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祝福の受け手は貧乏クジ

 ……つまり何だ?私は守り神らしき存在を崖から突き落としてぶち殺したことになるのか?村の救世主から急に神殺しの罪人か?


 何という転落人生、まるで現代社会。


 いや待て待て、まだ誤魔化せるさ、まだセー…いや駄目だこれも聞こえてるわこの子。


「聞こえてるよ。」


 ………だよね。


 よぉし、こうなりゃ仕方ねえその体貰ったぁ!


「わっ!」


 ぼぎゃあっ!?


 や、やるじゃねえか……口目掛けたハリガネムシダイブを無造作なジャブで叩き落とすなんて…ただの子供じゃねえなさては。


 HP 2/620


 おかげさまで未だかつて無い瀕死だ、何てことしやがる。


「き、急に飛び込んで来るから!」


 秘密を知られたからには生かしちゃおけねえのさ!恩を徒で返すのは忍びないけど私も君の恩人だからチャラということでここはどうか!


「落ちついて、別に殺したりしないから。」


 うるせー!こちとら死んだら終わりじゃなくて何者かの腸内で強制リスタートなんじゃ!


「……か、可哀想。」


 憐れみはやめて、シンプルに心に来るから。


 そんで?龍神様って何なの?


「切り替えが早い…今さっき襲いかかっておいて…」


 過去ばっかり振り向いてちゃハリガネムシは生きていけねえのさ。


「えぇ……龍神様は村を護ってくれる神様だよ。」


 ふむふむ、ごめん多分殺した。


「いいの、皆が勝手にそう言ってるだけだから。」


 ……ん?そうなの?


「うん、あれは普段お腹すいたとかしか言ってない。」


 ああ……成る程。


 つまりあれだ、力がある存在に依存するしかない性能してる種族だから何らかの生物を神と崇めて守ってもらってると。


 声が聞こえてるお嬢ちゃんからしたら笑い物だよね。


「難しくてわかんない…けど他の生き物たちは龍神様が怖くて逃げ出しちゃうから。」


 あいつも臆病なんだけどね、私はさっき逆手にとろうとしたら逆に追い詰め過ぎて死闘に発展したけども。


「時々龍神様は捧げ物を持って行けば私達を食べないから…」


 捧げ物ね、でもあいつは結局のところ野生動物だろうに。


「でも、すごく頭いいよ?」


 知ってるよ、さっきボコボコにされとったわい。


 なんなら依然として瀕死だからね私、さっき7で今は2だよ?名も無き一撃で死地にいるよ?


「……」


 じと目はちょっとやめてほしいかな、冗談だからね?


 危ねえよこの少女、さっき斧向けてたし。


 やっぱどっかで体奪わないとまずいか……


「聞こえてるからね。」


 心の底からごめんなさい。


 仲良くしようぜ、な?


 オレ、オマエ、ナカマ。


「……ハリガネさんはすごくこう…」


 ん?格好いいかい?


「うるさい…よね。」


 ……それは、ごめん。



 いやでもさ、森の中で気がついたら一人投げ出されて色々なヤバい連中と戦ってきたんだよ?1人で脳内会話も捗るってものでしょう。


 それをやっと会話が成立する存在と話せてるんだからこれぐらいは許しておくれ。


「う、うん…」


 会話が成立しそうなオッサンはよくわからない言語で話すし、お嬢ちゃんみたいに話せる奴もいたけど次は殺すって言われちゃったからね。


「何したの…?」


 体に寄生してしばらく使いつぶした。


「……」


 だからじと目やめようよ、気持ち良くなっちゃうだろう?


「さっき私に同じことしようとしたの?」


 落ち着いて、斧を置いて?謝るから。


「もうやめてね…?」


 肝に命じておくよ、ぶつ切りにされたら腸内ワープしちゃうからね。


「あ…隠れてて。」


 うおっと、壺ごと棚の後ろに押し込められちゃったぜ。


 ……これうるさいからしまわれたとかではないよね?不安になるよ。


 まあ最悪あれだ、ハリガネダイブを繰り返して滝の方に逃げよう。


「■■■■■■!■■!」


 見知らぬ声、見知らぬ言語、そして見知らぬ打撃音。


 おいおい、やべえ空気か?


「■■■■……」


 あ、知ってる声。


 といっても何話してるかはわからないんだけども、嗚咽混じりで焦燥感ある声なのは何となくわかる。


 児童虐待ってやつかな?


 世知辛い世の中だなぁ、異世界に来てまで社会問題が付きまといやがるのか。


 その内確定申告でもやらされるのか?税理士に投げよう。


 ……隙間からちら見…ってうぉお、お嬢ちゃん大丈夫か?


