人生相談会という名の事案
筋力増強!筋力増強!筋力増強!
ふー……腹筋はこれくらいにしておくか、腹筋…?まあいいや次は水泳!
「うるっさいなもう!」
わあびっくりした、突然怒鳴んなよお嬢ちゃん。
「さっきから何してるの…?」
いや、ほら……何日か休んだからちょっと運動をね?筋肉トレーニングさ。
「……」
やめなさいその目、ハリガネムシだって傷付くんだよ?
でもさ、何にもしないよりかは何かしてた方がいいに決まってるし……何より今の私のステータスだとTRPGならやや高めくらいのものだからな。
「てぃーあーる?」
気にするないつもの妄言だ。
て言うかこんなトレーニングで上がるわけも無いんだけどね?レベル30上げてもほぼ変わらないんだから。
文字通り筋力やら精神力ってんなら種族値もあるからどうにもなんねえし……人間になりたいねぇ。
「なれないの?」
君がそこでしゃがんでお口開けててくれれば人型にはなれるってば。
「……」
ま、それができるなら苦労はしてねえってね。
さてまあ体力は回復したんだけど……これからどうするかだよね、ここ数日取り敢えず村の状況を音だけで判断してみたんだ。
「…ど、どうだった?」
さっぱりわかんないよね!言葉も通じないわけだし!
とは言えお嬢ちゃんに聞かされた内情を鑑みるに……この村はあれだな、血統が全ての縦社会王国って感じだ?小さめだけど。
「……そうなの?」
うん、私も詳しくはそんなに読めてないけどそこそこチートな拡張解析があるから色々とデータは閲覧できたよ。
一部読み始めたら寝ちゃったんだけどさ。
そんで君……何であの人に殴られてんの?立場君のが上じゃんね。
「……上だったのはお父さん、私は隠れてずっと殴られて来た。」
書かれてる通りなら直の子孫が継ぐ事になっているようだけど?
「……でも、私はまだ子供だから。」
だから?子供だからって後妻が権力を握るのが普通かい?厳密には血のつながりも無いのに。
「だってまた殴られるもん…やり返したらもっと殴られる…」
……難しい話だね。
ああそうだ、色々見たと言えども名前は見てないから安心して?
「……本当に?」
うん、一切見てない、ママに誓う。
ママはつい最近世を儚んで身投げしたけどね。
「…はあ……間違えたかな。」
何が?生き様?
「……協力者。」
……ちょっと傷付いたよ、ハリガネムシさんだってやるときゃやるんだぜ?
「でも…その壺から出ても来れない。」
んなら何で私を助けて、その上協力を持ちかけたりしたのさ?
「……龍神様を倒したから。」
あの頃だと厳密にわかってなかったくせに……殆ど偶然じゃないか。
「だって……」
……まあ、正解だとは思うがね。
ハリガネムシさんは心優しいハートフルハリガネムシだから可哀相なお嬢ちゃんをしっかり助けてやることにしたのさ、安心して頼りなさい!
「……どうやって?」
何かこう……悩みとかあれば?
「……村を出たい、外の世界が見たい。」
またそれかい…やめておいたら?
「諦めない…私は、外で幸せになりたいんだから。」
無理でしょ、お嬢ちゃん弱いし
「っ!何なの!」
聞きなさいな、今のお嬢ちゃんだとよしんば外に運良く出れて、街に行けたとしよう。
でもそれは逃げ出しただけだ、それに人に力を借りてな……いや悪いとは言わないのよ?私だって他人の力を借りなきゃ何もできないからね。
だが今のお嬢ちゃんはもっと悪い、人の力すらまともに借りれてねえからな。
私を協力者って言っただろ?なら私に頼ってばっかりの指示待ちじゃ駄目だ、具体的にどうしたい?
「……そんなの…」
ちなみに何だって村を出ようと?自分探しなら辞めた方が身のためだと思うよ?
「……私は…」
「私は外の世界で……冒険者になりたい。」
……止めるべきかなぁ!?
「止めないでよ!」
だってさ!それ主人公でもなければ死ぬ奴じゃん!百歩譲っても勇者とかじゃん!
「わ、私にはこの力があるもん!」
良いとこ魔物使いじゃん!脇役じゃん!本体が紙装甲が約束されてるじゃん!
