思い出さない方がマシな時もある
「……どうしたと言うのだ、汝」
ちょっと待ってね……気持ちの整理がつかない。
まず……この世界がゲームがベースになってそうってのは何となく今までの傾向からわかってはいた、わかってたからこそある程度はそういうものだと飲み込めてはいたさ。
この世界がゲーム、つまりシステムやプログラムで動くものと仮定するなら勿論その場にいるNPC達はそのシステムによって動くNPCだ。
……いやなんでそんな世界に私が?って考えるとキリが無いからそこは置いておくとして。
とはいえ……その仮定があるのに、自分の役割を理解しているキャラクターがいる…となると話は変わってくるね。
……アクパーラが仮に自分がこの世界にとってどういう立場が理解しているNPC……人工知能的なもので、自分で物を考えられる存在だとして……蟲って何だ?
この世界をとことん壊すために品定めが起きた?それじゃあこの世界は元々ゲームですらないのを、ゲームのシステムに当てはめてる奴がいる……?そして恐らくそれが蟲……?
旧世界は、このシステムそのものが無い頃の話…?
品定め……そういえばレプンカムイもいつだかに話してたな。
レベル、スキル、認知そしてリソース。
もしかしてこの世界は元々ただの異世界転生物だったんじゃないか?それが私の来る前にテレビゲームみたいになったとしたら……
……それをやらせてるのは……恐らく、管理者。
……今はよそうかな、何も知らない一般寄生虫だハリガネさんは。
「ごめんよ、戻った……ちょっと考え込んじゃっただけさ」
「あ……おかえりなさいっす…」
「ただいま、いやー…急に色んな話聞いてびっくりしちゃった、けど他愛のない事だから安心したまえよ」
「……この手はなんだい?クリシュナさん」
グラさんの広くて可愛いおでこに触れたいのかい?……って、そんなわけでもねえなこれ。
「……今あった事、知り得た情報を話しなさい……名も無きアビス・ゴルディオイデア」
……あー、もう。
「おいクリシュナ……やる気ってことでいいのか…?」
「すんません……ただ、僕が選んだ英雄が……こんなつまらない場面で敵に回るとは思いたくないんで…」
「……答えなかったら?」
「……調和の神として…できる限りの事をします……この国にとって…」
参ったな……できれば彼女は殺したくはないんだが……殺す?
おい……ふざけんな私……いや、そりゃドライなとこは私の美徳の1つだが……ここまで一緒にやってきたクリシュナさんを……?
「あぁ…………駄目だこれ……逃げろ……『強制停止命令権LV.10』」
「がっ!?」
「うぐっ…!」
すまんグラさん……先に逝く。
『汝…!何を…!?』
緊急離脱……やっぱ間に合わねえな、腹掻っ捌くしかないか。
『加速LV.10』にグラさんの膂力なら……いかにグラさんの腹筋でも貫通できるだろ、けむりん、皆を任せたぞ。
〔…………〕
……何だ…動けない……
〔君ぃ……律儀はいいが……流石にそれは過ぎるというものだぞ〕
誰だお前……私に話しかけてんのか?
〔……探してたからせっかく出てきてやったのに、そんな態度悪いと帰っちゃうぞ……〕
〔僕はクールマ、ほら……お目当ての神様だぞ〕
クールマ……ああ、君が……悪いね、私はもう逝くんだ……どの道このままじゃ全滅するし。
〔君ぃ……律儀過ぎる上にとびきりせっかちだぞ……〕
〔……しかし先任者め、余計な事をしてくれるぞ……ここに来る勇者が誰だとしても理解できる言葉ではないのはいいけど、あれはちょっと多様性に理解がないぞ〕
……そこ?
〔事実君は、自分の忘れ去っていた境遇を……触りだけとはいえ認知してしまった〕
〔まあ……僕とて君等種族は仇敵ではあるが、人を刺し殺したとしてもナイフに罪は無いように……大いなる存在を忘れた君等に罪なんてあるものか……忘れてるなら、それを思い出さないことだって調和の1つだぞ〕
〔……なので、忘れさせてあげようかと思うわけだぞ?〕
……うーん…悩む。
……覚えたままこのクソッタレな思考だけどうにかならない?