 顔ボコボコじゃねえか、ひどいな。

 

 あのおばさんっぽいゴブリンにやられたのか?躾にしてはやり過ぎだ。



 「■■■■■■■■!」


 見てらんねえよ、止めに入る…のは無理だな。


 

 ……マブタチがいりゃあな、いてほしい時にいねえ。



 あ、終わった。


「ゲホっ…ハリガネ…さん。」


 あーあー、こんなに腫れるまで殴りやがって……親御さん?


「ううん…後妻。」


 少女が後妻とか言うと違和感凄いね。


 まあ何だ、守ってやれなくて悪かったね。


「いいの……絶対に逃げる前に何かしらやり返すから。」


 強いなーこの子、目元も頬も殴られて腫れまくってるってのに目が死んでないどころか火がついていやがる。


 こんな子ばっかなら世間の未来は明るいやね、そんなことねえか。


「私…ちょっと行かないといけなくなったからここにいてね。」


 え、マジで?置いてけぼりかい。


「うん、ごめんね。」


 まあいいや、動いたら死ぬレベルの体力しかねえし。


 あ、何だか今ヒモになったみたいな感じがする。


 仕方がないからのんびり待つとしようかね。




 


 ……さて。


 ふっふっふ、残念だったなお嬢ちゃんよ。


 私は確かに瀕死さ、身動き一つが危険な領域にいる……だがしかし。


 私は射出された瞬間に半ば押し付けられるような勢いで奴からスキルを受け取り、そしてその後ファンファーレを聞いたのさ。


 レベルが上がった?NO!進化できた?NO!


 答えはそう、特殊な実績解除だ。


 何それって思ったろ?私もだよ。


 どうやらいつもの実績解除とはひと味違うみたいなんだけど変な謳い文句みたいなのが出た以外よくわからないんだよね。


 でもこれが私の回復に役立つ感じだったから何となく意味も無いのにしてやったり顔してみたのさ。


 顔どうなってるのかわからないけど。


 えー、なになに?


[ただ生存のために自らの肉を削り与え力を増幅させた慈愛と歩み寄りの力、天が許さずとも■■■は貴方を祝福する。]


[特殊実績解除。]


[アクティブスキル、『削ぎ落とす命』ギブ・アンド・ギフテッド獲得。]


 ……名前的に顔面引きちぎって空腹の獣畜生に押し付けるパンかな?


 スキル詳細は『拡張解析LV.10』っと。


[己が身を削り分け与えた分だけ奇跡を受け取る力、削り取られた体が二度と戻らぬのは戒めか、神の領域に触れんとした代償か。]


 お、絶対使わねえ。


 ようするにあれか?自分の体を誰かに食わせればバフがかかるとかか?んでその傷は二度と治らないと?誰が使うのそれ。


 まあだからアクティブスキルなんだろうけどね、ユニークは多分もっとチート臭いアホスキルだ。


 何せ私の知ってる奴だけだと走ってれば負けない化け物になったからな。


 そんな雑誌の裏に書かれてるいかがわしいブレスレットみたいに人生が急に薔薇色になりかねないのがユニークスキル、故にそう簡単に手に入らないんだろうけどね。


 欲しかったなぁ…何かしら。


 不老不死とかまでは行かなくても何かしら死にづらくなるスキルとか欲しいよね、よくわからない発動条件だけど『一回休み(ディレイ)』とかは死ぬからちょっと違うんだよね。


 具体的に言うならムカデについてた『重装甲』とか『一回休み』中に発現してた諸々の耐久スキル系、あの辺増えてくれたらもうちょっとましだけど……今のところは乾燥だけか。


 まあ…潤いお肌はハリガネさんに必須なスキルだからね、いらないとは言わないさ。



 でもこれ成長遅過ぎる、いまだに少し外でて歩いたら干からび始める始末よ。


 

 ……外道でナイスなアイデアとしてはあのお嬢ちゃんに寄生して言語のわかるスキルを奪い取るか。



 うーん、ハリガネさんとしてはその線はやめておきたいところだね。


 これはまあ合理的とかそう言う話じゃなくて、こう……美学に反するからさ。


 取り敢えずぬくぬくとここで回復を待って、適当な奴に寄生してから考えるとしよう。



 お、物音…帰って来たかな。




 お帰りお嬢ちゃ……イメチェンした?

ハリガネダイブ

[体を地面に対して強く沈み込める事によって助走をつけて勢い良く跳ね上がり相手の口内に突撃をする固有スキル(自称)]

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