机の下の戦争
やりやがったこいつ…阿呆か?阿呆なのか私の娘は。
ああ、阿呆だったわ…食料と虫の区別がつかない阿呆だったわ。
いやな、正直これが一番手っ取り早いだろうし正解かもしれないよ?
ただこっちに証拠が無い上に根拠も無い以上それは犯人を追い詰めたんじゃなくて勘で被害者を犯人に仕立て上げただけになってしまうよ?
はっはっは!大悪党だな私達は!馬鹿野郎がよ。
「……酷い…何故そんな事を言われなければならないんですか!」
はい、ごもっともでございます。
「何故、それは貴女が一番よく知っているのではありせんか?」
お前マジで大概にしとけよ?何の勝算と自信なんだそれは。
「……全部、バレてるんですか?」
え?
「ええ…儂とてこんなことしたくはないのです…説明、していただけますね…?」
「……はい」
え?
「私は…私は嘘をつきました……」
おい、 嘘だろマジか。
え…そんな…ことある?
私の昨夜の頑張りは?
あの喧しい虫達と心を通じ合わせるのすげえ大変だったんだけど?
こんなんで終わりなの?
そっかー……
納得いかねえ…私の初仕事が…
「娘は…行方不明ではありません……」
「森に薪を取りに行ったのも…全て嘘なんです」
そこから!?じゃあここまでのやり取りはいったい何だったと言うの!?
結構頑張ったよ!?野山を駆け回ったし大量に服にゴキブリ纏わせたよ!?
心が!折れる!!
……ハァ…ハァ……落ち着いたわ。
『発作なの…?』
「何か理由があったのですね?話してください、何も咎めに来たのでは無いのですから」
「そう…それは……生き残るために仕方なくて」
「私も精一杯やったんです、あの子にこんな事しちゃ駄目と…沢山」
「でも家族に暴力を振るうようになってしまってからは手がつけられなくて…」
「ああ…ごめんなさい…ごめんなさい……」
「いいんです、ちゃんと話さえしてくれれば…」
「前は良い子だったんです…家族思いで」
「こんな……騙すようなことしてしまって」
……ん?
〔兄貴!後ろ後ろ!〕
後ろ?あっ………
ガンッという大きく鈍く私の脳と頭蓋を揺らす音と衝撃が一瞬だけ足の指先まで電気を通す、そして転倒。
あー……油断したな、体動…かねぇ…
「父さん!」
「動くんじゃねえ、この子……父さん?まあいいや、動いたらこのガキを殺す」
「貴様…何者だ!」
「あんたらが探してたこの家の娘だよ…とはいえガワだけだけどな」
「ガワだけ……まさか寄生か」
「あ゛ぁ!?質問できる立場か?それから…持ってるかは知らねえが『拡張解析』を向けてもこのガキ殺るぜ?」
「わかったらさっさと腰のソイツ降ろせや…てめえが抜くよりガキの頭が爆ぜる方が速いぜ?」
「……わかった」
「ああ……ごめんなさい…」
「てめぇはいつまでメソメソ泣いていやがんだよババア!さっさとそいつの武器を取れ!」
「わかった、わかったから…」
「……外道が」
「はっ、迷子の子供を助けてあげないとーってか?そのご立派な正義感で痛い目に遭っちまったなぁ?」
「腕に自信があったか知らねえがそんな大層なもん引っ提げても人質取られたらガキの手当もできやしねえ…てめえの言う外道に負けた気分は最高か?」
「貴様……!」
うん…さてと、状況を整理しよう。
やあ!私の意識が飛んだとでも思ったかい?気絶したのはお嬢ちゃんの方で私は全くの無傷ってもんさ!!
とはいえ状況は最悪だ、なんてったってお嬢ちゃんは頭部へのダメージで昏倒……ていうか生きてるよね?解析で見てる限りはあんまり問題は無さそうだけど。
うーん、しかし目が開いてないからか外の様子が全くわからん…音は聞こえんだけど口汚い高めの女の子の声で怒鳴ってるのが聞こえくらいだ。
『……いったぁ…ぐっ』
あ、良かった生きてる。
『……包帯…ぐるぐる巻で良かった』
まあ無いよりは多少のクッションになってくれたかね、まあ結果論だけど重畳。
『これ……痛みは私に来るの…?』
そうだよ?だって私の体は一切傷付いて無いもの。
『ずるい…』
大人はズルい生き物さ、ハリガネムシなら余計にね。
『それで……どうするの?』
んー、ぶっちゃけ体は動く。
ただこの状態だとむしろ気絶しておいた方が良い気がするんだよね。
『……何で?』
今立ち上がったら多分普通に殺される、ブレ子も聞く限りだと大混夜叉渡しちゃったみたいだし?
『……じゃあどうするの?』
まあ幸いにも……部下はいる。
〔兄貴、大丈夫ですか兄貴〕
うつ伏せで倒れたのがラッキーだったね、これなら少しくらい小声で話しても問題は無かろう。
あとブレ子が貧乏ゆすりしてるし声でバレる心配は無さげ。
「……全員集められるか?」
〔ええ、お安い御用で…でも俺が言うのもなんですが兄弟達は恐ろしく弱いですぜ?〕
「……いいんだよ、攻撃はしなくていい…ただ張り付いて体の上を走り回らせろ」
〔何の意味があるのかはわかりやせんが……タイミングは?〕
「こっちで言うからいいよ、待機してろ」
こいつ等は裏側こそGの者の足そのものだけど表から見れば普通に枯れ葉とか落ち葉に見えるからそこまで精神的な苦痛は少ない。
だが、それが体を這い回ったら?
うん、さっきまでやってたわけだけど覚悟した上でゴリゴリとSAN値が削られたとも……
『私の体が…』
自然と共に生きる種族だし慣れっこだろう?
『そんなわけ無いでしょ……』
大丈夫大丈夫、特に根拠も無いけど大丈夫って言い張るのは得意さ。
はて、私の前世は政治家だったか?
『…政治家?』
んー、国王様とか大臣とか…君らで言う所の族長みたいな。
『絶対無いね』
お?喧嘩か?
と言うか君元気ね、平気?
『元々意識がぼやけてるような感じだから…でもすっごく痛いよ』
うーん、終わったら冷やさねえと。
まあ、それよりまずは切り抜けないとだね……何て話も聞こえてるからな、ブレ子には。
困った事に向こうからは聞こえない…特性の問題らしいけど普通に不便だよねぇ。
ふむ……よし、今からちょっとさくっと作戦考えるから話長引かせてくれ娘よ。
「……死ぬ前に、話がしたい」
「ぁあ?」
そうそうそんな感じで頼むよ。
投稿遅れてしまい本当に申し訳ございません。
言い訳をするならばスマホが充電できなくなり新しいのに乗り換えるまでに色々手間取ったという次第でございます、今週からまた誠心誠意励ませていただきますので何卒応援よろしくおねがいします。




