チャレンジ精神は今じゃない
トレント
北欧だかの神話に出てくる木の神様だかがモデルになった…まあRPGなら雑魚枠の敵キャラだな。
ドライアドとかならまだ美少女の可能性もあったかもしれないがトレント表記だとほぼ間違いなく木製の化け物さ。
ブレ子、一応聞くけどこいつらは雑魚かい?
「樹木の重量で襲い掛かる生物がですか?」
だよね、丸太なんて斬ることも燃やすことも難しいしその上囲まれてると来たもんだ、ぶっちゃけ私にはどれがトレントでどれが普通の木だか一切わからないんだけど。
「は、ハリガネさん…どうするの…?」
何でも私に聞くんじゃないよ、いつも通りさ。
「失礼」
「わ、きゃ!」
ブレ子がお嬢ちゃん抱えて周囲の樹木より高く飛び上がり、そこで初めて気付いた。
これ見える範囲ほぼ全部そうか?
「起きろ『大混夜叉』」
片手で1人抱えて空中で抜刀、そのまま枝を斬りつけつつ此方に向かってくる蔓の中から足場を見つけて走るとは……こいつ人間か?ムカデの頃でもそんな動きできねえよ。
ああ違うわ斬れてないのか、ちょっと鈍くはなってるけどすぐ動いてる。
「……やはりいくら斬っても駄目ですね」
まあ材木斬ってもね、痛みとかあるのかわからん。
ブレ子、あいつらに寄生行けると思うか?
「……粘膜すらあるかわかりませんが?」
だよな、どうしようかね。
正直舐めてた、ブレ子いるし大概どうにかなるだろうと思ったらこのざまだよ。
「■■■■、■■■■■」
お嬢ちゃん?あ、お嬢ちゃんなら説得できるのか!よっしゃ頼んだ!
「駄目……話にならない…」
はっはーん、一応何て言ってる?
「許さぬ…許さぬ…ってずっと、聞く耳持ってくれない」
……何したブレ子ぉ!
「えぇ!?儂!?」
だって私『一回休み』後はずっと村にいたよ?あのミミズが本当に神様でもない限り無関係だろうさ。
「待って…………率いる曲がり神って単語に聞き覚えは?」
曲がり神?曲がり神…ああ…鹿だなぁ。
「おいコラお父さん!?」
うるせえ!生き残るためには仕方なかったんじゃ!
「知り合いなんですね!?」
て言うか前回の死因!
「何やってるんですか本当に!」
何やってるかって言われるとあの時の私の思考回路本当に訳わかんねえよ、何だ後ろに引けないから更に前へって。
本当ね、レベル上がりゃあ宿主の性格に引っ張られなくなるんだろうか。
「お陰様でとてもギリギリですよ!」
ここは1つあれ頼むよ、何だっけ?『八方塞がり?』
「八方睨みだアホ!…っ『八方睨み』!」
前方向の枝を払い落とす範囲攻撃みたいな剣技、まあ斬れちゃいないが
お、でも一瞬だが押し返したか?つたを斬られちゃ流石に痛いか!
……ああ気のせいだな、やっぱ痛みとか無さそうだわ。
「父さんも何か考えてください!このままじゃ全滅です!」
うるせえ今ナイスな案を考えてんだよ……とは言っても何も浮かばない、私にできることが皆無でな。
いやしかし今ので攻撃が止んだ…?流石にバサバサ斬られてる感覚はあるのか?ストレスで花が咲かなくなっちゃったりするんかね。
違う…ブレ子、下だ!
「しまっ!?」
「なわ!?」
まずい、反応が遅れたせいでお嬢ちゃんが持って行かれた。
仕方ねえ……ブレ子!私を…
「わかりました!」
何の躊躇いもなく親を投げるよねぇ!?
おわぁぁぁぁぁ!?意外と高え!?
「は、ハリガネさん!」
やっほー!口開けろ!
「えぇ!?」
っしゃあ!お邪魔します!
「もが!?あ…が!」
[アクティブスキル『寄生LV.7』による生体浸食率が100%に到達、生体の持つ全能力を使えます。]
「……久々だな、このアナウンスも。」
まあこの肉体弱すぎて話にならねえレベルなんだけどさ!
よし、馴染みのある二足歩行のおかげである程度回避はできるな。
囲まれてるからお気持ちだけど。
「ブレ子!助けて!」
「わかってます!ああもう……虎の子なのに!」
今にもR指定が入りそうな触手が迫る少女の下に現れるペストマスク、救世主だねうちの不審者は。
「誰が不審者だ!頭低くして耳塞いでください!」
「了解、って何それ」
手の平サイズの真っ黒い球……コンビニの爆弾おにぎり的な、じゃあ爆弾じゃねえか。
轟音、衝撃、産毛が焼ける感覚。
体中の血管が爆ぜるような衝撃波に継いで現れる目の前の線香花火、食らったことないけど軍とかのフラッシュバンってこんなかね、そら制圧に使われますよ。
目前に散ってた火花が無くなれば今度は血の気が引いて腰が引ける、これがシリアス物なら腕の一本でも飛んだんじゃないか?
「無事ですか?」
「危うく幼い体が粉々だよ!助かったけど!」
こいつ私が入ったからって若干お嬢ちゃんに雑になってきてないか?
「てかもっと早く使えよ!」
「2つしか無いんですよ!」
こいつさては最初の町であんまり買い物しないタイプだな?
「それで、行けますか?」
「動いてもどうにもならないハリガネムシ一匹とろくに動けない小娘一匹合わせただけだぞ?大したことは無いよ」
「まあでも、やりようはあるかなって…取り敢えず今の爆弾でびっくりしてるみたいだからね」
と言っても特段やれることは……ぬ?
〔許すまじ……森の調和乱す者…〕
これ、此奴らの声か……んー、よしそれっぽい事言っとこ。
「聞きなさい大地の守護者よ、森を脅かす獣はたった今没しました」
「我々も騙されていたのです、これより先は不毛な争い…即刻引きなさい」
お、おお?
やったかな、包囲が解けてく。
〔感謝する……寵愛の子〕
〔感謝する……感謝する…〕
「何だ…?何て言ったんですか?」
あ、これブレ子には聞こえてねえのか、結構めんどくさいな。
「まあ、ちょっと私は今爆発させて殺したからもういないよって話した…かな」
「成る程…それで欺けるものなんですね」
「駄目元で言ってみるもんだね、びっくりだ」
[生体による寄生生物の排除を要請、承認しますか?]
あ、これ前の貌無き者にも出されたな。
あれか、お嬢ちゃんが出ていけってやってんのか。
そんな事できんの?なら何でムカデは[生体による寄生生物の排除を要請、承認しますか?]
いやあの[生体による寄生生物の排除を要請、承認しますか?]
……ごめん!まだ借りる!
[生体のパッシブスキル『怒りLV.1』の修得を確認]
ごめんて!でも今出てったら確実にあいつらに感づかれるもん。
……わかってくれたか、渋々感が凄い伝わってくるけど。
「父さん、大丈夫ですか?」
「ああうん、問題無いよ……ちょっとお嬢ちゃんと揉めてた」
「左様ですか…もう少し進んだら一度休憩を取りましょう、さっき沢山捕まえた『彩蝶』の幼虫を食べれば回復もできますし」
あ、今凄くこの体を出て行きたいかもしれない。
「ふふ、意外と食べてみれば美味しいものですよ…チャレンジです」
「虫食は…虫食は嫌…だって同じところに来ることになるんだもの…」
「ふふ…ふふふふ」
……こいつ度重なるストレスを私で発散しようとしてないか?
??「嘘だ絶対生きてる」