〔強欲だぞ君ぃ……言うと思ったが〕
〔ま、よかろー……完全に消し去ることはできないが、今この時より君は蟲としての本能を忘れる……だがやったことまでは消えない、目の前の2人に攻撃かました事と、嫁さんの腹裂こうとした事は自分で謝るんだぞ〕
ぐえぇ難易度が高い……ありがとね。
「…………いや何故急に土下座を…?」
「すんませんでしたぁぁぁぁぁ!!」
「な、何一つ理解できる行動が無い……取り敢えず落ち着いてくださいっす…!」
「だって……私あのままだと君達を殺しちゃいそうで……」
「怖!?そんなこと考えてたんすか!?」
「旦那様……貌ある状態で固められたら流石に私もちゃんと死にますので戯れにしては過ぎるかと…」
「私が私じゃないみたいで……」
「……いやハリガネさんなら邪魔になるくらいなら僕くらい殺るだろうなって気はしますけどね」
「酷い…家族は殺らないよぅ……」
「ああ泣かないでくださいっす……て言うか僕ら殺したく無いからって自決選ぶのは暴食王が1番怒るでしよう……」
……ごめん。
『……』
いや本当に。
『……今は話しかけるな』
はい。
「……で、何があったんすか…?」
「私が何者か……に関する事とかが色々と…」
「私……多分この世界に対しては敵なんだと思う、やっぱり」
「堂々と幼子の身体を奪ったり、罪悪感なく人類拷問にかけてる辺りからそうだとは思ってるっすけども」
「身内外への悪辣さだけは真似できないと思っております」
「……私は、蟲なんだよ」
「知ってるっす」
「存じ上げております」
「……君等私の事嫌い?」
「そんなこと無いっすよ……?」
「心の底より愛しております」
「……うむ、不可解」
「まあ君らがいいならいいや……」
〔どんな好感度の積み方したんだ君ぃ……〕
若干1名からはすっごい怒りを感じてるけどね。
「この声……まさかクールマ君っすか!?」
〔YEAH、僕はクールマ…新しき秩序を維持する若手代表亀ゴッドだぞ〕
「な、何か軽い……!て言うか……どこにいるんすか?」
〔固くなってもしょうがない、ガチガチに固めただけで維持って言い張るのは古臭い考え方だぞ〕
〔あと姿は見せられないぞ?そこ厳密には先任者の身体の最下層だし……ギリギリ通信が届いたから出てきてみたけど、僕の顔を見たいなら水圧で即死する覚悟を持って飛び出すといいぞ、尻からになるが〕
「おお……絶対嫌っす」
〔それで……深海まで何聞きに来たんだぞ?……いやまあ知ってるが……また面白く且つクソバカな事を考えるもんだぞ人類……人類……人類居ないぞこのチーム〕
神と蟲と魔王と自然現象(仮)のパーティさ。
〔OK多様性了解〕
融通の利く神だなぁ……
〔結論から言うぞ?君等のやりたがってる事は手伝う価値があるから協力してやるぞ、知りたがってることも知ってる限り話してやるぞ〕
「話が早い…いいんすか?」
〔て言うか断る理由が無いぞ、破壊神の馬鹿野郎が目覚める度に背負ってる国と先任者ごと砕かれてんだぞ僕は〕
〔僕をリスポン地点扱いしてるのも腹立つけどそれ以前に毎度毎度クソ痛いんだぞ、打点が小さいのに破壊の権能のせいで背中起点にじわじわ崩れていくんだぞ僕〕
〔あんちきしょうを手ずからボコボコにできないのは残念だけど、この際贅沢は言わないから一言言ってやりたいぞ……マジで〕
か…可哀想に…
Q.けむりんってハリガネさんへのアピールが凄いけど繁殖できるの?
A.できません。
どうなれたら満足とかはけむりんの中でもよくわかってないからあれだけど。
Q.クリシュナさんのスリーサイズを教えてください。
A.特に決めてないけどウェストはわりとかなり…
Q.グラさんに臍はありますか?
A.あります、元々卵生なのにね。




