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王はまだ王に非ず

 魔王て、いや魔王てお前。


 あいつがそうなの?序盤で出会って共闘したあいつが?この先で世界の半分とか差し出してくるの?


「どんな魔王ですかそれ…」


「戦う前に全力で来いって体力(HP)とか全回復させてくれたりしちゃうわけ?」


「優しいですねその魔王…」


「最近の魔王は投げ出しがちな若者のためにそれなりに工夫してるんじゃないかな」


「いや何の話ですかお父さん?」


「るせぇ!私だって混乱してんだよ!」 


「えぇ…急に怒る……」


「そんで魔王って所謂何?」


「ええと…そのままです、魔物の立場から王の地位を得たというか…ここからかなり遠いですが別の大陸の一部を統治していましたね」


 おお…本格的に王様やんけ……


「……え、じゃあ何でそんなキング様がこんなとこに?」


「だからそこが一番信じられないのですよ、なんせ海を挟んで遠くの大陸ですからね」


 んー…侵略?


 いやでもあの文的に……


「その魔王って死んだ…?」


「何言ってるんですかお父さん…?」


 いやだって、あいつ幼体だったしそもそも地の戦闘力が高いって言っても…成長途中だろ?


 まさかあれより若い段階、それこそユニークも目覚める前から王様やれてたわけないよな?


「つまりあれだ、その魔王様とやらの子供ってこと?」



「成る程…いやでも死んだって話しは知りませんね…」


 じゃあ違うか……


「ええと…距離が有りすぎると噂ですら入ってこないんですよ、貿易商もあの辺りの大陸は忌避する方が多いですし」


「ああそう言う……まあ何だ、私は勇者でもあるまいし魔王をわざわざ倒しに行くことも無かろうて」


「ちなみにどのくらい強いの?」


「御自分の方が知ってるのでは?私はあくまで伝承や噂で聞いた程度ですので…」


「幼少期しか知らないからなぁ…」


「……動くだけで猛毒の竜巻が起こるとか」


 よぉし、無理!人はそれを生物じゃなく災害と呼びます!


『見てみたい…』


「お黙り、好奇心旺盛なお子様め」


 麻痺耐性極振りでもしなきゃ近付けもしねえのにそんなヤバい噂聞いて見に行くのは好奇心で片付けて良いものではない。


「まあそうそう出会わないだろうさ…そもそも結構昔の話しなんだから」


 私って半年くらいは『一回休み』で寝てたんかな?


 だとすればあの食欲に突き動かされるままにどこか遠くまでグルメレースしててもおかしくはない、てかそのせいで生物減ったんだろうな。



「ですがお父さん……怖いので迅速に進みましょう」


「自分に正直なのはいいことさ、私もぶっちゃけ怖くなってきた」


 寄生で友情も築けたら良かったよなぁ!


「まあ幸いにも人の手の入った部分が多くなってきましたしそろそろ外にも出られるのでしょう」


「……あれてか何でお前は街までの道を知らないの?」


「…………コノハ殿は……方向音痴でして」


 馬鹿野郎かよ。


「え……じゃあ何だ、お前が遅れたのって方向音痴だから?」


「……原因とは関係ない、とは言い難いですね」


「……お前コノハさんにどこで寄生した?」


「…川辺で餓死寸前になっていたところを…口に儂の一部と水を含ませ最低限動けるようにしてから…」


 じゃあ行き倒れじゃねえか、何なら寄生虫に助けられてんじゃねえか。


「おやめくださいお父さん…今は儂なのです」


「ま、まあいいや…人の手が入ってるってのは?」


「え、見ればわかるでしょう?そこの木の幹にある矢の跡や先程からカモフラージュはされてますが少し見える長靴(ちょうか)の踏跡等から街の狩人か何かがこの辺りまで来ていたという事くらい…」


 わかんねえよ、むしろ自分の来た道もわからない奴が何でわかるんだよ。


「底が知れない不審者だぜ…」


「おい誰が不審者だ」


 うっわ本当によく見ると足跡ある……注意深く見ないとわかんねえなこれ、いや知らなきゃ見てもわかんなかったわ。


「気をつけて行きましょう、魔物と間違えられていられたらばたまったものではない」


 ……えこれヤバくない?お嬢ちゃん人間じゃないっちゃ人間じゃないんだけど。


『……デリカシー無いの?』


「いえそれは…街がというかこのあたり一帯の国はそれなりに亜人種も多いので問題は無いでしょう」


「ならいいか、何か言われたらただの肌艶の悪いチビって言おう」


 そうと決まればさっさと進もうじゃないか、何か心の内から怨嗟の声が聞こえてるけど気にしない方向で行こう。


「お父さんは人に会ったのは儂が初めてですか?」


「うんにゃ?一回槍持ったオッサンに出くわしたね」


 何だっけ、名前も思い出せないわ。


「槍持ったオッサン……どうしたんです?」


「記憶が曖昧だけど麻痺するガスみたいなのバラまいたらそのまま死んだから、追い剥ぎ」


 ん?何か大悪党みたいだな?


