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踊り巡れ

 うっわ国民が一斉に集まってる……ちょっと多すぎて気持ち悪いな。


「今を必死に生きる民達に何て言い草っすか……」


「んで……民草集まる大広間…と言うか祭会場まで案内しましたが…どうするんですの?踊るってのは言葉通り皆で楽しく死のうねってことじゃあ無いんでしょ?」


 まあ仮にそうだったとしても今更どうにもならんのだけどね、頼むぞ神様。


「……こんにちは皆さん、私……元破壊神の舞神ナタラジャと申します」


 全員に届くような大きな声なのに、どこか澄んでいて聞き取りやすい声が響き、とんでもない悲鳴のような声が何倍もの声量で帰ってくる。


「…何してんのお前」


 これにはルドラさんもびっくり、どうすんだよ、お前の親友だぞ。


「自己紹介は大事かなと…私の事知らない人がいたら困りますし」


「いねえよそんなヤツァ!大混乱じゃねえか!」


「それが良いのです…心地よい感覚でしょう?」


「……っ…確かに、さっきよりか力が湧いてくる」


「それが恐怖の認知…いえ、畏怖の認知と言うものです」


 畏怖とな。


「うわー、あの神様が破壊神…おっかねーって思う気持ちってこと?」


「ええ、恐怖も畏怖も、我々の存在を認めているからこそ起こりうるもの…そうでしょう?」


 ま確かに、お化けなんて無いさ!って言っても心のどっかで信じてるから怖いわけだしね。


「……んでどうすんの?ルドラさんパワーアップしたけど、これで滅びが回避できんの?」


「いいえ?加速します」


「ルドラさん、こいつもしかしてクソバカ?」


「おうそうだよく分かったな」


 マジで責任取れよ幼馴染、そのノリでちゃんと未だに敵なの何なんだよ。


「……どうする気なんですか舞神様」


「……踊」

「踊るんだろうよ、知ってるよ」


 駄目だマジで、会話にならなさが桁違いだ。


『汝以上に独特の者だ…』


 ……同じ枠組みではあるの私?



「おいナタラ…ジャ……?」


 それは、華麗なステップから始まる独特の動き。


 ゆっくりと、時に速く時に止まり、その所作の一つ一つで舞神の衣装にあしらわれた金属の輪達が美しい音色を奏でる。


 陰鬱さが目に見えるようだった民草の不安の霧を、大きく強く、どこか心地いい暴風が吹き飛ばすように。


「……皆さん、踊りましょう(・・・・・・)


「世界は今より滅びに向かいます」


「これより先は続きのない終わりの世界……であれば、各々の大切な人を思い、踊るのです」


「人よ、獣よ、神よ……そして世界よ」


愛しています(・・・・・・)、私と踊りましょう」


 誰かが舞神の動きや音に合わせて膝を曲げ、体を揺すった。


 誰かがそれを見て手拍子を打った。


 気が付けば1人、また1人と思い思いに体を動かす。


 そしていつか音は収束し、動かずに居られるものは誰も居なかった。


「……これは……え、何…?」


『……わからん、わからんが……何とまあ…滅びを前に悠長なことを…』


「あっはっは…!楽しいですね皆さん……踊りはいい、踊りは楽しい……そうでしょう?」


 割れんばかりの歓声が轟く、皆笑ってる…これから死ぬのに。


「ですが誰よりも上手く踊れるのは私です、舞神の名にかけて」



「……り、リソースが……とんでもないリソースが舞神に集まってるっす!」


「いたのかクリシュナさん!」


「いたよ!?ずっといたっすよ!?」


 わあ、踊る度に…肉が弾んでる…可愛いね。


「う、うるせえ!ほっといてくださいっす!」


「……て言うか、あれどう言う原理?」


 あの亀の中にあった奴レベル…いやもっと果てしない、けむりんに丸ごと食わせたら世界覆いつくせそうなレベルだ。


 普通に底が見えねえ……


「……おいナタラジャ!いい加減何するのか教えろよ!」


「せっかちな……次が無いのであれば…次が思い通りに決して行かないならば……私の力で作り直せば良いのです」


「……これは宇宙のダンス…全世界を創造する概念を持った…この局所的な終わりを尊ぶ世界を産み直す為の、輪廻舞踊(ターン・ダヴァ)です」


「知っていますかハリガネさん、我々の…この神話体系においては破壊や損失は喪失ではないのです」


「古きものは破壊し、それにより残った瓦礫は新たな芽を産む土壌となり…生まれた芽を民が育み、風が撫で、時に困難が降りかかろうと、破滅が訪れようと…決して失われはせずに巡り廻るのです」


