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一寸の虫にも五分の魂、まあそれはそれとして

 次私に未調理のゴキブリ食わせようとしたら、道連れにしてでもお前を殺す。


「む、それが娘に言う言葉ですか」


 もはや娘とも思わぬ!って言われないだけありがたいと思えよ。


『生は…流石に危ない…あの虫は頭落としてもしばらくは動く』


「だよねえ!そうだよねえ!」


 いや違えんだよ、調理済みでも私は嫌だよ。


「おかしいですね…この身体(コノハ殿)はこのような物を多く食していたようなのですが…そりゃ儂とて味覚の好みで言うならば今朝のスープのようなちゃんと美味しいものですよ」


 あ、これコノハさんの味覚がいかれてるだけなのかゲテモノマニアかのどっちかだなさては。


「なあ、ブレ子さっきお前の感じた違和感ってどんな?」


「おや、疑うのは良くないのでは?」


「まあな、子供を失って錯乱してる可能性も高い…とは言え違和感は共有してすり合わせねえと気付けないこともある」


『急に賢そうなムーヴしだしても…手遅れ』


 お前の身体返す前にさっきのゴキブリ腹一杯食べてやろうかな。


「いえその…確かに服や肌は確かにあまり状態は良くないのですが…周囲に比べると随分とその…普通だなと」


「何言ってんのお前」


「素で言いましたね…?」


「だってお父さん、儂等だってここ最近でわかりやすく明確に頬がこけて来ています」


 せやな、宿屋の親父だってゴリゴリのマッチョだけど皮膚の弛みを見るに随分痩せてあれだろうし…娘さんはかなり首の骨が浮いてきてた。


「……なのにさっきの婦人はあまりにも普通なんです」


「……前太ってたんじゃない?痩せてあれとか」


「お父さんはあの婦人を見て何も思わなかったのですか?」


「あいにくながら包帯のせいであんまり見えてない」


「使えないな……」


 おうやんのかこのガキャ。


「……んじゃあ何さ、君はあの母親が子供を捨てて食い扶持を増やしたっての?」


「そうは言ってませんが…子供がそんなことになったら食事など喉を通らないでしょう」


 そういわれてもなぁ……


「んー……やけ食いとか?」


「……じゃあ仮に私が急にいなくなってやけ食いなんて…できそうだなぁ、この()なら…」


 人書いて虫と読ませるんじゃないよ、私だって君が急に…いなくなっても大丈夫そうだからブレ子のも食っちゃえってなる未来が浮かんだな、不思議。


「薄情者!!」


「いやぁ、だって実際お前強いし…例え私が残ってたとてお前が敵わない相手とか無理だからね…?」


「無理だとも助けようとか心配とかは無いんですか!?」


「我が身可愛さで他人の胃袋やらを転々としている奴が命張って助けに来ると思うのかお前は!」


「何で儂が怒られるんだ!?」


 不思議だね、異世界だからかな?


「斬りたい…どうせ怪我などしないのだからこの際斬ってしまいたい……」


「家庭内暴力はやめようね、この体はちゃんと返すんだから……て言うか私達の日銭集めはどこまでやるの?」


「取り敢えず旅の目的も無いですからね……ミリアさんの生活基盤が整うだけの金額と儂等の路銀が手に入ればすぐにでも返して差し上げたいところです」


 一応私のもう一人の子供と合流したりとかはしたいところだ、あとこの町にいるとどうにもあのオカマがヤバい。


「……て言うかもう一人の背骨はどこに行ったの?」


「さあ……産まれた時期も少し違うようですし」


 そもそも別の水辺で産んだ可能性もあるからね、上手く合流できれば姉か兄か妹か弟ができるかもしれないぞ。


「何にもわからない…背骨しかわからない…」


「ちなみに名前は骨子とかボン子とかですか?」


「…女の子ならエリシア、男の子ならジークかな…」


「納得が!いかない!!」


 パパからの贈り物だよ、受け入れようね。


「さてと……ぼちぼち探したけど流石に何にも見つからないね」


「10日前でどこで消えたとかの情報もありませんからね……目撃者を探そうにもこんな場所じゃ…昼間でも薄暗いですし」


 仕方ない、一回戻って昼飯でも…いや金が無いか。


 昼飯は諦めるからゴキブリの裏側をこっちに向けるんじゃない!!


「ほらほら…美味しいですよ…ふふ」


「それはそうとこれからどうするか……町で聞き込みとかしてみる?十日前見かけなかったかとかそう言う部分を」


「んー……そうですね、手がかり無いですし」



 ん……いや待てよ?


 へいそこのゴキブリ、お話しようぜ。


「こんにちは」


〔食わないで……食わないで……〕


「いやあの…」


〔離してくれ……頼むから…〕


「話聞け、食わねえから話聞け」


〔食わない…食わない…〕


〔…………食わないの?〕


「食わないよ気持ち悪い」


〔食えよ……〕


「食われたいの…?」


 昆虫は情緒があれになる呪いでもあるのか…?


「何を話しているか何もわからないのですが…?」


「情緒が不安定な虫と話してるんだよ、ちょっと待ってろ」


「おや、自己紹介ですか?」


 お前の今日の宿代で飯食ってやろうかなぁ!



「そんで、聞きたいことがあるんだが」


〔聞き……何?〕

 

「十日前にここら辺で女の子みなかったか?」


〔覚えてない……そんな昔のこと〕


 まあ虫の寿命ってめっちゃ短いしそら覚えてないか、下等生物め。


『自己紹介…?』


 お前らさては私のこと嫌いだろ、ぶっ飛ばすぞ。


「しかしまあこのやり方なら……駄目か?動物いないもんなこの辺」


「やはり一度戻ってみないことには…ああそれ逃がさないでくださいよ、食べるんですから」


 やめてあげてほしい。


「私今こいつと話したんだけど…」


「?…そうですね?」


 やべえ、こいつさてはサイコだ。


「いや、いやいやいや…わかるだろ?」


「お父さん…人情や口約束なんて弱肉強食の前ではカスみたいなものなんですよ」


 うちの娘の情緒がヤバい。


「それじゃあ行きましょう?明日までに解決しないとどの道宿すら危ういんですから」


 ……すまんゴキ、恨むなよ。







〔嘘……つき……〕


ハリガネムシが下等生物と呼んだ存在はぶっちゃけ生物のランクで言うとブレ子くらい


つまりハリガネムシよりは上

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