()()()でなく純然たる悪党では?」


 生きるために必要やったんや…割と切実に。


「まあ儂とて生きるための殺生は目を瞑りますがね」


 ご立派だなぁ……



 ん…?


 あれ…何だ…?


〔くそ、少しも獲物がいやがらねえ〕

〔こいつらピンハネしないように見張らねえと〕

〔これは…いや駄目だな〕



 ストップだブレ子、何か聞こえる。


「お父さん?」


 小声で話せ、多分人間だと思う。


 聞こえる声は3つ、と言っても頭に直接入ってきてる以上スキル由来だから距離まではわかんねえ。


「……方向はわかりますか?」


 向こうだな、あの二股に別れた木の先…だと思うんだけども。


「……儂なら恐らく後ろを取れますが…」


 ……倒す必要ある?


「…無いですね」


 物騒な子だよ本当に……そもそも街のハンターか何かなら戦う必要すらないでしょうに。


 

 よし、ブレ子コンタクト取ってみよう。


「わ、儂がですか?」

 

 私口下手なんだよ。


「めちゃくちゃ喋っとるじゃないですか!」


「てめえらそこで何してる!」


 ブレ子ー!?大声出したらアカンやろがい!


 ……まあコンタクトは取れたか、てか案外近くにいたのね。




「わ、儂等はこの森を抜けてきた旅人で…」


「うるせえ動くな!その子供をどうするつもりだ!」


 おや?


「そんなぼろ切れしか着させねえで…奴隷がこの国じゃ今は御法度なの知らねえのか!」


「待ってろお嬢ちゃん!今助けてやるからな!」


 おやまあ。


 このナイスミドルなどおじ様達、私がブレ子にさらわれてると思ったのか。


 ……可愛いって罪。


「言ってる場合ですかお父さん!」



「てめえそんな幼い子をお父さんって…新手の変態かぁ!?」


「さっさとマスク外してこっちにきやがれ!」


「この距離じゃ外さねえぞ!」


 どうするんだい?手前の髭は弓、後ろのマッチョは…なんだあれ、山鉈?ちょっと右に離れてる赤鼻は多分あれボーラーって言う昔の狩猟道具か。


 多種多様だな。


「……わ、儂は怪しい者では!」


「嘘付けぇ!脳天から足の先まで怪しいわ!」


「お前が見逃されるなら俺が街を全裸で歩いても捕まらねえよ!」


「恥を知れ恥を!」


「儂のマスクそんな駄目ですか!?」


 まあ…怖いよね、昨日の夜隣見たらチビるかと思ったもん。


 さて参ったね、どうしたものか……ふむ。


「わ、私…この人に助けて貰ったんです…村が襲われて一人ぼっちの時に…」


「この人は悪くないんです、顔の傷を私が怖がったからこんなマスクをしているだけで…本当に良い人なんです!」


「だからどうか…武器を下げてください…」


 決死の幼女ムーヴ、ここでちょっと涙を浮かべるのがポイントさ。


『ハリガネさん…後でちょっと話があるからね…?』


ええ…機転利かせたと思ったのに。



「……下ろせ」


 髭の一言で後の2人も武器を下げた、成る程髭がリーダーかな?


 ブレ子は依然として取り敢えず手は頭の上、此方に争う意志は無い。


 さあ…あとはこの可愛い幼女を保護する名目で2人の旅人を街に案内するだけさ。


「一つだけ聞きたい、一つだけだ」


 お、髭面が近い、てかこの体で見上げるオッサンデカ!怖!


「なあお嬢ちゃん…あいつに言わされて無いよな?」


 私のサイズに合わせて屈むと小声でひそひそと話をしてくれる、このオッサンさては娘とかいるな?子供を扱い慣れていやがる。


「……」


 ここはあえて何も言わず首を横に振ってみよう。



「……よし、悪かったな兄ちゃんよ…こっちは最近人攫いが出たもんで皆ピリピリしてんだ」


「いえ構いませんが…あの」


「すまなかったなぁ兄ちゃん、悪く思わねえでくれ」


「私も怪しい見た目をしていますから…いやそのですね」


「兄ちゃん、良かったらその子も一緒に街まで来ねえか?」


「私…そもそも女です」


「「「……ごめん」」」




 吹き出しそうになるから勘弁してほしい

鎧とマスクで性別判断する方が難しいと思う、近くで聞かないと声もくぐもってるし

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