったからお父さん。


「……おはよ、もう一発いっとく?どうする?」


「いや…もう勘弁してくれ…頼む、何でも話す」


 脆いな、仕方ねえか。


「でも捕まるってわかった奴ってどんな嘘でも吐くからできることならもうちょっと折っておきたいってのが……うちの娘の見解なんだよね」


「捕まった方がましだ!本当に嘘は吐かねえ!」


 どうする?


「あの姿の主は…どうした?」


「………いねえ…いや、もう…食われちまってる… 」


「……だろうな」


「でも俺だって生きるために「もう何も喋るな……」


 さっきは少しの躊躇いも見せない無機質な狂気……今は子供を売り飛ばした事に対する怒り…か。


 あれかね、コノハさんの体の残留思念みたいなのが関係してるのかね?


「……誰に…誰に売った?」


「…そいつは…」


「早く答えろ、さっきも言ったが儂等は虫だ、気が長いと思うなよ」


「わかった言う!だが…その後は頼むから俺を衛兵まで届けてくれ…殺されちまう」


「黙れ……鬼畜が生を望むな」




「その……に、森の西の方にいるコボルト族のギャングだ…えっと…『病狗(セタ・アラカ)』って名前で…ギャングって言ってもコボルト族は今や殆ど残ってやしねえから一族全部みたいなもんだ…気が済んだら早く俺を捕まえてくれ!彼奴等は、裏切りを絶対に許さねえ!」


コボルト……って言うと犬人間か。


「詳しく聞かせろ、知ってるだけ全部だ」


  



 その後はすげえ怯えようだった…えーっと…何だっけ?


「ラッサスです父さん」


 そう、そのラッサスの錯乱が酷かったからウーゴさんに口利きしてもらって衛兵に差し出してみた。


 一先ずこれで依頼は完了、衛兵やギルドからは追って連絡が来るとは言ってたけどまあ…依頼主もグルだったから金も入らなかった。


 


「……ひもじいね」


「……すみません…父さん」


「言うな……仕方ないだろう、娘を失ってその上共犯の疑いもかけられてるご夫婦から金も搾り取るのは無理だよ…」


「ですが……ですが…!」


 うるせぇ!口よりまず食い物探せ!!


「は、はい!」


 うん、結局草むらで虫探しだよ……最近は虫すら食べるのに違和感が無くなってきた自分に頭痛がするよね。




 明日…明日は必ず肉とか食ってやるからな……必ず!

今回の件で1番迷惑被ったのは多分ウーゴさん

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