貌無し、故に捕まる道理無し。
これが終盤で母親が本当の母親じゃなかった事を知った主人公の気持ちか…これを糧にハリガネムシどんどん強くなれちゃう。
次あたり親友が私を庇って死ぬか闇落ちするかだね。
まあ母親も親友もいた覚え無いんだけどさ。
さて、どうするかねMrs.触手……まだやるかい?
私が怖くなったなら逃げ出したっぶねぇ!
人が話してる間に攻撃してくるんじゃねえよ!悪役だってヒーローの変身待ってくれるだろうがよ!
……その割にヒーローって悪役の変身待たないよね。
て言うか私はヒーローでもなければ口も何もないし話してもいないんだけどね、ハリガネムシには人権を与えられてないようだ。
畜生、あの村救ったら手頃なゴブリンに寄生して人権得てやるからな。
……私が畜生だこれ、何なら悪役寄りだ。
うーん、この水レーザー直線だから回避はまだ簡単だけどこいつから離れるとちょっとまずいな。
横薙ぎに振られた範囲攻撃とノズルの方向見ながら避けれる直線レーザーだったら前者のがまだましだろう?
つまりそういうことでね、下手に離れられない上にこいつ鈍すぎる。
当初の予定だった村の遠くに離れさせるって作業がかなりめんどくさい……て言うか不可能に近くなった気がする。
何といっても今の私は多分こいつにとって脅威でも何でもないからね、羽虫払うような感覚で攻撃飛ばしてきてるだろうさ。
ぶっちゃけ与えたダメージ的には0に近いだろうし。
ムカデになって何かしら火力でるスキルを叩き込むか…いや、そんなことしたら多分MP枯渇する上にMPが無くなった時何が起こるのか未知数なのが怖いな。
鹿ちゃんタックルも通用しない以上なんとも……ぬ?
目の前でのた打つ触手…ってか巨大ミミズが何やら体を縮めていると言うか苦しんでると言うか?
言うならばそう、産みの苦しみ的な……あ。
危険を察知!『貌無き者』回避!
ふっ、甘かったな。
…いやあのゴブリンの死因見てなきゃ即死だったわ何だ今の。
大方パラサイトボンバーとかそんな名前の技だったあれだろ?何か違うか?まあいいや。
種子みたいな卵をショットガンみたいにぶっ放して、着弾地点で急成長させて爆破と……えげつな。
種…いや卵…ん?じゃああの顔に見えるのもしかして尻?私はずっと尻に話しかけていたの?
……どっちでもいいや、どうせどっちが前であろうと尻みたいな顔してるし顔みたいな尻してるわ。
しかしこいつ鈍い割に中距離近距離遠距離対応のスキルか……さっさと逃げるにしてもこれじゃあ…っと?
……私の素敵な鹿ちゃんレッグはどこに?厳密に言うと後ろ脚。
プリティなヒップはあるのに二本の脚が無くなってなんだか不思議な感じに……
はっ!?もげたのか!?
いやまて当たってない筈だ、ならなんで……ああ。
脚紛失したかと思ったらちゃんとついてたわ、クオリティ低くすぎて紙みたいになってるけどな。
あー、わかった。
これあれだな、さっきの回避テンパりすぎて私自身の想像力が鹿ちゃんに戻るまで間に合わなかった奴だな。
いやヤバいヤバい、歩けないしもう構えてるしうわぁぁ『貌無き者』!
……えー、結果から言おう。
助かった。
何でか?私はね、咄嗟の判断で何になったらあの野郎の卵攻撃を回避できるか考えたんだよ。
誰になればいいか、ムカデ?カメレオン?どれでもないさ。
とにかく堅い身体が必要だったのさ、ムカデの外骨格よりも鱗犬の鱗よりも。
正解は岩になってみた、それはそれはいかにも堅く重たい巨大な苔むした岩石にね。
いやぁ…うん、無機物いけるんだね。
この肉体巨岩の如く、まあ普通にダメージちょっと貰ってるけどな。
しかし死ななきゃ良いさ、得るものもあったしね!
