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神骸の迷宮

 鼻を越えた先は空洞…て言うか洞窟だねまるっきり。


 謎の光る苔に、何故だかある酸素……人間サイズ(・・・・・)の椅子に机とそこに並ぶ昆布。


「んで、君結局誰さ」


 昆布美味っ、味覚強化されてる影響か旨味が凄いなこれ、ちょっと口がチリチリするがまあそれもまた一興。


「僕はアクパーラーの……そうですね、君達風に言うなら絞りカスです」


 私達デフォで口悪い生き物として扱われてんのかな?


「アクパーラー2世と名乗りたいところですがそれではクールマ氏とごっちゃになってしまう……好きに呼んでくださって構いませんよ」


「アクパーラー2世……そんな話聞いたことも無かったっすよ」


「えーっと亀君、君はここで何をしているのかな?要するに自分の死体の中だろここ」


「父の死体、と呼んだ方が良いかもしれませんがな…細かいことは気にしなさるな、今となっては巨大な洞窟ですよ……ここら辺は僕が整備したので十分住めますが、内部は勝手に住み着いた生き物が争いを続けている魔境です」


 うーん……まあこれだけデカイ生き物の死体となると出涸らしでも生き物が寄ってきちゃうんだろうね……リソースって奴。


『我等種族も長く生きた者の死体は他の生き物が住み着き、しばしば異常な生態系が形成されることもある…神の亡骸ともなればその程度ゆうに有り得るであろうな』


 ……これさ、ぶっちゃけ深海をそのまま進むのとどっちが危険かね。


 ……どっちでもいいか、暴食王はいちいちこっちの道が危険かなんて考えないもんね。


『……であろうな』


「旦那様、奥様…脳内会話でイチャイチャするのはやめてくださいまし」


「割と普通の会話だったろ今のは」



「ええと……ジュニア君、僕達が今回ここに来たのは…」


「概ね知っておりますよ、この国を見通す力は無くとも、貴女も僕も同じ神の一部ですからな」


「クールマ氏の元までご案内致しましょう、ですが御客人……ここで1つ聞いておきたい事が」


腕に覚えは(・・・・・)ありますかな?」


「……覚えしか無いさ(・・・・・・・)



「結構、実際この場所は既に意志を持つ天然の生きた迷宮(ダンジョン)となっておりますな」


「つまり、既に元主の私等を差し置いて迷宮の主面をしている存在、迷宮主(ダンジョン・レックス)がいるのでありますな」


 迷宮主……グラさん?


『簡単に言うのであれば生態系の頂点……迷宮内周囲の生き物を従え、無秩序な争いを終わらせ迷宮に入り込んだ異物を排除する存在だ』


 まあ、王様か。


 ……でもそれ立場的には寄生虫(私ら)とあんまり変わらないね。


『だが宿主の循環を守り環境を作るという役目がある以上は汝とは程遠いであろう』


 はっはっは、褒めるな褒めるな。


『何故そうなる…?』



「迷宮とは、リソースが沸き立つ力場や強き者の亡骸……より簡単に言うのであれば、膨大すぎるリソースから世界を守る(・・・・・)ためのプロテクトなのでございますな」


 …………へえ。


『…汝?』


 何でもなーい。



「リソースという物は、ただその場に溜まり続けるだけでは淀み、良くない結果を産むことになるのでございますな……ここ自体は父のリソースを隠し切れるだけの巨体がありました故完璧な迷宮とは言えませぬが」


「それでも最奥部には膨大なリソースの塊…瑠魂晶(リソース・クリスタル)が存在し、更にその先には……皆様が求めている、クールマ氏が居られますな」


 瑠魂晶……タコさんの体からでてきた純粋なリソースの塊だね、あのやべえ魅力……確かに周囲の生き物が集まってきてもおかしくは無いわな。


「おっしゃ、じゃあとっとと行こうか…昆布ご馳走様ね」


 若干名残惜しいがごっくんと最後の1切れを胃に送り込んだら出発だ、嫌な予感(・・・・)もし続けてるし何かしら起こりそうだからね。


「……かしこまりました、では……なるべく海水で満たされていない道を通りますな」


「それから……僕の元々の体がすこぶる巨体な事もあってか僕自身に戦闘を行う機能は着いておりませんのでな」


「護ってくれってんでしょ?クリシュナさんもポンコツの極みだからそこら辺は任せておきたまえよ」


「誰がポンコツっすか……元々そんな風にできてないんすよ僕らは…」


「護って頂くのは大前提なのですがな、僕自身迷宮主とは折り合いが悪く……恐らくは顔を見られた瞬間狙われますので何卒」


「よし分かった地図を描け、君は置いていく」


「そんなご無体な、僕とてクールマ氏にお会いしたいのですな」


 ヘイトの塊を連れて魔境に入る理由が無さすぎるんだよなぁ…地図作れ地図。


『だが汝よ…現状は全てこの者を完全に信用するのであれば…という話でしか無いのだぞ』


 そこよね、ぶっちゃけこいつがアクパーラでも何でもない可能性も捨てきれない……とはいえこのまま直で潜っていくにしろこの迷宮を攻略するにしろ危険は伴い続けるものだからね。




「んー……まあでも仕方ないか……迷宮主とやらが来たらぶっ飛ばして、さっさとクールマ君に会いに行くよ」


「ええ、ありがとうございますな……では、此方へどうぞ」


 けむりん、体の9割くらいを私に纏わせて、残りでメイド姿のハリボテになれる?あと会話は直接脳に回して。


『かしこまりました、ですが何故このような…?』


 ま、保険よ保険。


『逆に危険では…?正直、今合法的に旦那様に抱き付けている以上いつ正気を失うかわかりませんよ?』


 それ危険因子全部お前じゃねえか。


『この所私相手に油断しすぎでございますよ…こんな距離を許すなんて、こんな、吐く息も匂いも全部分かるような距離で』


 君は相変わらず気持ちが悪いね。


『冷静に返されると…こう…ゾクッとしますね』


 こいつ…攻防一体の構えか…?



「……」


 クリシュナさんが心底冷たい顔でこっち見てんじゃねえか。



「いやほら行くっすよ…早く」


「拗ねんなよ、ほら手でも繋ごうやクリシュナさん」


「別に寂しくて冷たい顔してたわけじゃ……いやいいすけど」


「それでも手を振りほどかないあたり寂しくはあったんだろう?」


「うっせえっす…」


〔……これ儂忘れられとるな〕

迷宮主とは。


迷宮内に存在する瑠魂晶を護ることで呼び寄せられた生き物を捕食する存在、故に迷宮は完成直後から時間が経つに連れて迷宮主の成長と共に攻略難易度が跳ね上がるのである。


ここの迷宮何百年経ってんだろうね。

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