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軍勢を呼べぬ者


 うっわ……すげ。



「くは……どうした、自慢の速度も脚が無ければ満足に出せぬか?」


「そら、脚がもげたぞ……どうした、どうした?勝っちゃうぞ(・・・・・・)…?」


 一撃一撃は確かに当たってる……でも私が相手してた時に比べちゃ遥かにフルメタルジャケットの負ってるダメージが違う……っていや私は何してるかわかってんだけどさ。


 あいつ(・・・)の超高速に反応して攻撃を最低限の動作でガードしつつ、後ろに跳んでダメージを散らし…深追いしてきた部分から齧り取る……理屈はわかってても私にゃ無理な芸当だね。


 正直、身体を操縦する奴の違いでここまで変わるかね……ハリガネさん要らない子かしら。


「馬鹿を言うでないわ、我のこれは視力に物を言わせただけのもの……汝のような狡猾さや…エグさ(・・・)が無ければこの身体の真価は発揮されぬよ」


 ……ありがと、褒められてるか怪しいけど。



「ふー……ッペしかし、妙な存在よのう貴様……これだけ欠損させたと言うのに、いくら戦いに慣れている生き物であっても…長年連れ添った四肢をこうも食いちぎられては応えようものだろう……」


 明らかに動きは悪くなってるけど……まだまだやる気満々だよねえ…


「くは、構わん構わん……一欠片も残さず食いちぎってくれよう」



 待ったグラさん……これやっぱ何かおかしいよ。


「…ほう?」


 見て、あいつの動き……さっきよりスピードは落ちたとはいえ……四足歩行から二足歩行に切り替えた上にその脚も片方無い(・・・・)んだよ?なのに……



「速すぎるか?だが…我もあのくらいの挙動であれば」


 単純なスピードならね、でも彼奴の強みは単純な直線での速度ではなく、あのトンチキ変態軌道だ…つまり。


「……つまり?」


 物理的に(・・・・)片足であの動きはできないだろうさ、ってことよ……いやこの世界で物理学を話すのも頭が悪いけど。



「汝……すまんがもう少し優しく言うてくれんか」


 ……あれ多分本体じゃない。



「早く言わんか!?」


 説明で断定できるほど情報がないんだもん!!


「本体ではないとすれば……汝、探せる(・・・)か?」


 やってる!でも……なんの気配もないよこれ、いやというか……本体じゃないにしろ私達の感知(・・)は目の前のあれを生き物だって捉えちゃってる。


「……すまぬな、我もだ……であれば、目の前のこやつを跡形もなく消滅させてみようか『怨毒生成LV.10』『魔王の吐瀉LV.10』」


 浸食して溶かす猛毒の弾……本気だね、当たればだけど。


「抜かせ、当てるのは汝の役目よ……しっかり当てよ、失敗は許さぬぞ」



「嘘だろおい!」


 急に変わんなって!私だって心の準備くらい必要なんだぜ!?



『ああ、だが…十分であろう』



「まあ、ハリガネさんは超イケメンなのでね、求められたら応えちゃうのさ」


 この速度で動くやつが相手か……やったこたねえけど…!!



「せいやっ!!」


 相手の突っ込みに対して震脚、からの瓦礫飛ばし!


「……まだ回避余裕かよ、いよいよすげえな」


 けど残念、1回見せた技は2度通じるって思わないのがハリガネさん流殺法さ……1度目も大して効かなかったけど。



「お前が今足場にして跳んだ瓦礫はな!!わざとそうなるように(・・・・・・・・・・)飛ばしてやったのさ!!」


 ルートは完璧、喰らえや!!



「チャージ6歩!消し飛びな!!」



 っしゃ、ドンピシャだ。


『うむ、よくやった……ほらな?我の戦い方では今のようには行かぬ』


 ……何だかんだで上手いことやりそうだけどね。



「…流石に、金属系の身体に腐食+浸食は応えただろ、な?」



 うーん、物言わぬデロデロの何か……あわよくば迷宮主が何か便利なアイテム出さないかなーと思ったけど……これじゃ丸っと溶けちゃったかね。


 まあ、冗談は置いといて……私の仮説当たってるかもね。


 生体反応が消えない(・・・・)



「…ああ……だが……全くもって場所がわからぬ」


 厳密に言えば、スキルが場所は目の前だって教えてくれてんだけどね……居ねえ(・・・)のが問題なのであって。



「脅威は去った……とは、喜べぬな」


 同感、見えてない特大爆弾抱えたままクリシュナさん達追いかけられるほど楽観視はできないね。


「……」


 グラさん?胸のとこに何か張り付いてない?


「む……虫か?いつからおったのやら」


 げっ、何それ毛虫…?気持ち悪いな。


「…………」


 どの口が言うんだ?って気持ちがすごく伝わってくるぞこんちくしょう。


「……ふん」


 あれまあプチッと……絶対後で手ぇ剥けるほど洗ってよね。


「ああ…わかってお[経験値の超過を確認]


 おん!?


[経験値の超過を確認]


[経験値の超過を確認]


 ……


 …………は?




 ……え、あれ本体?どういうこと?


「わからん…わからんがレベルは上がったし生体反応は消えたが……」


 ……死体だけど……行けるか?『拡張解析LV.10』


[【鈍色不壊】フルメタルジャケット]


[かつてこの土地に迷い込んだ遥か遠い国の生き物]


[自分だけは見つからないが故に砕かれぬ者]


[小さい身体からは想像もつかないの程の力を持ち、生産する見えない(・・・・)糸により、瓦礫を繋げ合わせ、己の記憶の中の強者を形作る]


[【不壊の(アンブレイカブル)軍勢(レギオン)】を使役し国を滅ぼし、文明が産んだ叡智を新たな軍勢とし、世界を渡り歩く]


[時として長く生きた個体は魔王にすら迫らんとし、その戦いの傷跡は未だ世界を苦しめる]


[かつて、幾つもの国を滅ぼした彼の者は、この地の神により破壊され、残った怨念や残滓のみが、この地に宿った]




[死にたくない(・・・・・・)、どんなに強くなろうとも、その気持ちだけは忘れられないものさ]



 …………行こっか。


「……うむ」



 勝ったさ、勝ったけども……



 釈然としねえ…

フルメタルジャケット君、本来はグラさん達が苦戦してた人形を周囲の環境から材料引っ張ってきて数百体単位で引き連れてくる化け物。


フェーズ2に移行すると使う人形を絞ってリソース振ったとんでもなく強い一体になり、更にフェーズ3では周囲巻き込んで自分を中心に置いた巨大な移動要塞に大変身。



せめて木材とかがもっとあればやりようはあったのに…砕けやすい鍾乳石まみれの洞窟じゃ無理やり一体作るのが限界でした……

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― 新着の感想 ―
[一言] ハリガネさんかっこよ! 戦い方は終わってるけど絶対決めてくれる安心感がね 格好付け方がイケメンのそれだった
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