人も探して粗探し
ブレ子や、迷子の捜索たってスーパーで子供探すのとはわけが違うんだよ?宛てもないんじゃ探しようが無くはないかね。
「……でも放っておきたくないじゃないですか」
「優しい子だなぁ…愚かにも」
「何だって言うんですか…ほらまずは依頼主の家を訪ねますよ」
死んでると思うけどなぁ……
「あ、ここですね……お父さん念のために後ろに」
あいあい、精々肉の盾になっておくれ。
「此奴は………頼もーう!」
元気良いなおい、どこに気合い入ってんだ。
しかしまあ何とも……寂れてる家だな、お世辞にも良い暮らしはしてなそうな建物だ。
ボロボロのレンガ造りで目地材は所々食われてて窓ガラスなんて存在しな……そもそもガラス作る技術とかあんのかな?流石にある?異世界人舐めすぎか?
「ガラスは高いんですよ……大抵は窓枠に木製の扉です」
一応技術としては存在するのね、それはそうか。
足音と共に扉が開く、建て付けの悪いギィギィと言う薄ら寒いような気分になる音が耳に残る感覚が建物の古さを物語る、建物としては古いし悪いし何なら二~三人は死んでそうな事故物件のようだ。
改築の匠が必要ですねこれは、何ということでしょう。
「は…はい……何の御用でしょうか」
顔が煤けたお婆……おば様が出てきた、白髪混じりの髪や深い皺を見るに苦労してるんだろうね。
「ギルドで仕事を受けた者です、お子さんについて聞きたい事が」
「……」
……フリーズした?
「…あの…?」
「あぁ…ああ…」
うわぁお、急に泣き出してしまった。
まあ…自分の子供がいなくなったとあればこれくらい憔悴するもんかね。
「リカ……私の娘が…」
「お気持ちお察しいたします」
ブレ子が優しく肩に手を置いて顔を見つめる……けど怖いと思うよそれ。
「…ああ失礼ご婦人…中に入ってもよろしいですか?あまり人前では外さないのですが……顔を見せて会話がしたいのです」
「………ええどうぞ…片付いてはいないのですが……」
「お構いなく、ではお邪魔します」
まあぶっちゃけミイラ顔の子供も怖いだろうけどね、鎧のペストマスクマンとミイラ娘…私なら子供が消えてなくても泣いてしまう。
やめよう不謹慎だ、て言うか……ぼちぼち真面目にやらないとだね。
「……失礼します…ふぅ」
マスクを外した瞬間あからさまにちょっと驚いた顔をするのはご愛嬌、オッサンか若い兄ちゃんかと思いきや女の子だもんね。
て言うかあれはポリシーで着けてるのか?コノハさん別に醜女ってわけでもないんだけどな。
「それで、お辛いでしょうがなるべく正確に答えていただけると幸いです」
「はい……ええと、あの日は確か十日程前の夜でした…」
…
……
回想すると思ったか?カットだよ面倒くさい。
そもそも私の聞いた話しだけでそこまで映像化などできてたまるかってことさ。
『……?』
気にするんじゃない、転生者(恐らく)の私でも割とギリギリの話なんだ、君達が触れたらきっと消されてしまうよ。
「……どう、思いました?」
「あの母親の話かい?」
簡単な話だ、十日前の夜に暖炉用の薪を拾いに行ってそれで行方不明になった。
よく話しであるというならばあるかも知れないがぶっちゃけそんな事本当にあるかぁ?って気分でもある。
「まあ……順当に考えるなら野生動物じゃないかね?」
「ですが…見たでしょう?獣どころか虫が時々いる程度ですよ」
そこだよねえ、となると人為的なものか……何故?誰が?何のために?
