賑やかな仲間たち(兼食用)
もう朝か……くっそ全然眠れてねえ。
まあいい…さて、いざ行かん。
「気合い入ってますねお父さん」
「下手すると死ぬからね、気合いの入り方が違う」
「おはようございます、昨晩はどこか行かれてたんですか?」
扉をノックする音と娘さんが同じくらいのタイミングで入ってくる、何でノックの後一呼吸待たないんだ?思春期の息子なら家族会議に発展するぞ?
「ちょっと…仕事で必要なものを探してきました…」
と言っても殆どはうちの食いしん坊のための食事探しだけどな。
「あらあら、もしかしてあまり寝られてないんですか?少しくらい寝ないと力が出ませんよ?」
「儂は大丈夫です、先ほど朝食も食べて元気百倍」
どうだ!とも言いたげに胸を張るんじゃないよ、あのGは諦めさせたとしても目に付いた食えるものはゲテモノだろうが片っ端から回収していく様は正直恐怖すら覚えたわ。
「これくらいならまだ…2日とか3日とかになってくるとつらいデス…」
お嬢ちゃんの種族の特性に感謝だね、ちょっとラジオ体操のために早起きした夏休みくらいの眠気だ。
つまりそこそこ眠い、二度寝ルートさ。
「子供なのにそんな……大変ね」
まあねー、しかし頑張るさ。
「頑張りマス…!」
「うん、気をつけてね!」
よし、朝っぱらから若い娘さんにエール頂いてしまったのでハリガネさんは頑張って働くともさ!
『…頑張れ?』
君のはいらん。
「頑張りましょう!」
もっといらん。
「おいどういう事だおい」
「……へ?」
「ああいえ、何でもありませんよ」
よし、そんじゃあ早いところ出発じゃあい!
「……洗い残すんじゃねえぞ」
「はい!」
ああ、皿は洗ってからだとも。
「覚悟は?」
「おう、行くぞ」
先程の柔らかい幼女顔から一転して覚悟を決めた漢の顔さ、何せ下手すると娘を売り飛ばした犯罪者の家に潜入だからね。
やれる、私ならやれる。
今こそ目覚めろ御都合ハリガネチート!
「……何ですそれ?」
「気にするんじゃない!」
ほら、さっさとノックして呼び出せ。
「……ごめんください、昨日来た者です」
「昨日の今日ですみません、少々確認したいことが…」
「いえ…む、娘の事で何かわかったのですか…?」
熱々のお茶を持って私達の前にティーセットを起きながら震えるような声で枯れ木みたいな女性が言葉を吐く、さて…何を隠している?
「いいえ何にも、目撃情報もその場の痕跡も、事件の概要すらもわかりませんでした」
「そう……ですか…でしたら何故?」
「…………それは…」
「……ぅ熱!…あ…す、すみません」
飲もうとしたホットなお茶をうっかり腕に被る、くっそ熱いけどこのくらい大した事じゃないさ。
『……私の手が…』
ごめんて、後でお肌のケアしとくから。
「すぐに冷やさないと……あちらの部屋に水瓶が…どうぞ使ってください」
「あ、ありがとう…ございマス」
この部屋に扉は2つ、奥に続く1つと外から入る1つ…案内されるがままに奥の部屋に向かわせてもらおう。
……視線は無し、行けるかな。
「ほうら出てこい…お前たち…任せたよ」
貰ったひらひらの御洋服の裏側に張り付けていた大量の木葉虫、まさかここで貰ったものが役立つとはな。
〔食われる?〕〔食われない〕〔…逃げたい〕〔何するんだっけ?〕〔ママ…ママ?〕〔やるならやらねば…〕〔俺はやるぜ…やるぜ…〕
……喧しいなおい。
「ほらほら、君達にはここで何か隠されている物とかがあれば探してくるんだよ…女の子でもいい」
〔…女の子?〕〔女の子とは〕〔俺女の子〕〔どっちにでもなれる〕〔俺はやるぜ…〕
「あー、私みたいな…そうそうこういう手と足があってな…一匹ずつ喋ってくんねえかな」
「とにかく頼むよ……君らのスキルを使ってくれ、報酬はたらふく腐肉食わせてやるから……それからこれ以上仲間を食わないでいてやる」
〔〔〔〔FOOOO!!〕〕〕〕
やべえ本当に煩え、よく耐えられるなお嬢ちゃん。
『慣れるよ、その内』
『……て言うか本当にこの子達で平気?』
持ち込めるのが此奴等くらいだったんだよ…仕方ねえだろ?それにスキルが馬鹿にならん、そもそも他にいい案も浮かばなかったしね。
「ほら、散れ散れ行ってこい」
『……会話が出来るだけで、所詮は虫だよ?』
ゴキブリは頭良いんだよ、何より…『意識同調』は確かに使えるスキルだ。
内容としては…あー、アナウンスさん
『アクティブスキル『意識同調』、意識を同種族間で共有するスキル、見聞きした物事を少ない容量の中共有することでデータを保持する事が可能』
そう、此奴らは意識を同調できる…つまり監視ドローン兼携帯電話ってところかな。
そんで私の所謂端末になる奴は…〔へっへっへ、任せてくださいよ兄貴〕
こいつ、最初に捕まえた木葉虫が昨日何か色々食料探ししながら仲間探してたらちょっとずつ経験値入ってたみたいで進化したらしい『枯葉虫』。
所謂統率者だね、あの鹿みたいな感じで自分の種族を纏めて動かすちょっと上の種族、あくまで王様って程では無いから少し頭良くなったくらいらしいけど。
〔あんたの中身も俺等と同じなんだろう?〕
ゴキブリと一緒にすんじゃねえよ、私はハリガネ虫だ。
……あんま変わんないかね。
さて、ちょっとだけ手を冷やさないと本当に跡になってしまうね……そうなったら戻った後私のうねうねロングボディは井戸の中にでも放り込まれるか……下手すると此奴らの餌にされる。
〔へへ、美味いんですかねえ?〕
……お前を娘の飯にしてやってもいいんだけど?
〔はい、ごめんなさい〕
よろしい、じゃあ戻るぞ。
「…も、戻り…ました」
建て付けの悪い扉を開けたらブレ子が話を長引かせている筈だ……
「不可解な点が多すぎるんですよ、今回の事件は…」
「どうして、遅い時間に森に薪を?ストーブが必要な時期には思えません…それに何故それを…誰も見ていないのですか?」
「不躾な質問であることは承知しております、ですが…ある程度の確信を持って話しているのです」
「貴女は儂等に何を隠している?」
ブレ子ぉ!?展開早いよブレ子ぉ!?誰が速攻で確信突けって言ったよブレ子ぉ!!!
この馬鹿!ポンコツ侍!お前これで間違ってましたじゃ洒落になんねえぞおい!
「…………」
……あ、何か隠し事ある顔してはる。
喧しいミニ○ンズみたいに思ってください、見た目は葉っぱっぽいゴキブリです