「……古臭いやり方ではありますが、目前に控えた破滅にはお誂え向きな踊りです…さあ、御一緒に」


「…ダンスなんて踊れないけどね私」


 そもそも今のムカデフォルムで踊ったら全員の正気度が下がらない?


 人型に分離…と言うかルドラの弓でムカデの部分が半分くらいちぎれたからいっそパージしても問題は無さそう……


『……汝、余興としては見てみたいが…』


 んー……この姿…多分自力じゃ持ってけないからな……


「……ああ、そんなことですか」


「踊りの質は手足の数では決まりませんか、私達はそれらが多い者を尊ぶこともあります……ですが、今この場においては人の姿で踊る方が楽しいでしょう……えい」


[スキルポイント超過を確認]


[スキルポイント超過を確認]


[すスキルるる ■イんトtyo……■■■]


[……アクティブスキル『お色直し(ワードローブ・シフト)』を獲得]


「今サラッと私のアナウンスさんをバグらせたかお前おい、大丈夫かこれ、戻るんだよね!?」


「ルドラぁ!!こいつ何だマジで!」


「1周回って破壊神として理性無く暴れてる方が行動が読みやすいんだよなこいつ」


 何でそんな奴が主神なんだよこの国。



[アクティブスキル『お色直し』]


[ああなれたらいいのに、こんな姿ならいいのに]


[それはそんな感情が見出した1つの可能性]


[姿形は本質ではなく、生き様や在り方こそが全て]


[……なんて、そんな極端なこと言う気は無いけどさ、好きな人の隣を歩くのに歩幅を合わせたい…そんな、可愛い感情から生まれたスキル]


[素敵でしょ?ただし万能じゃない、上手に使いなさい]


 優しそうな声……このスキルとかの拡張解析見る度に聞こえるセリフって誰のなんだろうね。


「で、これ何よ神様」


「後々得るであろうスキルを前倒しで獲得させただけですから……まあ、頑張ったご褒美のようなものです」


「ほー……あ!!?これ私人間になれるくない!!?」


『汝……残念ながら我のスキル故それは…』


 

「……ヘイ神様、ワンモアご褒美」

「ありません」



「……『お色直し』」


 スキル名を読み上げアクティブスキルをオンにすると、途端に身体を覆っていた黒い甲殻は縮み、いつものグラさんの姿に……便利だけどやっぱムカデモードに簡単になれないから何とも言い難いな…


「……何か背伸びた?髪も……てか色々肉付きが増した気がする」


『む……』


「……あそうか、グラさんって一応まだ子供って判定だもんね…リソース食いまくってレベル上げしたから人間フォルムでも成長したんだ…」


『子供扱いするでない……不敬だ』


 そりゃ失敬……鏡見たいな、美人に拍車がかかったんじゃない?


『……ふん』


「……じゃあ、神様もああいう事だし…グラさん、1曲いかがですか?」


『ダンスホールでもあるまいに……だがよい』


「ええ、大変よろしいですよお二人共……パートナーが居ても居なくとも、大勢でも1人でも……例えダンスパートナーと肉体を共有していようとも」


「この国の踊りは、全てを解決しますから」



お待たせ!


何だかんだでこの章も終わりに近づいてんね。


Q.破壊神の時はコミュニケーション取れてたの?


A.破壊しながらだと破壊衝動をレジストできるからギリギリ王様として振る舞える程度には。


Q.好きなインドの神は?


A.帝釈天


Q.クリシュナさんの体重は?


A.25kgのリンゴ3つ分

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グラトニカさんの肉付き、どこがどんな風に増したか詳細ください! クリシュナさんの体重が生々しい…てか身長何㎝ですか 25kgのりんごは、密度が高いのかシンプルでかいのか、そもそもそんなよく分からないり…
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