ぶっちゃけここで考えるに当たって『誰が』は考えても仕方無い、切りがないし何より犯人をのっけから探す馬鹿は名探偵どころか迷探偵さ。
「……つまりお父さんの見たてでは?」
「ふむ……全然わかんない」
「んなっ…」
だって全然情報も何も足りなすぎるんだもーん。
というかこの御時世にずっこけるとは…御主やりおるな。
「ねえ!!真面目な話してるんだけど!?」
何を言うておる、私だって十分真面目さ。
こう言うのはまず視点を広く見るのさ、さて……んじゃ早速現場に行ってみようか。
「そう…ですね、ですが……その服で行くのですか?」
あ、そうそう……私は服装があんまりにも見窄らしいからと娘が着ていた服を貰ってしまったのだ、まあ……娘と重ねて見るのくらいはいいさ。
「だがこの…ひらひらしすぎじゃないか?歩きづらいしあんまりにも……」
「ふふ…可愛らしいですよ」
いかんせん顔はミイラっ子だけどね。
『変な服…面白い』
良かったね綺麗な服貰えて、体を返した後は存分にひらひら舞い踊るといいよ。
「……あんまニヤニヤ見てんじゃねえよ、おう見せもんちゃうぞ姉ちゃんコラ」
「その可愛い服じゃ凄みもありませんね、手を繋いであげましょうか?」
どう見ても不審者になってしまうからやめなさいな。
はぁ…まあいいや、さっさと行こう?もう日の位置から見ても昼は過ぎてる……お腹も空いたが銭も大して無い。
「調査費用としていくらかは貰いましたがね…何から何までありがたいことです」
「一晩泊まれる程度にはな、飯はまた現地調達だよ畜生が」
しかし妙に羽振りが良かったのは飯はそこまで無いが金は有り余ってると言う事だろうか?まるで蝗害だね、恐ろしいなムカデ災害。
「仕方ないではありませんか、一晩あの宿に居られる目処が立っただけでもかなりの儲けですよ」
「だがしかし君が難しい仕事を選んだものだから実入りは良くても解決までに時間がかかるんだよ?」
「……だって……」
ああはいはい、そんな顔しないでよ……意地悪する気は無いんだ。
「……ったく…ブレ子、ちょっとかがめ」
手を頭の辺りで上下させるジェスチャーをとる、しかしそれなりにデカいなこの娘は。
「?…こうですか?」
近くなった頭に紅葉饅頭のような柔らかい手のひらを乗せる、まあもっともマスク越しにはなってしまうが。
「お前が選んだのは正しい行いだ、何て手放しで褒められる状況じゃねえけどさ、立派だよ」
「……気でも違いましたか?…は、もしや寄生…」
「ははーん、ぶっ殺してやろうかなこいつ」
二度と褒めてやらねえからなこのガキャア!!
「嘘です嘘ですよ!ありがとうございますお父さん!」
「知らん!ぜっったい認知しない!!」
おら!キリキリ歩けぇーい!
「ちょっとお父さーん!」
…
……
「森だな、代わり映えもしなければびっくりするくらい鬱蒼としてる」
『森だね、懐かしむ暇すらないくらいすぐ戻ってきたね』
「森ですね、言うこと無いです」
まあ厳密に言うならスラムとは別方向から出てるし私達が歩いてきた森とは違うらしいんだが…言うて離れてないし生態系も変わんないとは思うけどね。
「薪を拾うと言ってもそもそもこんな時期に暖炉なんてつかいますかね?」
「夜になれば少しは冷えるたって…屋根や壁が一応は存在してるんだから雨風職質くらいは防げんだろうけど……まあ料理とかにも使うんじゃないかな?」
「職……うーん……ですがそれ以前にあの母親…」
「ふん……何でも疑ってかかるのは君の悪い癖だぞブレソン君」
「誰ですかそれは…」
多分私がいた世界の何か探偵だった気がする。
「……あ、これ食べられますね」
なにこれ…葉っぱじゃん
「木葉虫と呼ばれる虫です、木の枯れ葉に擬態をするので時々しか見つかりませんが…それなりに栄養価もあってサクサクしてて美味しいですよ」
舌壊人の君の美味しいはあてにならねえなあ……まああのカマドウマよりかはましなら……いやまてローチって言ったかおい、それゴキブリじゃなかったか?なあ!おい!
「ほらお父さんあーん」
せめて!せめて料理はして!!
うぉぉぉぉ!?
尊厳は死守した、ギリギリだけど。
さて、ハリガネムシを日頃お読み頂いてる皆様に1つお願いがあります、下の方にある評価の欄で忌憚の無い点数を付けて頂きたく、図々しいことではありますが最近この作品が面白いのかイマイチ自分でも分からない時期に来てしまいまして、未熟者の私目に是非意見や指摘をください