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夜毎人世の縁

 色んな語尾が頭に浮かんだしこの際統一感の無い感じでやっていこうかにゅん。


『戻った時覚えてなよ…?』


 ふははは、その時には君のこの街での立場は頭のおかしい子供さ。


『あ゛ぁぁぁあ!』


 怖…悪霊じゃん…


 あ、店の人帰ってきた……うわぁ逞しいおっさん連れてきた、ご主人かな。


「あんたらが金もねえのに泊まりたいって言う人達か」


「ちょっとお父さんそんな言い方!」

「黙ってろ!」


「いえ…その通りです……」


「わかるだろ?施せるほどうちは儲かってねえ…今日を食うのに精一杯だ、そんな俺らからしたらあんたらは死神みたいなもんなんだぜ」


「……はい」


 宿屋の首の太さじゃねえなこの人…具体的に言うと街をハンターするタイプの人の相棒でロケットランチャーぶち込んできそうな身体だ。


「……訳ありか?」


 ははは、ぼろ切れ着た子供とマスクの変態じゃそう思われるわな。


「儂は旅をしているものでして…この子は森に村を構える種族の子供なのですが、どうにも村が何かに滅ぼされてしまったようで私が面倒を…」


「……そうか」


「今夜だけでも…せめて屋根のある場所で眠らせてあげたくて…勿論明日資金は作ってきます」


 厳めしい顔のおっさんの見下ろされるのは何とも居心地の悪……泣いてる!?


「うおぉお…辛かったなぁ…部屋は空いてんだいくらでもいていいからな…」


 すっごい泣いてる、そんな泣く?ってくらい目から雫がボトボトと……怖。


「悪いがそう食事をただでやるわけには行かねえし…できることって言ったら部屋を貸すくらいだが、まあ何だ…あんたは悪い奴には見えねえしな…マスクはどうかと思うが」


 何かわからんが優しいおっさんが多いなこの街は、皆切羽詰まってるみたいなこといってたのに。


「感謝します…掃除や雑用は私が何だってやります…いや、やらせてください」


「ああ勿論だ…仕事はしてもらう、俺は子供以外には別に優しくないんでな」


 おっさん……


「…あ、あの」


「……ありがとうございます…」


「…おう」


「……何だ、見せ物じゃねえさっさと部屋に行きやがれ!」


 あ、いつまでも眺めてたら怒った。


「本当に感謝します…」


 ブレ子が最後に深々と頭を下げて私を二階の部屋へと腕を引く……幼子って特権だなぁ。


「……良くやったなお前」


「お父さん程では……ですが本当に善人を騙すような真似は気が引けますね」


「別に騙したわけじゃないだろう?ただまあちょっと事実と違うだけで」


「……その違う部分がわりかし大きく違うのが問題なのでは?」


 そうとも言うよね。


 っとノックが聞こえる、ブレ子頼んだ。


「はーい、どうぞ」


「失礼します、父がこの部屋なら安く貸してもいいと行っておりましたので遠慮なくいてくださいね…ええと」


「コノハと申します、この子はミリア」


「み、ミリア…デス」


 幼女ムーヴ安定しねえな、戻ったらお嬢ちゃんに聞いてみるか……あれてかお嬢ちゃんの名前普通にミリアって名乗ってるけど本名あったよね確か。


『気にしなくていいよ……』


 いいならいいんだけどさ。


「私はルキアと呼んでください、ふふ、ミリアちゃんもよろしくね」


 あら咲いたような笑顔、おじさんちょっと若い娘さんの笑顔見てるとね、こう……死にたくなるよね。


『……え?』


 未来に溢れた顔しやがってよ、こちとらどこまで行ったとてハリガネムシやぞ……蜘蛛ならまだ人型になれるアラクネとかさー色々あったと思うのよ?でもハリガネムシだよ?これからもこの先も唯一無二のハリガネムシだよ?


『?いいんじゃないの…?』


 いいわけねえだろ馬鹿がよ。


『急に怒る…急…』


「ねえ、さっき自分の村がって言ってたけど……どういう理由で?」


「あ、え、えっと……長くて脚が沢山はえてる…」


 やべ何も考えずにムカデに全てをなすりつけてしまった。


「……っ…本当なの?」


 息を飲んでるじゃねえか娘さん、まずったかな。


「そんな…いや…そうか」


「ごめんね、少し出かけてくるから…下に父はいますので何かあればそちらに」


「ええ、それは…大丈夫ですか?」


「大丈夫…です」


 大丈夫には見えない、明らかな動揺と脂汗が目立つ。


 これやらかした?


