蠱毒生成
ズドンと着地っと…重くなったな随分……さて。
「出迎えは無し…か、最悪娘達を人質に取った蛇野郎とここで再会って場面も想像したが…考えすぎだったかね?」
「……まあいいさ……どの道今のこの姿……とっくに気配で気づいて動いてるだろうし」
呼ぶか。
「全ての威圧出来そうなスキルをONに、海で手始めにやったあれを、この姿でやってみよう」
「さあさ、遠からんものは音に聞け、近くば寄って我を見よ……これが今のグラさんの最高最強のメンチ切りと啖呵さ!」
「……バスキンくーん!!!あーそーぼー!!!」
大気すら震える轟音、殆どは遠くに行くにつれてただの唸り声のように通じてしまうかもしれないが……まあいいだろう、ただ事じゃないってわかってもらえればそれでよし。
〔何って声と威圧だぞ……これ、市井の者達は気絶したんじゃ…まあいいか〕
「気絶してくれたなら重畳、ビビって逃げてりゃウルトララッキーさ……後は少なくともうちの家族を回収しない事には蹂躙も難しいが……」
けむりん、身体をできるだけ薄く広げて国全体を索敵、危なそうなら自己判断で逃げていい。
タコさんと亀やんはクリシュナさんと透明化してて。
〔任せい!〕
〔あいよー……え、亀やん?それ僕のあだ名だぞ?〕
何だい…?文句かい…?
〔……そんな横暴が許されるのか…?〕
わかったよもう……クールマだからえー…まあまた今度考えよう。
〔絶対だぞ?それ忘れるんじゃないぞ?〕
知らん、娘は少なくとも3年以上忘れられてる。
「おとーさーん!!!」
あれは……遠すぎてわかりにくいが恐らく長女と次女かな……?何に乗ってんのあれ、でっかい猛禽類?
「たい、大変です父さん!?父さんですか!?何ですかその姿!!」
「大変そうだねぇ!何だそのデッカイの、新しいペットかい!?」
「父さんの方が遥かにデッカイですよ!?何ですかこの多脚に腹筋……グラトニカ殿か」
え今腹筋で見分けた?
「…ちょっとハリガネさん、失礼なこと言わないで……彼は…」
「が、ガルダちゃん!?……あいや違う……?」
「知り合いかいクリシュナさん?」
「神鳥っすよ!て言うかこの間のバスキン君の説明にも出てきたでしょ!」
やいやい言わないでよ……姿が見えないからどこに話しかけていいかわからないし。
「……厳密に言うと違うの…と言うか混ざって存在その物が危うくなっちゃってて……今はキンナラって…」
キンナラ……キンナラ……ゴボウ?違うな、わからん。
「それはまた随分と弱体化して……と言うか大変ってこの事すか?」
「…違う、王宮で…急にバスキン王が自分のお腹を剣で斬って……」
あ?切腹だと?
……え、何で?流石に全力の私らパーティと殺しあったら負けちゃうだろうけど…あいつだって複合神だしめっちゃ強いよね?戦う前から自決選ぶか…?
「父さん達が出ていった後、儂等はガネーシャ神と共に街の皆様と啓蒙活動を始めたんです、戦いとは神の望むところではないと言う部分を主に……事が起こったのは小休止として王宮で食事を取っていた時でした」
「唐突な自刃止める間もなく……そして、急激に膨れ上がった威圧と共に複数の神を産み始めたのです」
「……はぁ!?」
神を…吐き出してるつもりか?でもそれこっちの協力があってやっとだったろうに…
「他のメンバーは?」
「散り散りに逃げてしまったので……レプンカムイ殿がハヌ殿とラクシュミー様を抱えて窓から飛び出したのは見えましたが……」
「……そうか、じゃあ多分ガネーシャは駄目だな…」
「そんな……助けないんすか?」
「生きてりゃそりゃ助けるよ、でも実際レプンカムイがその場にいて一緒に逃げられてないなら状況は絶望的だ……て言うか死んでる可能性のが高いでしょ」
「……私達も危なかったけど、この子が混乱しながらも逃がしてくれて」
ふむ……こんにちはキンナラちゃん?娘を助けてくれた事は感謝するよ…この騒動が治まったら改めて礼をさせておくれ。
『いえ……出来れば全員助けたかったのですが』
すっげぇ渋い声だなおい、ちゃん付けしちゃったじゃねえか。
「ガルダちゃんは女の子だったんすけど……え、誰と混ざっちゃったんすか…」
『……感覚として判別できている面々で言うならば、ガルダを初めとする動物神や1部の夜叉が…』
『ですが……その神々を、誰も覚えていないため……今の私ではとてもあの場にもう一度入る力はございません』
「……まあ一人一人なら知っている程度の神様の要素が混じって『暴風と炎と怒りと踊りの神』とかになられても人間側からしたらわけわからないもんね」
その上人間は殆どの神を忘れている都合上ただの化け物になっちゃうし。
「……さてじゃあいいだろう、お嬢ちゃんとブレ子とキンナラさんは街の皆を……どこに逃がそうね…」
……海も別に安全じゃねえしな…近海の奴らも戦闘力のアベレージ相当高いだろあれ、海岸線に人集まってたらちょっと上陸しつつ美味しく頂かれるわ。
……仕方ない。
「祭会場にできるだけ多くを避難させて」
「ま、祭会場って王宮の目と鼻の先ではありませんか!」
「人々の欠片みたいな認知でギリギリ生きてるような奴等が人を殺して回る事はない……と信じたい、どの道腐っても神連中が相手ならどこに逃げたって変わりゃしないさ、私とグラさんができるだけ食い止めるから」
「けむりんは……どうしたい?」
ぶっちゃけこの状況、全滅がありえる事態な以上けむりんは私の命令聞く必要が無いからね……無理に着いてくるって言われても止められないし。
「それは……欲を言うならば旦那様達とどこまでも、と即答できてしまう私ですが……お嬢様の安全及び街の方々の避難…承らせていただきます」
「……助かる」
「……お慕いしている旦那様の守りたい者くらいわかりますよ、ずっと見てましたから」
お前こんな場面でそんな…ずるいよそれは……
「…泣きそう…ありがとね」
「涙啜っていいですか?」
「ふふ…ぶっ殺すぞ……」
いい話だったのにな。
「……クリシュナさんと海鮮コンビは隠れたまま肩にでも乗ってて、いざとなったら透明化したまま離脱ね」
〔ウミガメを海の幸と捉えてるタイプだぞこの人……タコはともかく〕
〔儂はもうな、元の身体食われとるんや、今更食物扱いされても何も思わんくなったわ〕
「高っ!?怖っ!?」
さっきもっと高所から落下しただろ、慣れろ……うわぁ下見ちゃった、いつもより地面が遠すぎてクソ怖いな。
『馬鹿者、遠くを見ろ遠くを…というか汝のサイズからしたら普段も大差ないであろう』
この即死できないけど助からなそうな高さが1番怖いんだよぅ!!
「ふー……方向よし、目標よし……体力よし…『更に先へ』!!」
っしゃあ、ぶっちぎるぞグラさん。
『うむ……神々に魅せてやれ、我の歩みを』
……フルパワーで突っ込む気マンマンだけどこれ普通に王宮でまったりお茶会してるとかじゃないよね?
更新よー!!
何だかんだで12月じゃねえか!!もっと更新頑張れ俺!!