想像力は私が考えてるよりもっともっと自由な物だったんだ。
……でも何でハリボテじゃなくてちゃんと岩?まあいいけど。
無機物ならいけるとかそう言う話だろうさ。
っとタックルか。
『貌無き者』そして変化先は樹木、それはそれは立派な大木になーれ!
よっしゃあ成功したぜ大木アッパーカット!
……でも二度とやらない、枝折れただけでダメージあるじゃねえか。
まあ追い討ちはするけどなっ!鹿の姿でよじ登ってからのー!
巨岩プレス!
いいね!風が来てる!
このまま削り切ってやがばばばば!?
何っ!電気か!?
全身が沸騰するような激痛と意識を刈り取るような衝撃、昔コンセントに針金突っ込んだとき以来だこんなの!
……何でそんな事したんだろ、針金との因縁は深いな。
いやそれは置いておいて、放電すんのかよこいつ!?
ああ、するわ。
よく考えたら普通にスキル構成に入ってたわ、私ったらうっかりさん。
言ってる場合じゃねえな、起き上がられた。
それに変化が安定しねえ、貌無き者にもちゃんとダメージ通っていやがるな?
だがまあギリギリ走れなくはない、さっきみたいな戦い方は無理だけど。
なら……ふっふっふ、計画通りだよ!
痛かっただろう?羽虫から強めの蜂くらいには感じられたか?
なら追いかけっこの時間だ!お前鬼な!
姿も貌も無い奴を捉えられたら変わってやるよ!
鹿になってから後方に向かって全力ダッシュ、そろそろハリガネボディが焼け焦げ過ぎて保たないからこっからは慎重にいかせてもらおう。
いやずっと慎重にやってんだけどさ。
木を隠すなら森の中とは言うけど多分悪手だろうから隠れるのはなしだな、正直あいつ遅すぎて加減しないとぶっちぎりそうだしね。
ふっはっは!当たらん当たら危ねえ!?…当たらん!
ちょっと尻尾無くなりかけたけど誤差だ誤差!
てかあの水レーザーの威力なんなんだよ、岩でも防げねえよ。
さーてこっからどうしようかな!
おう、アテがあると思ったか?ねえんだよ。
ラッキーパンチで吹き飛ばして追い討ちで怒らせただけだ、体力だってそこまで削れてくれちゃいないだろうさ。
取り敢えずゴブリン共の村から離れさせないと、あいつがなりふり構ってらんなくなったら余波で吹き飛ぶわ。
おおん?砂?
ああ、流砂か。
魔法で持ってたよな?確かレベル3とかだから大した威力無いんだろうけど……あ、ちょっと歩きにくいわ、じゃあ地面歩かないで木の上飛ぶからいいんだけどさ。
鹿の身体能力嘗めてんなよ、こいつら木の枝のしなりを巧みに操りながら四方八方から体当たり仕掛けてきやがるからな。
本当に二度と戦いたくねえからなあいつ。
まああれと一回戦っちゃうとね、どうしても多少ましに感じちゃうよね。
だからといってミミズが弱いわけでは絶対ないんだけどさ。
……あれ?
あいつどこ行った?
見失ったかどっかに隠れたか?でもあの図体じゃなぁ。
逃げたとかゴブリンの方に行ったんじゃ無いとしたら別の方向から先回りとか?
んー?一回降りるかね、上に居ちゃ生い茂る緑豊かな森林が安らぎと視界不良を同時に与えてくるし。
……地震と流砂は発動されてるみたいだから私からヘイトが離れたわけじゃなさそうだな。
となると、見えないように何らかのカモフラージュしながらこっちを先回りする気か?
…………いや違う、真下か!
そう気づき跳躍した時には、既に私の視界は二つに裂けていた。
こいつの能力の元ネタはシン・ポルクです