 みたいだな、すっごい睨まれてるもんな、ブレ子に。


 部屋を出て行く娘さんについに何もいえなかったよね、今更嘘だよーんとも言えるわけでもねえけど。


「……何でよりによってムカデなんですか?」


「シンプルにミスだわ、いやちょっと待て?仮称ママ、あれも脚…と言えば脚と呼べなくもない器官めっちゃ生えてたろ?」


「あれをママと呼ぶな私の祖母になる、いやそれはそうですが…だとしてもあの脅え方は確実にムカデか…それ以外の強者に対してでしょう?」


 仮称ママだってそれなりに怖かったのに眼中にないあたり可哀相だな。


「あれは雑魚です、いや強くはあるんでしょうが…ここで出すのは場違いですよ」


 スキルがちょっとね…もっと致命的なの入ってたら微塵も勝ち目なんて無かったからそう考えるとまあ初手ムカデとか鱗犬よりはましだな。


「……ちなみになんだけどあのオカマッチョには勝てる?」


「あれは……化け物です」


 酷えなおい、確かにちょっと思ったけども。


「いや見た目じゃなくて……あの方はとんでもない投げ技を使っていましたがあれは殆どダメージなど無いかと」


「あんな高さからパワーボムしといて?」


「手加減……と言うか何らかのスキルか魔法で落下の瞬間地面を砕きながらクッションにしたのかと私は見てます、埒外の実力者ですよ」


 そんなのに追い掛けられて逃げてこられたあたり奇跡だな。


「言ってる場合ですか……いや実際、二度目は無理かと」


 正直に話してもなぁ……言うて私魔物だし。


「まあ最悪あれだ、嘘を見抜いてくるならお嬢ちゃんもちゃんと私達の仲間で体は貸してくれていると……嘘になっちゃわないかこれ」


『………』


 あ、これ嘘判定食らう奴だやべえ。


『別に大丈夫……乗っ取られたのは嫌だけど、感謝もしてるし』


 お嬢ちゃん……大変だブレ子!お嬢ちゃんが感謝してるってさ!


…どうしたの急にデレて、ちょっと気味悪いよ?


「お父さん人の心とかありませんか?」


「ハリガネムシに何を期待しておいでで?」


 困ったもんだよまったく、テコ入れのようにデレたからとヒロイン枠が勝ち取れると思うんじゃないってことさ。


『…たまに本当にわからない』


「我が父ながら理解に苦しみます」


 自分でもわからないよ、誰か私を止めてくれ……


「心の病気じゃないですか」


 まあそれはそうと……さっさと夕飯食べて今日は休もうぜ、明日働いて金稼ぐんだろ?


「ええ、そうですね……コノハ殿の記憶を頼りにするなら仕事を斡旋するギルドがあるそうなので行ってみましょう」


 冒険者ギルド!熱いね、熱く滾るものがあるね!


「ああいえ冒険者ギルドとは別です」


「君はいつも私を期待させて落とす……」


「ええ……?」


 まあ要するに職安とかハローワークみたいなもんか、仲介所ともいうよね。


 こんな身なりでいけるかはともかく、頑張ろうじゃないかさ。


「ええ…お父さんにもできるだけ働いてもらいますからね」


「え、マジで?」


「さあそのためには栄養を採りませんと……幸いまだ在庫はありますからね」


「わーい、私最早あの虫割と好き」


「ああ、彩蝶ではありませんよ」


 え?

 

 いやちょっと待てなんだその力強そうな脚…ってかどこから出したお前それ、私の知ってる中だとリオックとかそう言う部類の大きさだぞ。


「ほらこのさっき捕まえた沼蟋蟀(スワンプ・クリケット)です」


 カマドウマぁぁぁ!!!?


沼蟋蟀、文字通り沼に住んでることが多いデッッカイ蟋蟀


ちなみにハリガネムシの最初の宿主はこいつに進化する可能性があった

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