百足怒涛の直線上
「あぁぁぁぁぁぁ!?」
黙ってな、舌噛むから。
「な、ならもっとゆっく……おわぁぁぁぁ!?」
〔すっげ……思い付きで言ってみたけどここまで変わるとは予想外だぞ……ばけもんかね君等〕
思い付きでとんでもねえ賭けをさせんなや……見た目までえらい変わりようだよ。
……せっかく、グラさんなりの歩み寄りの姿だったのになぁ人型
長く伸びた胴体から下半身に沢山の脚……馬鹿でかいムカデの頭を切り落として人を括り付けたような見た目にフルプレートアーマー的な甲殻と両肘の馬鹿でかい顎…極めつけは見るからに悪そうで怖い兜…もう女の子にモテないかもね?
『とうとう見た目まで化け物じみたが…貴様が下手にどこぞの誰かを誑かさぬ分逆に気が楽さ……気にするでない』
……でもさぁ。
『くどい、魔王の歩みに間違いなど無いのだ』
『それに何故かな……心地よい感覚だ』
『瓦礫も、地面も、喰らえば食らうほど力が湧き溢れる……』
『先代もこんな心地で走って居たのかもしれんな』
……いつになく饒舌だね。
て言うか船乗るかなぁこの身体……半分ぐらい海に浸かりながら移動するか……まあ最悪泳ぎだね。
『阿呆、高純度のリソースで肉体その物の段階を上げたのだぞ?その気になればあの姿にはいつでも戻れる』
そうなの?
『あの姿にしかなれぬ、あの姿を捨てねば人型にはならぬ…そんなものが真に自信を支配していると呼べるか、己のなりたい可能性をねじ伏せ手繰り寄せるのが強者よ』
……つまり?
『……消費は激しいが、人類種の姿からこの姿に自在に変化できるようになった』
最高じゃん、ナイス豪運。
あれ?私が人型になるための冒険な筈なのにグラさんの見た目のバリエーションが増えただけじゃない?
『汝にもリソースは入っているのだぞ…?だが何故か……汝は成長限界が事細かに設定されているようでな、正直このままの方法ではいつまでかかるのやら…』
だよね!だってさっぱり強くなった気がしないもんハリガネさん!!
……いやまあ、ステゴロ強い寄生虫とか聞いたことないしこれが正しいのか…?
『して……このままの速度ではすぐに地上だが……例の者は食い殺して良いのか?』
んー、ぶっちゃけもう余程言い訳が上手くない限り話し合いのターンを入れてやる気も無いけれど……殺害or利用のどちらかではあるから、1回張り倒すのは確定かな。
「あの……すっごく物騒な話してるとこ悪いんすけど勝てるんすかね…だってヴァースキって腐っても他の神を捕食した複合神っすよ……相当に」
まあ強いよね、端っから一筋縄で行くとは思ってないけども。
でも何だろ……今は負ける気がしないな。
『ああ……』
いざとなったらまあ、皆でこの国は捨てて新しい冒険の旅だね!まあ困るのはクリシュナさんくらいだ。
「困るっす、それすっごく困るっす!!僕の存在意義が怪しいっす!!」
「存在意義ねぇ……」
「そんなもの、本当に大事なのかね……」
「……ハリガネさん?」
「ううん、ちょっと……思う所が」
『……ぐっ……流石に一欠片と言えど神か……中々堪える』
しかもあの巨体を支えてたリソースだもんね……ガンガン使っちゃおう。
『のう汝……この速度で走れるならば…『更に先へ』も使いたいのだが』
駄目だろ、あれ走った分だけリソース回復しちゃうんだから、爆散希望かい?
『うーむ……儘ならぬな』
後でね……どの道あいつとやるなら使わざるを得ないだろうし。
「けむりん、まだ耐えられるか?」
「アッハッハッハ!!!力が、力が湧き上がってきますね旦那様!!こんな良質な食事生まれて初めてでございますよ!!」
「嗚呼…!これが特異点…これが私の本来の意義なのでございますね!!素晴らしい……今なら、何者かになれそうです!!」
「……あれ!?何かハイになってない!?クリシュナさん何かした!?」
「さっきまで黙ってたのに急にこうなったっすよ!」
家電壊すやつは皆そう言うんだよ!!
『……あれは…』
わかるのかいグラさん?
『……うわ…』
ああ違うドン引きなだけか、参ったな……ただテンション上がってるだけなら良いんだけど。
「えーっと、アブドゥルを落ち着かせたあれでどうにかならないかな?」
「……と、取り敢えず暴走気味のリソースを整えて見るっすね……『調和を尊ぶ物語』……」
「アハハハハ!!!!ゴッハァ!!?」
断末魔みたいなの聞こえたんだけど大丈夫!?位置的にさっきからそっち見えなくてすんごい不安なんだけど!?
「だ、大丈夫…すかね?」
「知らないよ!?」
「……あー……問題ありません旦那様……栄養を急激に摂取したせいで少々高揚しておりました……もう何も心配は…は…ハハハハハ!!!」
「けむりーん!!」
まあ現状グラさんが砕け散ってなくて彼奴も…元気は元気だから取り敢えず大丈夫かな。
『うぷ……ふう……ふっふっふ……この暴食王に胃もたれとは……流石だな異国の神よ……だが、食らってやったわ、余すことなくな』
お、流石……耐えきったね。
『ああ……気を抜いたら溢れ出そうだが』
『魔王の吐瀉』寸前かい…?せめて彼奴に当てようぜそれ。
『わかっておるわ…今話しかけるでない……ヤバい』
グラさんの口調がブレるくらいヤバいと言うなら本当に一大事だよ、
『直に水中に出る、そのまま泳ぎきって陸まで跳ぶぞ』
任せた、空中での軌道制御は……けむりん行ける?
「ええ、ええ!何の造作もなく行って見せましょうとも」
……不安要素はあるな。
「クリシュナさん、できるだけ体勢を低くしてしっかり顎を引いて舌噛まないように歯を食いしばって……あと辞世の句とか残しときたかったら早めに」
「今から何が起こると言うんすか…!?」
まあ半分は冗談さ、神様だしそう簡単には死なんだろ。
お、明るくなってきたね……さあただいま地上、そんな長く離れてないのにえらく恋しかったさ……ていうか深海怖すぎるんじゃい。
ああ言う薄暗い中でのデートも悪くないかなとは思ったけどね?
……バトルが無けりゃな。
爆音、そして水飛沫……うぉー!!空気が美味しいねえ!
「高っ!?ちょっ怖!?」
なんて馬鹿力で飛び上がってんのよ……水中からでこれかい?
『加減しなければもっと跳ね上げられそうなものだ……掴まっておれ』
ふふ…既に胃壁に突き刺さる勢いでめいっぱい掴まってるさ。
……あれこれアニサキスじゃね?
グラさん大変身、20mくらいあるし機動力が高いインチキ形態、まあエネルギー消費も激しいんだけども。
Q.もう配信やらんの?
A.時間あればなー、今はむしろ更新すらまともにできてないし。
Q.オカマッチョ兄貴の技術ってプロレスなの?
A.我流。
Q .この章で登場した女の子ってヒロインになりますか?
A.ハリガネさん身持ち堅いからね……グラさんの嫁枠ならワンチャンある。