「……ハリガネさんの馬鹿!」
ごめ、ごめんって!謝るから水を混ぜないで!
がぼっご…死ぬ、死んでしまうよ!?
「この!この!」
やめ…あ、本当にやばいこれ……川見えてき…た…
「はぁ…はぁ…」
……協力者を殺めかけた気分は?
「……ごめんなさい。」
あら素直な良い子、怒ってないよ?煽ったのは私だしね。
それにちょっと安心してるんだ、これで私にまで言われっぱなしなら本格的に協力断ろうと思ってたし。
言われて怒れるだけの力があるなら大丈夫さ、あとはそうだね……ちょっと自信つけないと。
「自信……」
筋トレする?ハリガネーズブートキャンプ。
「……?」
新兵訓練さ、私のことはハリー軍曹と呼びなさい。
「えぇと……」
ネタが通じないって不便極まりないな、言葉が通じないより辛い。
「ご、ごめんね…?」
いいんだ、きっと誰かには伝わってる筈だから。
目の前の少女を笑わせられなくてもどこかの誰かが笑ってくれればいいさ、なあ皆そうだろう?
わかった、いない人と話すのはやめるから強めの衝撃を加えようとしないでくれお嬢ちゃん。
「叩いたら治るかなって……」
家電か私は?
いや家電は無いはずだよ、万国共通どころか異世界もなのかよあの治し方。
「お父さんが教えてくれたの……」
家電の治し方を?
「ううん、獲物へのトドメ。」
ああ、恥を晒すくらいならばいっそ楽になれとね?誇り高さ武士じゃん、世はまさに戦国時代か?
まあ何はともあれハリガネムシさんの体力も万全とは行かないが戻りつつはある……まさか養分に悩んだ末に土や水草を入れた水で良いとはね、金魚か?
「普段川に生きてるなら…大丈夫かなって」
別に川には住んでなかったんだけどね?それでもこの簡易的なアクアリウムのおかげで何とか生き残れてるよ、まあやっぱ寄生した方が早いんだけどさ。
ちなみに弟の体を差し出せとか言ったらどうする?
「えぇ……うーん。」
あ、そこ考えちゃうんだ?できれば姉として即決で断ってあげてほしいよね。
「嫌いだもん…向こうも私が嫌い。」
それはどうかな、お嬢ちゃん達はまだ子供だからね。
私にも弟か妹がいたような気もそんなことも無い気もするけど多分仲は良かったんじゃないかなぁ、知らんけど。
「……何もわかってなくない?」
うん、ほぼほぼ記憶無いよ。
てか最近は薄れつつある、前まで大学生だったような気がしてたけど……今はそれも夢で見ただけかもって思うようになってきたし。
ああ、私は一体何者?
「ハリガネムシ…?」
それは今、過去の話をしてるんだ私は。
「振り返らないんじゃ無かったの…?」
……さ、話の続きをしようじゃないか。
うーん、家畜とかいないかい?
「アグリィホグとかなら…」
あぐ…豚かな?アグリィって何だろう?怒り?
違うか。
「大人しいから…私達でも捕まえられるの。」
ふーん、話たりするの?食べる相手と。
「…話せるけど頭悪いから、あんまり言葉が…」
ああまあ、言葉は通じるけど会話が成立しない奴とか人間にもいるしね。
そいつにするか…やでも、うーん。
鈍いよね、多分。
「うん、動きは遅い…かな。」
森抜けるとなるとスピードとスタミナは必要か、いくら道わかってても結構ありそうだし。
豚……何かね、個人的に豚嫌かも。
馬とかいないの?
「うま……外界の人はそう呼んでるらしい生き物はいるけど族長のだから…」
え、いるの?
「うん、でも族長が凄く大切にしてるから…」
なら大丈夫、きっと村の可愛い子供のためなら宝物の一つや二つどうってことなく渡してくれるに決まってる。
説得は得意なんだ、すぐに自分から是非持って行ってくださいってむせび泣きながら言ってくるさ。
待たせたな!
本当に申し訳ございませんでした!今回遅れたのには理由があるというか私生活が忙しくてストックすら書けてなくて…
でもまた今週からバリバリ書きますからどうぞよろしく!